五輪出場の学生ハードラーは万能選手 走り幅跳び、リレーと大忙し
17日から始まった日本学生陸上競技対校選手権大会(埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場、19日まで)に、東京オリンピック(五輪)の陸上男子110メートル障害に出場した泉谷駿介(順大)が登場した。
■急きょリレーにも出場
出場したのは2種目。ただし、どちらも五輪で戦った種目ではない。
一つは、走り幅跳びだ。実は、泉谷は今大会の出場選手の中で、4番目の資格記録を持つ。昼過ぎに始まった競技では1本目に7メートル70を跳び、全体3番目の記録で上位8人に残った。
夕方までに少し時間が空き、その間に出場したのが男子400メートルリレーの予選だった。
大会前のエントリーでは名前は入っていなかったが、「決勝に行くには力を合わせる必要がある。みんなと話しあって決めました」。アンカーを務め、バトンを受け取ると、仲間のリードを守り、トップでゴールに飛び込んだ。
すぐに、走り幅跳びの上位選手による試技が始まった。4、5本目はパスし、最終6本目にかけた。ただ、きれいに板を踏めず、「行けるかなと思っていた」という8メートル台には届かなかった。7メートル73で3位に終わった。
「練習ではけっこう調子が良かったので、悔しいですね」。練習で合っていた歩幅が、本番では少し狂ったようだ。
■五輪で「燃え尽きちゃったかな」
泉谷は高校時代に8種競技に打ち込むなど、もともと万能型の選手。特にハードルは強く、6月の日本選手権では110メートル障害で13秒06の日本記録を樹立した。その時点で、今季世界3位となる記録だった。
異種目の掛け持ちをすることで、体のバランスへの影響などはないのだろうか。「短距離と跳躍の助走は走り方が違う。腰の高さを意識して走りました」と泉谷は話す。
18日は、五輪で出場した110メートル障害の予選に加え、400メートルリレー決勝にも再び出場する可能性がある。「今回の走りはいまいちだったけど、決勝ではしっかり上げていきたい。まずは優勝することが大事」と意気込む。
初めて経験した五輪。感想を聞かれ、「疲れました」と笑う。「燃え尽きちゃったのかな。力が全然入らなくて。休憩が必要かなと思った」。今大会前、110メートル障害の練習もあまりできなかったという。
ただ、最高峰の大会から学生の大会に戻ってきて、気づいたこともある。「改めて、陸上っておもしろいな、と思いました」
来年には早くも世界陸上がある。「しっかりと(出場を)内定して、(五輪で準決勝敗退した110メートル障害の)悔しさを晴らしたい」と誓った
■デーデーは予選敗退で意気消沈
男子100メートル予選で、東京五輪男子400メートルリレー代表のデーデー・ブルーノ(東海大)が敗れた。勢いよくスタートしたものの、60メートル付近で顔をゆがめると、そのまま失速。13秒04の組最下位に終わった。8月末に右股関節を痛めたといい、「スピードに乗るにつれて痛みが出た」。今年は日本選手権で2位になるなど飛躍の年になったが、「大学4年間の最後に何も残せなかった」と涙を浮かべた。
(山田佳毅)=朝日新聞デジタル2021年09月18日掲載