アメフト

前DeNAの石川雄洋、ノジマ相模原の練習2カ月でみせた非凡なパスキャッチ

第4Qに24ydのパスをキャッチしたノジマ相模原WR石川雄洋(撮影・北川直樹)

プロ野球を引退し、アメリカンフットボールに挑戦している前横浜DeNAベイスターズの石川雄洋(たけひろ)が国内最高峰Xリーグでデビューした。ノジマ相模原ライズに加入した35歳は、開幕の富士通フロンティアーズ戦(9月4日)にWR(ワイドレシーバー)で途中出場、2カ月余りのフットボール練習で初のパスキャッチも記録した。

「野球のように毎日試合がなく、1試合にかける雰囲気が試合前から伝わってきた。その中に入らせていただき興奮したというか、改めてアメリカンフットボールの選手はすごいとリスペクトした」

雨の中、試合前練習が始まり緊張感が漂う(撮影・朝日新聞社)

WRは相手ディフェンスを振り切り、クオーターバック(QB)のパスを受けるのが主な役割。試合前の練習で、いつものようにスムーズに捕球できなかったのは雨模様の天気だけが理由ではない。プロ野球で通算1003安打を放った石川もさすがに硬かった。「去年は1軍出場がなかったので、試合前の雰囲気、熱く込み上げてくる思いを久しぶりに感じた」と振り返った。

第4Qに登場、スピードあふれるラン

サイドラインから試合を見守る時間が続いたが、いつでも出られるように心の準備はできていた。第4クオーター、強豪の富士通に10-49と大きくリードを許した場面で、「いくよ」と首脳陣から声がかかった。オフェンス陣の両翼から相手をスピードで上回り駆け上がったが、パスが来ることはなかった。

スピードは通用する。走る姿勢などが課題になる(撮影・朝日新聞社)

試合時間は残り2分ほど、相手陣44yd付近からの攻撃だった。石川は一番左から力強くダッシュし内へ切れ込んだ。QBカート・パランデック(ネバダ大ラスベガス校)からのパスが向かってくる。振り向きざまにしっかりつかんだ。「不思議な感じでした。やっている時は本当に必死で。オフェンスラインの人とかも頑張ってくれていますし、カートもいい球を投げてくれたので、絶対にキャッチしてやろうと思っていましたが、その瞬間はそんなこと考えられなかった。練習でやったことをそのままできるようにだけ心がけた」。24ydのパス成功で攻撃権を更新、終了間際のタッチダウン(TD)につながる価値あるプレーだった。

初出場で初キャッチと非凡なところをみせた(撮影・朝日新聞社)

6月合流、ぶっつけ本番

チームの練習に合流したのは6月下旬、「試合みたいに激しくはなかったが、ディフェンスの人と合わせてコンタクトの練習にも入った」。試合では捕球直後にタックルを受けたが、「後ろから来ているのはわかったので、準備はできていた。あまり痛くなかった」とケロリとしていた。

横浜高では涌井秀章(東北楽天)らと同期で、2年の春に第75回選抜大会で準優勝。3年夏の甲子園では初優勝する駒大苫小牧(北海道)に準々決勝で敗れたが、秋の国体の決勝ではダルビッシュ有(パドレス)がいた東北(宮城)を下して優勝した。

2004年のドラフト6巡目で横浜(現DeNA)に入団し、俊足巧打の野手として16年在籍した。プロ初安打をマークしたのは3年目だった。「野球はずっと昔からやってきて(初)ヒットを打った。アメフトはゼロからはじめて捕ったので、今回の方がうれしかったかもしれない」と笑った。アメフト仕様に体重を3kg増やして身長184cm、体重81kg。「重くなってもスピードを落とさないメニューをトレーナーの方に組んでもらい、食事もたくさん食べている」と肉体を改造中だ。

プロ野球DeNAで盗塁を決める石川(撮影・朝日新聞社)

仲間の信頼、膨らむ夢

真剣にフットボールに向き合う姿勢が、チームからも受け入れられている。城ケ滝一朗ヘッドコーチが「出たら活躍できる、パスは捕れるだろうと思っていた。日頃からまじめにやっている。そういう選手が本番で力を発揮するというのは僕も経験上わかっていた」と言った。28歳の笠井英治主将(法政大)は「35歳という年齢で全く別のスポーツからフットボールへの挑戦は尊敬する。野球でプロまで突き詰めたので、プレーした時の目つきは別人のような集中力を持っている。同じハドルにいたが、この人、何かしらビッグプレーするなというのは感じた。一緒にやっていて楽しく、僕もポジション柄(OL)、守りたいなと思うような選手です」。

試合後のインタビューでは笑顔ものぞいた(撮影・北川直樹)

公式戦初TDなど石川の夢は膨らむ。「理想だし、僕も捕ってみたいというのはあるが、出されたところで、チームに貢献できるように頑張ってやっていきたい」
オールドルーキーの挑戦が楽しみだ。

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