陸上・駅伝

特集:第53回全日本大学駅伝

各校監督の優勝予想、駒澤は16チームから名前あがる 全日本大学駅伝監督アンケート

前回大会はアンカーで逆転し優勝、ゴールで青山前主務に抱きとめられた田澤(撮影・林敏行)

11月7日に開催される第53回全日本大学駅伝。25の大学と2つのチームが名古屋・熱田神宮前から三重・伊勢神宮前までの8区間106.8kmで襷(たすき)をつなぐ。さまざまな予想が飛び交うが、出場チームの監督はレースをどのように見ているのか? 全日本大学駅伝事務局が事前に行ったアンケートをもとに紹介する。

全日本と相性のいい駒澤大学が優勝予想トップ

監督に事前にお願いしているアンケートの中にある「優勝候補はどの大学と見ますか、その理由は」の質問。自由記述となっているため、複数の校名の回答もあった。

具体的なチーム名として名前が上がったのは、駒澤大学、東京国際大学、青山学院大学、早稲田大学、東洋大学だった。ちなみに昨年のアンケートでは東海大学、青山学院大学、駒澤大学の3校。今年は5校の名前が上がることからも、戦力が拮抗する「戦国駅伝」の様相がうかがえる。

その中でも実にのべ16チームの監督が駒澤大学の名前を挙げた。理由としては「実績豊富な選手が多い上、チームとしての優勝経験が多い」(早稲田大学・相楽豊監督)、「エースの田澤選手に力があり、選手層も非常に厚い」(法政大学・坪田智夫監督)、「圧倒的な選手層で穴のない布陣が組める」(中央大学・藤原正和監督)「選手層が厚く、全日本大学駅伝との相性もいいため」(立命館大学・山菅善樹監督)と、「選手層の厚さ」を理由とする声が多かった。駒澤大学OBの岐阜協立大学・揖斐祐治監督も「10000mの総力が全体的に高く、田澤君・鈴木君などのエースがしっかりしている」と母校を優勝候補にあげている。また全日本大学駅伝52回の歴史で最多13回の優勝を誇り、大八木弘明監督もこの大会との「相性の良さ」を自認している。

田澤(左)、鈴木の2人が万全の状態で臨めるかも優勝への鍵となる(撮影・藤井みさ)

16人のチームエントリー中、4年生は佃康平(市船橋)の1人のみ。3年生5人、2年生8人、1年生2人と2年生の代の勢いを象徴するエントリーとなった。出雲駅伝では主将の田澤廉(3年、青森山田)がアンカー、ルーキーの篠原倖太朗(富里)が1区を担当し、2~5区を2年生4人がつないだが、暑さと駅伝が初めてのメンバーもいたことによる気負いか、想定通りの力を発揮しきれなかった。

田澤に次ぐエースの鈴木芽吹(2年、佐久長聖)は9月の頭に右大腿骨の疲労骨折が判明し、出雲駅伝を回避。大八木監督はレース前の会見で「全日本に間に合ってしっかり走ってくれたらいいな」と話していたが、鈴木が走れるかどうかでレースプランも大きく変わってくる。鈴木本人も今年にかける思いは強く、「優勝を引き寄せる走りをしたい」と意気込んでいた。伊勢路での走りを楽しみに待ちたい。

大躍進・東京国際大学は層の厚さを評価

次に名前が上がったのは、出雲駅伝33回の歴史で初出場初優勝の偉業を初めて達成した東京国際大学だ。のべ9チームから名前があがった。その理由としては「ヴィンセント選手の存在」(青山学院大学・原晋監督)、「ヴィンセント選手がいること、出雲駅伝で日本人の選手たちが区間上位で走れることを証明した」(拓殖大学・山下拓郎監督)、「選手層が厚い上に勢いがあり、留学生に大きな力がある」(札幌学院大学・鹿内万敬監督)、「監督の緻密かつ大胆な指導力とマネジメント、育成力の高さ、駅伝勝利に必要なタレントが揃ったから」(皇學館大学・日比勝俊監督)と、「ヴィンセント選手」「選手層の厚さ」があげられた。

