東海大主将・本間敬大 夏を超えての手応え、ラストイヤーは後輩につなげる結果を
東海大で今期の主将を務める本間敬大(4年、佐久長聖)。陸上は大学までと決め、最後のシーズンに臨んでいる。今のチーム状況と、秋からの駅伝に向けての思いを聞いた。
チームとして「力不足」、スタミナ強化を重視
本間は春先には就職活動をしており、足のけがも重なったこともあり個人としてのシーズンの始動は遅くなった。前半シーズンで出場したのは5月の東海大記録会5000mの1レースのみ。監督やコーチとも話して、無理して記録を狙うというよりは夏合宿に向けて準備していこう、と決めた。ジョグや距離走など、地道なトレーニングに徹して土台作りをはかった。
チームとしては5月の関東インカレ1部10000mで石原翔太郎(2年、倉敷)が28分05秒91をマークし、2位で日本人トップ。5000mでは市村朋樹(4年、埼玉栄)が13分56秒99で5位入賞を果たした。「2人は学生の中でもトップクラス。駅伝に向けて力をつけてくれたと思います。ですがハーフマラソンでは入賞者を出すことができず、トラックでは2人以外は惨敗といえる結果でした。全体的に力不足だったなと思います」
今まで「スピードの東海」と言われるように、トラックでもタイムを持つ選手が駅伝でも実力を示してきた東海大学。だが昨年「黄金世代」が卒業し、今年春に「3本柱」が卒業したことで、チームは大きく転換を迫られた。タレント頼みから脱却し、今いる選手たちの底上げを図っていく形へとトレーニングも変わった。昨年度の2つの駅伝から、特に長い距離での後半の落ち込みが課題として現れたこともあり、スピードよりもスタミナ重視へ。3次に及んだ夏合宿でも、1、2次ではポイント練習を行わず、地道なジョグを中心に距離を伸ばした。3次合宿では距離走とポイント練習を交互に取り入れ、スピードを加えながらさらにスタミナを強化した。距離走のペースも以前より上がるなど、量も質も高めていった。すべては、長い距離の箱根駅伝を見すえてのことだ。
夏合宿での手応えと成長
本間は自身、4年間で最も練習を積めたという手応えを得た。合宿中のポイント練習でも、先頭に立って引っ張る場面も見られた。以前の取材で、自身の弱点を「練習になると一歩引いてしまうところ」と言っていたが、やはり意識が変わったのだろうか。「4年生が少なかったこともあり、チームを引っ張っているのは自分だという意識もありました。今までは先頭を引っ張るのはキツいので、引っ張りたくないと思っていたんですが(笑)。夏合宿を通じて、走りでも精神的な面でも成長できたのではないかと思います」
主将として心がけているのは、まず第一に練習を途中でやめたり、離れたりしないこと。さらにプラスできる時はプラスし、常にチームを引っ張っていけるようにと考えている。「練習量も増えたので、多少足を痛めた選手などもいます。その選手にもしっかりとコミュニケーションをとって、あまり無理をさせすぎないようにしています」。特に夏合宿中は、普段寮にいるときよりもコミュニケーションを取れたと感じている。
昨年の全日本大学駅伝で大学駅伝デビューを果たした本間だが、高校3年の全国高校駅伝(都大路)以来の駅伝に緊張してしまい、集中できていなかったと振り返る。「今年は3大駅伝を全て走りたいと思っています。しっかりと集中して、主将らしい走りをしたいです。走るからにはしっかりと区間賞争いをしたいと思います」と力強い。自身の強みは「レースで失敗しない安定感」。だが裏を返せば安定した成績だが、驚かせるような走り、爆発力がないということでもある、と自らを分析する。「いちばん大事なのは安定した走りです。それは最低限として、でもやっぱり周りを驚かせるような走りができたらなとは思います」
結果を残して後輩につなげたい
幼少の頃から箱根駅伝を目標にしてきたため、陸上ではそれを区切りとして次のステップに進みたいと考えた。実業団からの誘いもあったというが、大学まででの引退を決めている。6月に話を聞いた時は、「箱根では10区を走り、チーム目標である3位以内でゴールテープを切って、そのまま引退したい」と少し冗談めかして話していた本間。今もその気持ちは変わりませんか? とたずねると、夏合宿を通じて成長できたという手応えから、「往路の主要区間を走りたい」と答えてくれた。
「駅伝では4年生が引っ張っていかなと勝てないと言われています。今年は、主力の中に4年生が少ない中でも、僕と市村と長田(駿佑、4年、東海大札幌)などがしっかりと練習や生活面でも前に立つようにしてきました」。両角監督も本間について、「大学で区切りにすると決めたことで、以前よりも一層身が入っていると思う」と評価している。
東海大の今年のチーム目標は「3大駅伝すべて3位以内」。今年から大幅に練習のスタイルが変化し、選手自身も、監督、コーチもまだどういった結果になるか未知数な部分がある。「今年結果を残すことができれば、練習が実を結ぶと下級生たちも実感してくれると思います。結果を残すことで、来年以降駅伝で優勝争いできるようなチームになっていくと思います。基礎づくりをして、後輩にしっかり残していきたいです」
今年が新しい東海大学の1歩になったと言われるように。そして、笑って終われるように。本間の陸上人生のラストスパートが始まろうとしている。