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特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

上武大のブライト健太、1年間の取り組みが実り打撃開花

豪快な打撃フォームで全日本大学野球選手権で2本塁打を放った上武大のブライト健太(撮影・試合は朝日新聞社)

2021年春、関甲新学生野球リーグ3本塁打、全日本大学選手権2本塁打の活躍で強いインパクトを残した上武大学の外野手・ブライト健太(4年、葛飾野)。50m走5秒8の俊足、遠投100mの強肩と高い身体能力を誇る。3年秋までは結果を残すことができなかったが、昨年1年間の取り組みが実り、今春、ドラフト候補として注目を浴びるようになった。

ドラフト候補左腕・隅田から一発

今春のリーグ戦でレギュラーをつかむと、50打数19安打、打率.380(リーグ2位)、12打点、3本塁打、6盗塁などの活躍で優勝に貢献。最高殊勲選手賞、最高出塁率打者(出塁率.483)、ベストナインを獲得した。高い身体能力を誇る右打ちの強打者にスカウトは熱視線を送る。

全日本大学選手権では、1回戦の西日本工業大戦でドラフト上位候補の左腕・隅田知一郎(ちひろ、4年、波佐見)の143km速球を左中間スタンドへ運んだ。2回戦の桜美林大戦では3安打1打点。準々決勝の東農大北海道オホーツク戦ではソロホームランを含む2安打2打点。敗れた準決勝の慶應義塾大戦でも2安打1打点。1回戦は4番、2回戦は1番、準々決勝は3番、準決勝は4番と打順を変えながら、4試合すべてで安打、打点を記録した。谷口英規監督も「打順を変えても自分の力を発揮できる選手」とブライトに全幅の信頼を置いている。

強打に加えて俊足、強肩も魅力だ

飛躍につながった昨年の取り組み

「3年生になるまではホームランばかりを狙うバッティングでした」と本人も言うように、確実性が課題とされレギュラーの座を手にすることができずにいた。打撃の改善に取り組み始めたのは昨春のことだった。

「丁寧に打つということをテーマに、打撃フォームにおいてまず体の“割れ”を大きく、しっかり作ることに取り組みました。それから選球眼。なんでもかんでも打とうとしていたんですけど、自分が打てる甘い球に絞って打つように心がけました」

歩きながらバットを振る「歩行スイング」を繰り返し、体の“割れ”を身につけた。バッティングの中で間(ま)が取れるようになり、その結果としてボール球にも手を出さないようになったという。また、テイクバックから踏み出しのときに顔の位置がぶれてしまうことが多かったが、チームメートに自身のバッティングフォームの動画を撮ってもらい、一流選手のバッティング動画と見比べながら自分のフォームを修正していった。3年秋もレギュラーをつかむことはできなかったが、辛抱強く取り組みを続けた。

全日本大学野球の初戦では西日本工大の左腕、隅田から決勝の本塁打

「つかんだなと思ったのは冬でした。冬の間も取り組みを続けて、春のオープン戦では打率もしっかりキープでき、以前の6~7割ぐらいの力でホームランを打てるようになりました」とブライトは説明する。1年間の取り組みが実り、バッティング技術の向上を実感。確信を持って臨んだ4年春が飛躍のシーズンとなった。

同世代の選手に負けない活躍をしたい

都立葛飾野高では3年間で通算38本塁打を放ち、「強い大学で全国レベルの野球を学びたい」との考えから、熱心に誘ってくれた上武大への進学を決めた。その秋のドラフトでは同じ学年の強打者、清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)、安田尚憲(履正社→ロッテ)、村上宗隆(九州学院→ヤクルト)、中村奨成(広陵→広島)らが1位指名を受けプロへ進んだ。「すごいなぁと思いながら、テレビで見てました。同級生という感覚はなくて、テレビでプロ野球選手を見るのと同じような感じで見てました。でも今は、プロ野球が夢から目標に変わりましたし、自分の力がどこまで通用するのか試してみたいです。同じ世代の選手たちに負けないような活躍をしたいです」とブライトは強い口調で話す。

葛飾野高時代はドラフト指名された同期は夢のような存在だった

昨秋のドラフトで1学年上の先輩、古川裕大(日本ハム・捕手)、佐藤蓮(阪神・投手)の2人が指名を受けたことも大きな刺激になったという。

「身近な人がプロ野球に進んだのは初めてだったので刺激になりました。古川さんはバッティング練習でも、ただ飛距離を出すのではなく、方向を決めて打つなど、丁寧に丁寧に練習していました。それを見て自分も丁寧にやらないといけないなと思うようになりました」

憧れは大谷や柳田

現在の課題は守備面と体作りにあるとブライトは言う。
「今の自分の守備のレベルでは話にならない。守備範囲、送球などを一番の課題と考えています。あとはフィジカル面。プロの1軍で活躍するためには1年間通して試合に出続けて戦える体にしなければいけない。ウェートトレーニングにも力を入れて取り組んでいます」

豪快な打撃とは対照的にコツコツと努力を続ける(撮影・小川誠志)

憧れの選手は大谷翔平(エンゼルス)、柳田悠岐(ソフトバンク)の2人だ。「右打ち、左打の違いはありますが、大谷選手、柳田選手のように率を残せてホームランも打てる選手になりたいです」とブライトは目標を語る。

ガーナ人の父と日本人の母のもとに生まれた。小学生のころは、周りの子と違って目立ってしまい悩むこともあったという。今は「目立つことは得かなと思います。運動能力も父のおかげ」と両親へ感謝の気持ちを持っている。

座右の銘は「一日一歩」。「小さなことの積み重ねを大事にしていきたいです」とブライトは話す。プロの舞台で放つ美しい放物線を夢見ながら、毎日の努力を積み重ね進んでゆく。

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