圧倒的な走力を持つヴィンセントは、まさに「ゲームチェンジャー」と呼ぶにふさわしい存在(撮影・佐伯航平)

184cmの長身、大きなストライドを生かしたダイナミックなフォームが魅力のイェゴン・ヴィンセント(3年、チェビルべレク)。箱根駅伝では過去2回とも大幅に区間記録を更新しての区間賞を獲得している。同学年にルカ・ムセンビ(3年、仙台育英)がおり、過去2回の全日本大学駅伝ではムセンビがアンカーを務めているため、ヴィンセントには全日本大学駅伝の出走経験はない。今回もムセンビ、ヴィンセントの2名がエントリーされており、メンバーをどう配置してくるかも注目だ。

さらに出雲駅伝3区で快走した日本人エースの丹所健(3年、湘南工科大付)を筆頭に、全員が区間5位以内で走るなど、日本人メンバーの層の厚さも見せつけた。伊藤達彦(現・Honda)を育てた大志田監督の指導力にも視線が集まる。

3大会ぶりの優勝なるか、青山学院大学

のべ6チームから名前をあげられた青山学院大学は、出雲駅伝2位と好調。「駒澤、青学」と他のチームと併記する監督が多かった。その理由はやはり「総合力」(順天堂大学・長門俊介監督)。東海学連選抜を指揮する中京大学の榊原靖之監督からは、「原監督は大学の同級生なので頑張ってほしい」とエールもあった。

チームエントリーは4年生2人、3年生8人、2年生3人、1年生3人。3年生には出雲駅伝1区区間賞と日本インカレ男子5000m優勝の近藤幸太郎(豊川工)、関東インカレハーフマラソン優勝の西久保遼(鳥栖工)、出雲駅伝アンカーの横田俊吾(学法石川)、ルーキーイヤーに箱根駅伝2区を走った岸本大紀(三条)らがおり、チーム内で最も勢いのある学年だ。主将の飯田貴之(4年、八千代松陰)は2年時にアンカーを走ったが、逆転され2位となった悔しい経験をもつ。リベンジを果たし、トップで伊勢神宮のゴールに帰ってこられるだろうか。

出雲駅伝では横田がアンカーで快走、新たなエースとして名乗りを上げた(撮影・佐伯航平)

早稲田大学は「駒澤、青学、早稲田」と他の大学とともに名前があげられる傾向にあった。駅伝シーズン前は「学生駅伝三冠」を目標に掲げるなどチーム力が充実。前回大会3区区間賞のエース・中谷雄飛(4年、佐久長聖)、4区区間新で区間2位の太田直希(4年、浜松日体)を中心に、出雲駅伝4区で区間賞を獲得したルーキーの石塚陽士(早稲田実)ら新しい力が融合すれば、優勝争いをできる力は十分にある。

また、出雲駅伝で3位に入った東洋大学は「常に安定して結果を出しており、駅伝に強い」(第一工科大学・岩元泉監督)との評。年始の箱根駅伝で3位に入り、その後のトラックシーズンはけが人が多く出遅れたが、駅伝シーズンにはしっかりと合わせてきた。しかも宮下隼人(4年・富士河口湖)、松山和希(2年、学法石川)ら主力を欠いての3位は、他大学にもインパクトを与えた。

名前を挙げられた大学の監督自信の予想はというと、駒澤大学の大八木監督、青山学院大学の原監督は東京国際大学と予想。やはりヴィンセントの存在が大きい。一方、東京国際大学の大志田秀次監督は「駒澤、青学、早稲田」と3校の名前をあげ、理由は「選手の走力の厚さ」だ。しかし「出雲駅伝優勝により選手が勝負にこだわりを持ち始めた」ともいい、優勝争いの目玉となることは間違いない。早稲田大学の相楽監督は「駒澤大学」、東洋大学の酒井俊幸監督は「青学、東京国際、駒澤」とあげた。

それぞれの思惑と予想が交錯するレース前。果たして最後に伊勢神宮のゴールテープをトップできるのはどの大学になるのか。レース本番まであと1週間だ。

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