法政大・渡辺倫果、船橋の新たな拠点でチャレンジ 練習では言語化を意識
フィギュアスケート女子で法政大学1年の渡辺倫果(りんか、青森山田)が、拠点を千葉県船橋市の三井不動産アイスパーク船橋に移すことが決まった。冬季アジア大会銅メダルなど国際舞台で活躍した中庭健介コーチに師事する。これまでカナダの関徳武コーチの指導を受けていたが、コロナ禍で渡航するめどが立たず変更に至った。心機一転、新たな環境で再出発をめざす渡辺の思いを聞いた。(※ギフティング受付は終了しました)
関コーチに感謝「成長できた」
渡辺は中学時代、関コーチが拠点とするカナダ・バンクーバーに単身で渡った。昨年、日本に帰国したが新型コロナウイルスの感染拡大で海外渡航が厳しくなり、国内のリンクで練習を積んできた。
「ずっと悩んでいて、中途半端なままで、この先どうなるかわからないので、日本でちゃんと取り組んでいきたいと思いました。関先生から中庭先生に頼んでもらいました」。コロナ禍でなければ継続して関コーチの指導を受けたかったが、練習環境を整えるためにも決断せざるを得なかった。4月から利用していた三井不動産アイスパーク船橋でアカデミー所属の選手となり、そこでヘッドコーチを務める中庭コーチの指導を受けることになった。
約5年間お世話になった関コーチには感謝してもしきれない。「カナダで練習できたこともそうですが、私自身が人として成長できたと思います。そのきっかけを作ってくださったのは関先生です。今の自分、今の考え方があるのは関先生のおかげだと思ってます」と話した。
自分のジャンプを言語化して改善
中庭コーチは「元祖・4回転ジャンパー」と呼ばれ、高橋大輔(関西大学カイザーズフィギュアスケートクラブ)や本田武史さんらとトップを争ってきた実力者。2007年冬季アジア大会銅メダル、全日本選手権で3度の表彰台に上がるなど活躍し、2011年に現役を引退した。その後は福岡を拠点に指導者として後進を育ててきた。
コーチの印象について渡辺は「いろんな選手を研究していて、スケート大好きな思いが伝わってきます。ひとりのコーチとして、ひとりの人間として尊敬しています」と語る。
指導の特徴は身体動作の「言語化」。ジャンプを跳んだ後、コーチから「いまはどういう感覚?」と聞かれる。渡辺は「いまこういう感じでした」「自分がこういったので抜けたのかな」と説明する。なぜ失敗したのか、どう修正すればよいのかを自分で言葉にすることで整理し、改善していく。
「頭でわかっていても跳べないときは感覚的になってしまっています。そのときは言語化するといいと中庭先生から言われました。なので、いつもリンクでぶつぶつ言っています(笑)。言語化したらジャンプが安定してきたので効果を感じています。先生は選手一人ひとりに聞いて、他の選手にもその情報を伝えることで、よりよい解を導きだそうとしているのだと思います」
ジャンプの跳び方は中庭コーチがお手本になる。「教科書のようなジャンプを跳んでいます。跳ぶ瞬間はキレがあるけれど前後は流れがあって動きが滑らかですごくきれいです。コーチに対してですが、悔しいという思いで私も練習しています」。習得をめざす4回転ループジャンプも無理はせず、渡辺自身のモチベーションに合わせて取り組むことができている。
演技構成点を伸ばしたい
今後の課題についてスケート技術や要素のつなぎなど演技構成点の向上を挙げる。
6月末のアクアカップでは、シニア女子でショートプログラム(SP)とフリーともに1位の樋口新葉(明治大学/ノエビア)や同じアカデミー所属でジュニア女子に出場した中井亜美から刺激を受けた。「樋口選手のフリー『ライオンキング』がかっこよくて鳥肌が立ちました。シニアのトップ選手はこういうスケーティングをするんだと。自分もそこに追いつけるくらいのスケーティングスキルは持ちたいなと思いました。中井選手は足元を見ていてもきれいに踏んでいますし、踊り出すと華があります。こんなに自分がうまくなりたいと思ったのが初めてくらいです」
基礎のクロスから練習し、確実な技術を身につけることで演技構成点の7点台を安定して出すことをめざす。アカデミーには全国レベルの選手も所属し、氷上だけでなく、バレエや陸上トレーニングを通して切磋琢磨(せっさたくま)する。
渡辺は8月9日から滋賀県立アイスアリーナで始まるげんさんサマーカップに出場予定だ。SPは「Heartlines」、フリーは「カルミナ・ブラーナ」を披露する。「ショートは滑りやすい曲でステップが気に入っています。フリーはかっこいい系をやりたいと思っていて挑戦できてうれしいです」。振り付けは今後手直ししてもらい、ブラッシュアップを図る。
拠点とコーチを変更し、決意を新たにした渡辺。「スケート人生は長くないので、頑張るのはいましかないと思っています」と力強く語った。