ボブスレー日本代表 北京を目指す選手たちの日常
来年2月開幕の北京五輪を目指し、ボブスレー日本代表チームが5日、約4カ月の遠征へ旅立った。欧州各地での大会で勝利を重ねてランキングを上げ、五輪出場権の獲得を狙う。アスリートとして自分に挑戦し、マイナー競技に注目を集めたいと願っている。
ただ、ボブスレーで生計は立てられない。国内に使えるコースがないので、長く海外に出なければならない。家族、仕事、学校から離れることを余儀なくされる生活だ。彼らの日常とはどのようなものか。遠征直前の9月、各選手を訪ねた。
篠原凌選手(28)は、家屋の防水加工業で稼ぐ。遠征の自己負担50万円のほか生活費も必要だ。知己の職人、天野和哉さん(37)を頼り、現場へ出向く。「競技の日程をみながら働けて助かる」
浜野達也選手(28)は広島市のパーソナルジムPROUVEに通う。経営者は自分。バイトでは金が続かず「トレーニングができ、時間が自由で得意をいかせる」と始めた。さらに別業態の会社も興した。
金子慶輝選手(24)は仙台大学の大学院生。おじいちゃん子で、幼いころから実家の農作業を手伝ってきた。「田植えと稲刈りは総出です」。黄金色の田んぼから雑草を見分け、コンバインにも乗ってみせた。
村上健二選手(33)は料理上手。チームのコックを自称する。出国前に職を離れてできた時間も、妻の清加さん(38)、娘の希晴(きはる)ちゃん(3)とギョーザづくり。帰国後の再就職先では「家族のため稼ぎまくります」。
栗原嵩(たかし)選手(33)はアメリカンフットボールのイコールワン福岡SUNSの選手だ。かつて目指した米国のプロリーグには、ボブスレー五輪代表もいた。「なんにでも全力で挑戦し、一流にこだわりたい」
(角野貴之)=朝日新聞デジタル2021年10月27日掲載