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特集:東京オリンピック・パラリンピック

W杯3位に歴史的勝利 それでもバスケ日本代表は淡々

第4クオーター、ゴール下に攻め込む八村=代表撮影
第4クオーター、ゴール下に攻め込む八村=代表撮影

 バスケットボールの国際強化試合が18日、さいたま市のサイデン化学アリーナであり、男子の日本代表(世界ランキング42位)は、東京オリンピック(五輪)に出場するフランス代表(同7位)に81―75で競り勝った。米プロNBA所属選手を5人抱える強豪に対し、日本も渡辺雄太(ラプターズ)、八村塁(ウィザーズ)の両NBA選手にボールを集めて前半からリードを作り、堅い守備で逃げ切った。

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 これで五輪前の国際強化試合は最後。五輪本番は、1次リーグで26日にスペイン(同2位)、29日にスロベニア(同16位)、8月1日にアルゼンチン(同4位)と対戦する。

■強豪から得た自信 でも過信しない

 「自信にして良い部分と過信しちゃいけない部分。そのバランスはしっかりしないといけない」

 主将を務める渡辺雄太(ラプターズ)は、試合後も冷静だった。ロッカールームでフリオ・ラマス監督が盛んに選手たちを褒めても、当人たちは淡々としていたという。

 相手のフランスは2016年リオデジャネイロオリンピック(五輪)6位。2019年ワールドカップ(W杯)準々決勝で米国を破り、3位に入った。12選手のうち5選手が米プロNBA所属で、ルディ・ゴベール(ジャズ)は今季の最優秀守備選手とシュート成功率(フィールドゴール)1位となったスター選手だ。紛れもない強豪で、結果だけ見れば、「歴史的勝利」と言っていい。

 それでも、渡辺雄は「正直フランスは(移動などで)状態が良くなかったと思う」。19年W杯の直前の親善試合で強豪に勝っても、本番では5連敗だったことが念頭にあった。

 公式記録を手に、「オフェンスリバウンド(OR)が11本取れたのは自信にしていい」「逆に相手にOR11本も取られたのは反省」「速攻からの得点が8点しかないのは少ない」と課題を列挙していった。

 東京オリンピック(五輪)の対戦相手は全て日本にとって格上だ。だからこそ、この日の結果を一つ残らず生かそうとする貪欲(どんよく)さが渡辺雄をはじめとした選手たちからにじむ。

 「もちろん、フランス相手に萎縮することなく力を出し切れたのは自信になった。日本のバスケットは確実に成長している。東京五輪でそれを示したい」

■ほぼ全チームにNBA選手

 東京オリンピック(五輪)に出場する男子のバスケットボールは12チーム。全選手を米プロNBA選手で固めた米国(世界ランキング1位)だけでなく、実はほとんどのチームがNBA選手を擁し、日本が1次リーグで対戦するチームも例外ではない。

 初戦で対戦するスペイン(世界ランキング2位)には身長191センチのPGリッキー・ルビオ(ティンバーウルブズ)が名を連ねる。14歳でスペインでプロデビューし、仲間でも予測できないパスセンスを見せる。スペインが優勝した2019年ワールドカップ(W杯)では、決勝戦の最優秀選手(MVP)、大会ベスト5、大会MVPと、各賞を総ナメにした。

 04年アテネ五輪金メダルの歴史を持つアルゼンチン(同4位)の司令塔は、ファクンド・カンパッソ(ナゲッツ)が務める。身長178センチと小柄ながらNBA入りした実力を持つ。スピードと広い視野を持った司令塔で、レアル・マドリード時代には2度のユーロリーグ制覇も経験したベテランだ。

 初の五輪出場となるスロベニア(同16位)といえども、日本にとっては高い壁だ。ルカ・ドンチッチ(マーベリックス)は19年NBA新人王で、得点、アシスト、リバウンドと全方向的に活躍するパワフルな選手だ。その存在が、スロベニアの前評判を「東京五輪のダークホース」へと押し上げている。

 渡辺雄太(ラプターズ)、八村塁(ウィザーズ)と、2人のNBA選手で華やかに見える日本の現状も、世界から見ればスタンダードに過ぎないのだ。

=朝日新聞デジタル2021年07月19日掲載

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