陸上・駅伝

特集:第100回関東学生陸上競技対校選手権

立教大、半世紀ぶりの1部昇格へ! 関東インカレに出場する注目の選手たち

瀧渕は努力を続け、陸上部イチの成長を遂げた

関東地区の大学陸上部が優勝争いや昇格・降格争いをかけて死力を尽くして戦う初夏の陸上メインイベント、関東インカレ。この歴史ある大会に、今年も立教大学陸上競技部が総力を挙げて挑む。男子は半世紀ぶりの1部昇格、女子は総合8位以内という目標を叶(かな)えるべく、掲げたスローガンは「魅力のあるチーム」。創部100周年、今年はひと味違う立教大陸上部の強さを紹介する。

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陸上の花形・短距離パート

まずは、陸上の花形とも言える短距離パート。100m、200m、400mの個人種目だけではなく、4×100mリレーと4×400mリレーという団体種目の戦いもあるのが、他のパートとの違いだ。

第100代となる短距離パートを率いるチーフは利田大紀(4年、立教新座)。部員全員と積極的にコミュニケーションを取る「対話力」で部員を支え、ひとつの目標へと誘う。指導者がいない練習環境で、チームにインプットの機会を増やすため、自主的な勉強にも取り組んだ。利田が定めた今年のパート目標は、「俺、私がやる」だ。リレーという全員の実力発揮が必要な種目があるからこそ、おのおのが主体性を持つことことを忘れず、日々一体感を高めていく。 

  • 単距離パートの関東インカレでの目標は、「個人種目で標準記録を突破し、各3枠を獲得する」こと。リレー種目では、「男女ともに4継、マイルの両方で結果を残す」ことだ。「立教の代表として出させてもらっているので、そこで結果を残すことが部全体の成果につながる」。部のこれからに貢献するためにも、男子は両リレー優勝、女子は入賞・日本インカレ出場の結果がほしい。そのために、チーフの利田が目をかける注目選手は部の副将も務める瀧渕亘弘(4年、立教池袋)だ。どんな時でも向上心を持ち続け、頼りなかった1年生の時から最も成長を遂げた努力の男。チームを背中で引っ張る瀧渕は4×100mリレーと4×400mリレーでどんな有終の美を飾ってくれるか、注目だ。

個人の役割を明確化し、個性を尊重しつつも仲間意識を大切にする短距離パート。関東インカレでも目覚ましい活躍ぶりで、陸上部全体に貢献してくれるだろう。

常に高みを目指し続ける中距離パート

立教大陸上部の中でも特に、チームとしての意識を大切にしているのが中距離パート。今年度のパート目標は「自己ベスト更新」と個人の結果を重視しているが、その背景には組織としての意識を高める2つの目標がある。「所属に寄与」と「脱ヒエラルキー」。学年の垣根を越えてそれぞれがチームに貢献することを理想とする。

この目標を掲げ、パートを牽引(けんいん)するチーフが山本倖知恵(4年、東京)だ。コロナ禍で練習が思うようにできない中、Slackを通じてコミュニケーションを取り、それぞれの思いを込めた日記を共有。互いに意見をぶつけ合うことで、部員たちのモチベーション維持を図った。ラストイヤー、最後の陸上生活に熱を込める山本の新たな取り組みが、パート内の仲の良さと自発性を生む。

互いの健闘を称え合う河田(右)と武藤

山本が率いる中距離パートの注目選手は3人。1人目は河田実由(3年、小金)だ。河田は関東インカレ後の次期パートチーフに決定している。元々控えめな性格だったが、山本の後を引き継ぐため、自分から立候補した。「一皮むけた彼女を関東インカレでも見ていただけるのではないか」と、自分の殻を破り進化を遂げた河田に山本も注目している。

2人目は飯濵友太郎(2年、立教新座)。昨年、U20の日本選手権で800m優勝を果たした飯濵は、2年生ながら中距離パートの将来を担うエースと言える。関東インカレでは新たな記録の更新、そして日本選手権の参加標準記録突破に期待が膨らむ。

3人目は飯濵と同様、中距離パートのエースとして活躍を見せる武藤桃花(3年、桐蔭学園)だ。昨冬にけがを負った彼女だったが、関東インカレに向けて調子を上げている。5月3日の静岡国際大会では、田中希実(同志社大4年/豊田自動織機TC)や北村夢(エディオン)といった日本トップレベルの選手たちとレースを繰り広げた。謙虚さの中にも強さが光る眼差しで、日々の努力の結果を見せつけてくれるだろう。

主力級が多数揃(そろ)う中距離パート。今後の活躍が楽しみな各選手が、まずは関東インカレでどのようなレースを見せるのか目が離せない。

仲の良さは天下一品! 長距離女子パート

女子部員11人で構成される女子長距離パート。競技レベルは様々だが、仲の良さと意見の言いやすい環境を生かし、ひとりの悩みを解決するために全員で尽力する。目標は「凡事徹底」。基礎の大切さを身に染みているからこそ、小さな練習の積み重ねも厭(いと)わない。

その環境を作り上げてきたのが、陸上部創部100年、初の女子主将を務める前田梅香(4年、八王子)だ。「部員一人ひとりと積極的にコミュニケーションを取り、一緒に頑張れる主将を目指してやってきた」と前田。前例のない女子主将という立場で、自分らしく等身大のリーダーシップを発揮し、下から部員を支えてきた。

