陸上・駅伝

東海大・市村朋樹 最終学年での躍進と覚悟「駅伝でもしっかり貢献したい」

前半シーズンでの活躍が目立った市村(撮影・佐伯航平)

東海大学の市村朋樹(4年、埼玉栄)は最終学年になってから、大きく躍進を見せている。4年生としてチームを引っ張る存在となり、駅伝シーズンでもキーマンとなる市村に、前半シーズンを改めて振り返ってもらった。

想定より良い結果「うれしい誤算」

市村は今年4月の日本学連10000m記録会で、大学初の10000mレースを走った。そこで28分03秒37で6着、学生では3着。日本選手権の参加標準記録も突破し、5月3日には日本選手権10000mに出場。同月の関東インカレ5000mでは13分56秒99で5位、次の週に3000mの記録会を挟んでさらに翌週の学生個人選手権は13分45秒20の自己ベストで優勝。7月のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会では13分37秒50と、さらに自己ベストを更新した。

「自分が予想していたよりも良い結果を残せたという点で、うれしい誤算だったと思います。僕の状態が今のチーム状態にも影響していると思うので、前半シーズンをいい状態で来られたのは良かったと思います」。市村は明るい声でそう話す。

練習を継続できていること、持久力がついたことが活躍の要因だ(撮影・藤井みさ)

年始の箱根駅伝が終わって、チーム全体の課題として上がったのはレース後半での落ち込み、スタミナ不足。練習方法や体制などもそれまでとは大きく変わり、ジョグや距離を踏むことに重きを置いたトレーニングに変わった。市村が入学した時点では2つ上に「黄金世代」がおり、もともとのスピードを持った才能型の選手が多かった。トラック重視のトレーニングが多く、その練習に沿っていった結果、スピードを身につけることができた。「いままでスピードしか磨いてこなくて、トラックで結果を出せても長い距離では結果が乏しいという面がありました。距離に対する耐性がつけられていませんでした。それが春先からのトレーニングで、持久力がついたことでこの結果につながっているかなと思います」

春シーズン一度も故障せず、練習を継続できたことも好結果の要因だ。ホクレンでの13分30秒台に関しても「高い水準で練習も積めていたので、少なくとも自己ベストは出るだろうなと思っていました」と振り返る。

「何を目指すのか」を見極めて

市村には今年、トラックシーズンは5000mで勝負したい、日本選手権に出たいという目標があった。5月4日のゴールデンゲームズinのべおか(GGN)で記録を狙い、6月の日本選手権に出場する……という青写真を描いていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、GGNは開催中止に。記録を狙う場がなくなり、日本選手権への道も絶たれた。5月の時点では「ショックだった」と話していたが、今振り返ると「過ぎたことなので、しょうがないです」という。

「もともと(GGNが)中止になるかもという話もありました。そのぶん、4月に10000mで記録が出て、学生のあいだに日本選手権に出場するという目標は達成できました。もちろん5000mで出られなかったのは悔しいし、少し形は変わりましたが、日本選手権に出られたことを自信にしてそれ以降のシーズンで頑張っていこうと思えました。最低限の目標はクリアできたかなと思います」

形は少し変わったが、大舞台を経験して自信がついたと話す(撮影・佐伯航平)

東海大はチームとして、駅伝に集中するために今シーズンは日本インカレには出場しないと決めた。夏合宿前にその方針が両角速監督から示された時、市村は最後のインカレで入賞を目指したいという思いがあったため、監督にかけあった。話し合いをしてOKをもらったが、夏合宿が始まった8月中旬に足をけがしてしまった。「今は復帰して問題なく走れるんですが、全カレにもし出るのであれば、夏合宿の練習をすべてしっかりこなして、その成果を出したいと思っていました。故障した時点で、全カレにこれでもし出たら駅伝シーズンにつながらないなと思いました。自分で決めたことを守れていないのは嫌なので、欠場を決めました」。いま、市村の気持ちはまっすぐに最後の駅伝シーズンを向いている。

今年こそ、4年生として駅伝で結果を

市村は2年時の出雲駅伝で大学駅伝デビューを果たし、4区区間新記録で区間2位。続く全日本大学駅伝では5区区間7位だった。昨年はスピードを評価され、全日本大学駅伝で実力者が集まる2区に配置されたが、調子が上がらず区間19位と出遅れた。12月に右の大腿骨を疲労骨折してしまい、箱根駅伝はメンバーに入っていたものの出走せずに終わった。「大学駅伝では、満足いかない結果しか残していません」。だからこそラストイヤーにかける思いは大きい。

「去年足を引っ張ってしまったのもあるので、出雲、全日本、箱根と4年生として結果を残していきたいです。そのために全体を通して持久力やスタミナをつけるトレーニングをしてきました」と話す。「任されるからには、3大駅伝すべてで区間賞を取りたいです。主力区間で貢献したいと思っています」

シーズン初戦の出雲駅伝は距離も短く、市村の得意とするスピード、スプリント力を生かせる展開になる。逆に、箱根の20km超の区間には苦手意識もあって不安だ、と正直な気持ちを口にする。「でもそういうことを言っていられるような状態じゃないので。箱根駅伝でちゃんと戦えるように、トレーニングを積んでいます」。夏合宿では例年より距離を踏み、夏前よりも多少自信を持って走れるようになったと思うという。主力層の持久力の底上げができたという手応えもある。

最後の年は3大駅伝すべてでチームに貢献したい。駅伝シーズンはまもなくだ(撮影・佐伯航平)

チーム内では石原翔太郎(2年、倉敷)の強さが際立つが、4年生として石原にばかり頼れない、石原の負担を軽くしたい、という気持ちは常に持っている。市村から見て、伸びている選手をたずねると、年始の箱根駅伝で10区アンカーを務めた竹村拓真(3年、秋田工)の名前が返ってきた。「夏合宿中も、指定されたメニュー以上の距離を踏んだり、誰よりも練習しています。タフさ、地脚の耐久性はチームで一番だと思います」。ルーキーの徳丸寛太(鹿児島実業)も、1年生ながら一度も脱落することなく上位チームでの練習を乗り越えてきた。「レースでは結果が出ていないですが、それも大学の雰囲気への慣れだと思います。故障なく練習が積めているので、もう少し自信がつけばやってくれるだろうと思っています」と後輩への期待をのぞかせた。

「今シーズン結果を残し続けた僕が、駅伝でもしっかり結果を残したいです」。4年生として、エースとしての覚悟を感じる言葉。市村は東海大の先頭に立ってラストイヤーを駆ける。

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