ラグビー

特集:東京オリンピック・パラリンピック

7人制は「究極の鬼ごっこ」 即興的な動きでトライ重ねるラグビー

ラグビー日本男子に大学生で唯一選ばれた明大3年の石田(撮影・朝日新聞社)

 7人制ラグビーの競技性を、日本代表男子の岩渕健輔ヘッドコーチは「究極の鬼ごっこ」と表現する。15人制ラグビーが持つ格闘技的な要素より、運動量や機敏さが勝敗をわける特色を端的に言い表している。

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 15人制と同じ大きさのグラウンドで、プレーできるのは7人。一人ひとりが受け持つスペースは広く、攻守交代が相次いで起こり、あっという間にトライが生まれる。試合時間も7分ハーフ。目が離せない。

 重視されるのは、スピード、そしてFW、バックスに関係なく複数のポジションをこなせる器用さ、即興的な動きだ。日本代表は全選手が複数のポジションを練習。コーチの指示を待つのではなく、自分たちで考えて自主的に判断できるよう、選手だけのミーティングを多く持つなどの準備を積み重ねてきた。

 人数構成はFW3人、バックス3人、双方をつなぐSHが1人。スクラムは3人で組む(15人制は8人)。ラインアウトではSHが球の投入役になることが多い。

 司令塔、突破役、外側で待っていてトライを取る役と大まかな役割は決まっているものの、15人制ほど個々の仕事が明確に分けられているわけではない。また、防御の際にはディフェンスラインの後ろに「スイーパー」を配置して、15人制のFBのように危ない空間を埋める役割をさせるのが一般的だ。

 最も大事なセットプレーの一つと言われるのがキックオフ。過去の国際大会では全トライのうち20%の起点がキックオフ、というデータもあった。

 15人制と違って、得点を取ったチームが蹴り込む。蹴った側が再獲得できれば、さらなる得点への好機が広がる。高さ不足で苦しんできた日本代表は、このキックオフの球を確保するための切り札として、フィジー出身で身長196センチのセル・ジョセ(近鉄)を加えた。得点後のリスタートは勝負を分ける大きなポイントになる。

 7人制は1883年、スコットランド発祥と言われる。地元クラブの財政難解消のため、短い日程で多くのチームが参加して大勢の観客を集められる方法として考案された。

 コロナ禍に見舞われる前は、世界のトップチームが世界の各都市を転戦するワールドシリーズが最高峰の舞台だった。途中で中断した2020年シーズンで、日本は男子が16位、女子が11位(首位はともにニュージーランド)。日本は東京五輪で男女ともメダル獲得を目標に掲げているが、実績ではまだ世界と距離がある。

(野村周平)

=朝日新聞デジタル2021年07月26日掲載

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