前田は創部史上初の女子主将として部をまとめる

競技レベルの違いからチームとしての一体感を持つことが難しい環境で、全体視点を大切に「チームとして達成できる目標設定」を行ってきた。成果を上げるまでのプロセスを大切にしているが、もちろん結果を出すことも忘れない。前田も注目する長距離女子パートのエースは道下美槻(2年、順天)だ。昨年の日本選手権では、初出場ながらも決勝進出を果たし、「大型ルーキー」の名を轟(とどろ)かせた。結果を出している彼女はコロナ禍の状況で新たな練習メニューにも挑戦し、今年は更に強さに磨きをかける。関東インカレのレースで、一層成長した姿を見せてくれること間違いなしだ。主将の前田、エースの道下を筆頭に、パート全員でさらなる高みをつかみにいく。

トラックでも快進撃を続ける長距離男子パート

2024年に立教大が創立150周年を迎えるにあたり、18年にスタートした「立教箱根駅伝2024」。箱根駅伝出場に向け邁進し続ける立教大男子駅伝チームだが、今年はトラック競技にも注目だ。普段は寮生活を送り、上野裕一郎監督の指導の下で独自の練習メニューをこなす。そのため部内では独立した存在のパートとなっているが、関東インカレでは立教大陸上部として男子1部昇格に貢献する。

日々支えてもらっていることに恩返しすべく、トラック競技への情熱にも拍車をかける長距離男子パート。紫の襷(たすき)を背負う彼らを率いる主将は石鍋拓海(4年、日大習志野)だ。箱根駅伝という高い目標を目指す中、自分自身の記録とチームを引っ張らないといけない使命感の間で葛藤を感じていた。それでも立教大らしく、そして自分らしくチームを引っ張るため、全員がフランクに接することができる環境作りに気を配る。目標達成シートという新たな取り組みも発案した彼が掲げるビジョンは、「みんなが主役であるチーム」。実力差がある状況下でそれぞれが自分の形でチームに貢献できるよう、主将として意識変化の役割を担う。

石鍋にとって関東インカレは「立教大学の名を少しでも長距離界で示すための舞台」。自身が出場することは叶わないが、事業で強化してきた「立教らしさ」を誇るため、他の選手に思いを託す。その筆頭に立つのが斎藤俊輔(4年、秦野)、ミラー千本真章(3年、立教新座)、加藤駆(2年、学法石川)だ。

トラック競技でチームを引っ張るミラー(112番)

4月10日の金栗記念大会に3人とも出場し、全員が1500mで立教大記録を更新した。特にミラーは日本選手権の参加標準記録にも残り2秒と迫っている。「駅伝一辺倒になるのではなく、自分たちのやりたい種目をやる」という監督の指導方針。3人はその言葉を記録で示すトラックの主力株だと言えるだろう。

1つのゴールに向けて歩みを止めない立教大男子駅伝チーム。その通過点とも言える関東インカレで、部の期待に応えるべくどんな活躍を見せるのか注目だ。

個性が際立つフィールドパート

跳躍、投てき、混成の様々な種目が揃うフィールドパート。多種多様な競技を通して成長を遂げる、陸上部屈指のユニークさが溢(あふ)れるパートだ。個人での練習が多い中、パートへの帰属意識を高めるため様々な取り組みに献身する。

その音頭を取るパートチーフが折山景柊(4年、飯田風越)だ。元々はチーフを務める予定ではなかったという折山。先輩からの指名ではなく学年や後輩からの要望を受け、部の運営を行うチーフという立場になることを決めた。「自分が各競技のかけ橋になりたい」。選手という肩書以上にパートに貢献するため、一人ひとりとコミュニケーションを取ることを忘れない。良くも悪くも自由さが特徴だという「フィールド」パートの今年の目標は、「全員NO.1」。お互いが切磋琢磨(せっさたくま)し合える環境を作るため、コロナ禍でも積極的にモチベーションや問題点の共有を行った。「陸上部と言えばフィールドだよねと言ってもらえるようになる」ために、関東インカレではパート内から多くの出場者を出すことが目標だ。

六大学対校戦の走幅跳びで大森は立教大記録を更新した

折山が注目するフィールドパートの見所は、円盤投げの藤田海(2年、八千代)と跳躍の大森公乃祐(3年、駒場)だ。2人とも4月18日に行われた東京六大学対校陸上で好記録を叩(たた)き出した。特に大森は立教大記録を更新し、今波に乗っている選手のひとりと言えるだろう。実力を遺憾なく発揮して栄光を手にすることができるか、楽しみだ。

個性を尊重するがチームとしての一体感を忘れない。関東インカレでもパートとして一同精進し、陸上部に貢献してくれるだろう。

チームを支えるサポーターパート

最後に紹介するのが、選手たちを支えるサポーターパート。昨年までのマネージャーパートとトレーナーパートを合体し、新たな組織を創設した。「人数が少ないが、こちらの事情でサポートの質を落としてはいけない」。常に選手第一で考えるサポーター陣をまとめるのが小方優乃(4年、浦和一女)だ。

「チームで作る信頼と安心のサポーターパート」という目標を掲げた今年度。状況変化が大きく、コロナ禍の難しい環境下でも、いつも選手の声に耳を傾け選手に寄り添ってきた。今回の関東インカレは、選手だけでなくサポーターにとっても大きな節目となる。最後まで選手の活躍を後押しするため、パート一丸となって大会に向き合う。

笑顔で選手たちを支えるサポーター陣

各パートが一体感を大切にし、目標に向けてそれぞれのやり方で関東インカレに全力を注ぐ立教大陸上部。今の代で出場する最後の大会だからこそ、全員が精一杯のベストを尽くすため大一番へ望みをかける。総力をあげ、目指すは半世紀ぶりの1部昇格、創部史上最高成績だ。

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