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特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

創価大・鈴木勇斗 鹿屋中央高出身の152km左腕は大学3年秋に大きく成長

春の開幕戦で好投した創価大の鈴木勇斗(撮影・森田博志)

創価大の左腕・鈴木勇斗(4年、鹿屋中央)は、昨秋の東京新大学野球1部リーグ戦などの快投で一躍、ドラフト候補として注目を浴びるようになった。今春、ドラフトへ向けても順調なスタートを切ったと思えたが、コロナ禍によりアピールの場は突然奪われた。この秋も先は見通せないが、悔しさをバネに最後のアピールに挑む。

春の初戦は1安打13奪三振完封

今春、初戦の杏林大1回戦、プロ野球12球団のスカウトが見守る中、鈴木は1安打13奪三振の完封勝利を挙げた。チームも自身も順調なスタートを切った。ところがリーグ戦2カードを終えた4月下旬、創価大硬式野球部員の新型コロナウイルス感染が判明。チームは3カード目以降を出場辞退することになった。コロナ禍によって実力をアピールするチャンスを奪われてしまったが、鈴木は「悔しかったです。チームもいい感じで春のリーグ戦に入ることができていたので。それでも、チーム全体で『起こったことは仕方がないから、秋に向けて今から準備していこう』という話をして。自分も秋に向けてまた体を作ってレベルアップしようという気持ちに切り替えました」と前を向いて話す。

コロナ禍の最後のリーグ戦でアピールできるか

昨秋のリーグ戦、鈴木は4勝1敗、9試合47回を投げ自責点9、防御率1.72という成績で最高殊勲選手、最優秀投手、最多勝利(タイ)、ベストナインを獲得した。続く関東大学選手権では、初戦の国際武道大戦で9回3失点12奪三振の完投勝利。翌日の準決勝・上武大戦では6回途中からマウンドに上がり3回3分の2を無失点に抑えた。3連投となった決勝・桐蔭横浜大戦では先発し4回3失点で降板し敗戦投手となったが、この好投で一躍ドラフト候補として注目を浴びるようになった。

2段モーションのピッチングフォームから放つストレートは最速152kmをマークする。「自分の中では真っすぐが一番自信あるので、そこを見てほしいですね。真っすぐは自分の生命線。真っすぐが調子いいと他の球種もいいので」と鈴木はアピールする。自信のあるストレートを軸に、スライダー、チェンジアップ、カーブを効果的に織り交ぜ三振を奪う。打者へ向かって踏み込む右足の使い方はメジャーリーグで活躍する左腕、クレイトン・カーショー(ドジャース)のフォームを参考にしている。「カーショー投手のフォームを見て、やってみたらすごく自分の中ではまったので」と鈴木は自身の投球フォームについて説明する。

先輩のレベルの高さに衝撃を受けた

創価大へ入学した当時、2学年上には杉山晃基(ヤクルト)、望月大希(日本ハム)、小孫竜二(鷺宮製作所)とドラフト候補右腕3人がいた。
「入学前は1年生からベンチに入って投げたいという気持ちが強かったんですが、先輩たちのピッチングを見て衝撃を受けました。えげつないレベルのピッチャーでした。これは人並み以上に練習していかないとだめだと思って。でもそれで燃えたというか、やってやろうという気持ちにはなりました」

レベルの高い先輩投手陣のピッチングを見て、まだまだ自分のレベルは低いということを思い知らされた。「まずは体を作って3、4年生になって投げられる投手になろう」と目標を設定。1、2年生のころの取り組みについて鈴木はこう話す。

地道な努力で投球フォームも力強さを増した

「監督、コーチ、トレーナーとも相談して、自分の体を使いこなせるようにならないとパフォーマンスは上がらないと思ったので、通常の投げ込み、走り込み、トレーニング以外に、自分自身の体の感覚を高めるためのトレーニングを一生懸命やりました」

倒立歩行やブリッジ、アメフトのボールを投げるトレーニング、スローイングの練習器具を使った投球フォームの矯正などを積み重ねた。1、2年生の間、公式戦の登板機会は少なかったが、3年秋になって、鈴木のパフォーマンスは一気に上がった(3年春はリーグ戦中止)。

「3年の秋はリーグ戦を戦う中で、自分でもひとつステップアップできているという実感が持てるようになりました。関東選手権でも初戦、いい感じで投げられて、準決勝の上武大戦ではそれまでにないぐらいのいい感覚をつかむことができました」

関東大学選手権準決勝の九回、上武大の4番古川裕大(現北海道日本ハム)に投じたストレートは自己最速の152kmをマークした。このころから鈴木はプロ入りを強く意識するようになったという。

「調子は春よりいい」と鈴木も楽しみにしている(創価大野球部提供)

関東大学選手権の決勝に進出した2チームは、本来であれば明治神宮大会への出場権を得られる。しかし昨秋はコロナ禍のため大会が中止になってしまった。東京六大学を制した早稲田大、東都を制した亜細亜大、関西地区選手権を制した近畿大などと、大学日本一をかけて戦う中で実力をアピールする大きなチャンスも奪われた。

ドラフト会議は10月11日

10月11日のプロ野球ドラフト会議に向け、今秋のリーグ戦は最後のアピールの場になる。夏の練習、オープン戦で鈴木は新しい変化球の習得にも取り組んだ。東京新大学野球秋季1部リーグ戦は9月1日、大田スタジアムで開幕する。創価大の初戦は2日、相手はプロ注目右腕・重川恵詩(4年、浜田)を擁する東京国際大だ。「調子はすごくいい状態です。春よりも明らかによくて、気持ち的にも身体的にも前向きな状態。今、着々と準備できているところです」と鈴木は開幕へ向け意気込む。春味わった悔しさをバネに、秋はさらにスケールアップしたピッチングを披露するつもりだ。

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