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箱根は目標ではなく出場 立教箱根駅伝2024大解剖(前編)

箱根は目標ではなく出場 立教箱根駅伝2024大解剖(前編)
本気で箱根を目指す、立教大の挑戦が始まった

11月、立教大が本格的に箱根出場を目指した事業を始動するというニュースが飛び込んできた。「立教箱根駅伝2024」事業と銘打ち、横浜DeNAランニングクラブ所属の上野裕一郎氏を監督に迎える。「なぜこのタイミングで? 」「どうして上野氏? 」。この事業をスタートさせた立教大総長の郭洋春氏にじっくりうかがった。

いまだから始められた事業

――まず、この事業を立ち上げた背景から教えてください。

郭洋春総長(以下郭): いまや箱根駅伝は日本を代表する一大スポーツイベントですから、いままでも学内外から「立教大学は箱根駅伝を目指してもっと力を入れないのか」と声はありました。しかし、トップのレベルを目指すには、ヒト・モノ・カネのすべてがかかります。本学には51もの体育会系の組織があり、すべて平等に扱うというモットーで運営してきました。箱根駅伝を目指すということは、陸上競技部、とくに長距離だけに特別支援をするということ。それが妥当なのか、ほかの組織の了解を得られるのか、という点でなかなか踏みきれずにいました。

それでも今回この事業を発足させたのは、本学が2024年に創立150周年を迎えるがきっかけでした。たまたまですが、その年は箱根駅伝100回目の年になります。2万人の学生、20万人の校友、そのほか本学に関わってくれている方々みんなが一枚岩となって取り組める「150周年記念事業」として、「箱根駅伝出場」を目標に掲げるのにベストタイミングだと考えました。

――逆に、このタイミングでなければ始めてなかったということでしょうか。

郭: そうですね。いまだからできた、と本当に感じてます。箱根駅伝は私も毎年見てます。「タスキをつなげる」という競技には、たくさんの人の思いが詰まってる。多くの人を惹きつける舞台にわれわれもチャレンジしていきます。

指導者の実績ではなく、選手としての経験で

――横浜DeNAランニングクラブで現役選手として活躍していた上野氏を監督に招聘したことも、かなり驚きでした。

郭: そのようですね(笑)。反響はとても大きかったです。

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12月1日から指導をスタートしている上野監督

――中央大出身と、立教大には縁がない上野氏に決めた理由はなんだったのでしょうか。

郭: 大学スポーツの場合はOB・OGも多く、そのつながりで指導者が決まりがちです。しかし本学の陸上競技部の場合、箱根駅伝出場が途絶えてすでに50年。近代的な駅伝やマラソンに耐えうる指導力やカリスマ性を持った方を選ぼうと、学校関係者に限らず、広くフラットに探しました。

その中で佐久長聖高校、中央大学、エスビー、DeNAと第一線で活躍していた上野さんが、候補の一人として挙がりました。「勝つ」ことを知らない本学の長距離選手たちに、勝つための方法、第一線の選手としてのマインドや練習方法を教えてくれるだろう、と考え、オファーさせてもらいました。

――とはいえ上野氏は、選手としての実績はありますが、指導者としての実績は一切ありません。そのあたりは不安や問題にはならなかったのでしょうか。

郭: 誰だって、最初は指導者ではないですからね(笑)。指導実績よりも、彼がいままで一流の監督のもとで吸収してきた指導方法を伝えてくれれば、それが何よりではないかと思いました。実際、12月1日から着任していただいたのですが、その翌日の日体大での記録会に出場した選手の中に、上野監督のアドバイスをもらったあと、自己ベストを更新した選手もいたんです。

自立した、クレバーな選手を育ててほしい

――早速いい影響があったんですね。

郭: そうなんです。スポーツの中でもアマチュアスポーツは、指導者の影響が大きいと思ってます。上野監督はまだ33歳と若く、学生との距離も近い。持ち前のコミュニケーション能力も生かし、学生を導いてくれると考えてます。

とくに上野氏は「スピードキング」と呼ばれたこともある選手。自分なりにレースを組み立てて、考え、いままでの成績を収めてきたとうかがいました。その経験を生かして、上から押さえつけるのではない、選手個々の特性に合わせた指導を期待してます。走法、ウエア、シューズなども一つに決めず、自分で考えられる「自立したスポーツ選手」「クレバーな選手」を育ててほしいと思ってます。

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A~Cチームに分かれて練習する陸上部の選手たち

――箱根を目指し、出場することによって、他の学生にもいい影響があるとお考えでしょうか。

郭: 間違いなくいい影響があると思います。自分の限界を超えて挑戦する選手の姿を見て、自分たちもやればできるのでは、と思ってくれたら何よりですね。年始から全国に注目されている大舞台で母校の選手が走るということは、自分の大学に対する誇り、愛校心をよりかきたてるものになると思ってます。

それからここは強調したいのですが、箱根駅伝は「出たい」「出てほしい」とか「目指す」ではなく、「出る」んです! 24年に出場することはもう決まってる。私は絶対にできると思ってます。

――24年の箱根というと、いまから約5年後となりますが、箱根に出るためにはそれぐらい長期的に取り組む必要があるとお考えでしょうか。

郭: 箱根駅伝を実際に走るのは10人ですが、そのリザーブの選手、サポートする選手も含め、最低でも40人ほどはいないと戦えないと思ってます。そのためにはある程度の時間が必要。今後寮を建設するなどして、環境も整えていく予定です。

目指すは「文武両道」

――これから強化部指定をして、強い選手のスカウティングもするのでしょうか?

郭: いえ、実は強化部指定などはしてません。これはいままでほかのどの部にもしてません。アスリート選抜入試で入学する学生もいますが、その場合も特待生扱いなどはせず、試験を経て入学してもらいます。学生である以上は勉強もしっかりしてほしい。自立した、文武両道の人材となってほしいと考えてます。

人生100年時代と言われるいま、大学を卒業してもまだ約80年も人生が続きます。その先の人生をしっかりと歩めるように、大学でしっかり教育することが大事だと考えてます。スポーツの世界はとても厳しく、大学卒業後も生き残れるのはほんの一握りです。競技をやめる選手、続ける選手それぞれに、大学で学んだことを生かしてほしい。逆に言えば、教育をせずにスポーツばかりに取り組むのであれば、「大学スポーツ」の意味がないと考えてるんです。ここ立教大学から、新しい大学スポーツ像を作り出していきたいと思ってます。

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自分の限界を超えて挑戦する選手の姿が学生への刺激になると郭総長

「箱根と言えば? 」という質問には「過去から現在、未来をつなぐ伝統の重み」と答えてくれた郭総長。箱根の伝統、立教大の伝統を継承しつつも、新しい姿をつくり出そうとするエネルギーがビシビシと感じられた。後編では、新しく就任した上野監督に話をうかがう。

郭 洋春(カク ヤンチュン)

立教大学総長。1959年生まれ。2001年より立教大学経済学部教授。学生時代にしていたスポーツはバスケで、球技全般が得意。もし自分が箱根を走るとしたら、花の2区か、山下りの6区で「山下りの神・降臨」と言われたい。

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