スキー

國學院大・鈴木彩生、自分にできることを求めクラブ活動で感じたこと

結果にこだわりたいという國學院大學の鈴木彩生(本人提供)

國學院大學スキー部の鈴木彩生(2年、西武文理)は、決して多くない関東育ちのスキーヤーだ。スキー好きの両親に連れられて滑り方を覚え、小学1年生から競技を始めた。週末や冬休みは当たり前のように長野のスキー場に通い腕を磨いてきたが、大学のスキー部に入り改めて気付いたことがあるという。

無駄にできない時間とお金

東京生まれの鈴木は、スキー部がある西武文理高(埼玉)でインターハイや国体のアルペンに出場するなど活躍してきた。同じように埼玉の高校でスキーがうまかった先輩が國學院大に進んだこともありスポーツ推薦で入学、横浜市のスキー部の寮で生活している。

大学入学後、コンビニで初めてアルバイトをした。高校まではバイト禁止だった。時給1100円。「1000円稼ぐこと1時間働くことがこんなに大変なのか、と身にしみた」。小さいころから長野を拠点にするスキークラブに所属、シーズンになると菅平高原などへ頻繁に通ったり長期滞在したり。お金が掛かることは頭で理解していたが、不自由なく払い続けてくれた両親の有り難さを思った。結局、コロナ禍でバイトもうまく出来なかった。滞在費など1シーズン約100万円かかった。鈴木は「アルペンスキーはすごくお金がかかる。大学生になっても金銭的に親に頼りっ放しになってしまった」と昨シーズンを振り返る。

スキーができる有り難さをかみ締めている

こんな体験が競技に取り組む姿勢を変えた。小さい時から冬場は休みなどを利用して1カ月ほどスキー場へこもることが珍しくなかった。長期間の合宿のため疲れがたまると丸1日休んだり、練習を途中で抜け出したり。1本滑って調子が悪かったら、「今日はいいか」とやめることもあった。

そんな中、社会人選手たちはスキー場にやってきた土、日、若手以上に朝から夕方まで滑り込んでいた。鈴木は「大学生になり、自分で少しだけお金を負担してみたら、無駄にできる時間はないな、と思った。金曜日遅くまで働き、月曜日朝からまた働く社会人の方が疲れ知らずに滑る理由がわかった」と言う。「アルペンスキーの練習は1本20~30秒、それを10~20回こなす。1本、1本、より集中するようになった」。誰に言われるでもなく、練習密度は濃くなった。

クロカン、ジャンプへの挑戦

スキーは個人競技だが、インカレは学校対抗の団体戦でもある。男子2部の國學院大は1部昇格が目標だ。「どうすれば自分が貢献できるか考えた」という1年生の鈴木は昨シーズン、ノルディックスキーに挑戦した。國學院はアルペンの選手は充実していたが、クロスカントリーを専門にやる選手は2人だった。3人いればリレーに出場できるため、その一端を担うことになった。雪国の出身者は体育の授業などでクロスカントリースキーをやったことがあるが、鈴木には全く経験がなく、「足を引っ張らないぐらいに滑れれば」と練習を繰り返した。

昨シーズンはノルディックのジャンプにも挑んだ(本人提供)

さらに、学校得点を稼ぐためにジャンプにも挑んだ。「ノーマルヒル」より小さなジャンプ台の「ミディアムヒル」。スキー経験があるため、助走姿勢は安定していた。「参加人数が少ないから、ジャンプして下りればポイントを取れる」と発破をかけられたが、踏み切る時の恐怖をなかなか克服できなかった。結局、コロナ禍でインカレは中止に。腰を痛めたこともあり鈴木のノルディックスキーデビューはお預けとなったが、忘れられないシーズンになった。

部外の活動で視野を広げる

部内の活動だけにとどまらず、マイナビアスリートキャリアの「アンバサダー」として活動してきた。また、ヨガやティラピスなどを手がけるスタジオ「TAKT EIGHT」のサポートを受け日々新しい視点を取り入れながら、体作りに励んでいる。コロナ禍で思うようにいかないこともあるが、自ら動いて視野を広げてきた。「普通に学生生活していたら出会えないことも多く、役立っている」。人生の中でこの大学4年間が、競技を最優先で打ち込める最後の期間になるのだと感じている。「小さい頃から励んできたアルペンスキーで形あるものを残し、一花咲かせたい」と新シーズンを見据えている。

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