陸上・駅伝

特集:第53回全日本大学駅伝

連覇目指す駒澤、青学・早稲田も優勝を狙う 全日本大学駅伝監督アンケート

前回大会、最終8区で逆転し優勝を決めた田澤(撮影・金居達朗)

11月7日に開催される第53回全日本大学駅伝。全国から25の大学と2つのチームが出場し、日本一をかけて争われる。先日発表されたチームエントリーの際に全日本大学駅伝事務局が行ったアンケートをもとに、各大学の監督・チームの目標についてまとめた。

※回答は10月13日締め切りのチームエントリー時点のもの。

全日本大学駅伝 エントリー全426選手の出身校232校のうち、最多人数の高校は?

戦力整う優勝を明言する3チーム

「優勝」とはっきり目標に書いたのは駒澤大学、青山学院大学、早稲田大学の3校。いずれも駅伝シーズン前には「学生3大駅伝三冠」を目標に掲げていた大学だ。出雲駅伝は東京国際大の初出場初優勝となり、三冠の目標はついえたが、全日本こそは、との思いがそれぞれのアンケートからも感じ取れる。

特に駒澤大学は前回大会で6年ぶり13回目の優勝を成し遂げ、全日本大学駅伝連覇がかかる。「出雲駅伝での悔しさをばねに全日本大学駅伝に挑みます」と大八木弘明監督も燃えている。大エースで主将の田澤廉(3年、青森山田)が名実ともにチームの中心。けがで出雲駅伝を回避した鈴木芽吹(2年、佐久長聖)が出走できるかどうかも順位を占う上で重要なポイントだ。16人のエントリー中、2年生が半数の8人となっており、若い力で伊勢路に臨む。期待する選手にはルーキーの篠原倖太朗(富里)の名前があがった。

青山学院大学は前回、前々回大会と最終8区に襷(たすき)がわたった時点ではトップを走っていたが、2大会連続で逆転され悔しい思いをした。主将の飯田貴之(4年、八千代松陰)はロードに適性があり長い区間を得意とするため、19年以来のアンカー起用が濃厚。原晋監督も期待する選手として挙げる近藤幸太郎(3年、豊川工)はチーム内の誰もが認めるエース。原監督も「ラストスパート力がついた」と評する通り、レース終盤のスパートで日本インカレ5000m優勝、出雲駅伝1区区間賞と結果を残している。

太田は前回大会、4区区間新で区間2位の力走だった(撮影・金居達朗)

早稲田大学は太田直希(4年、浜松日体)、中谷雄飛(4年、佐久長聖)、井川龍人(3年、九州学院)と3人の10000m27分台ランナーを擁し、近年でもっとも戦力が充実している。出雲駅伝では終盤に失速し6位と悔しさを味わったが、4区でルーキーの石塚陽士(早稲田実業)が区間賞を獲得するなど明るい材料もあった。監督が期待する選手として名前を挙げられたのは菖蒲敦司(2年、西京)。昨年の全日本では5区区間9位と悔しさを味わい、練習量を増やしたことにより長い距離にも対応できるようになったと相楽豊監督は評する。

目標は控えめも、実力校は大いにありえる優勝争い

「3位以内」と書いたのは東洋大学、順天堂大学。東洋大は出雲駅伝では主力の宮下隼人(4年、富士河口湖)、松山和希(2年、学法石川)ら主力を欠きながらも、堅実なレースで3位となった。酒井俊幸監督も「手応え」を語る。順天堂大学は前回大会で1区区間賞を獲得、東京五輪男子3000m障害でも7位に入賞した大エース三浦龍司(2年、洛南)に今年も注目。さらに伊豫田達弥(舟入)、野村優作(田辺工)、四釜峻佑(山形中央)、平駿介(白石)ら3年生に勢いがあり、チームを引っ張る存在になっている。

出雲駅伝初出場初優勝と大きなインパクトを残した東京国際大学の目標は「4位以内」。19年の初出場時には4位で、それ以上を目指している。だが「史上最強の留学生」とも言われるイェゴン・ヴィンセント(3年、チェビルベレク)の存在、着実に成長している日本人エース・丹所健(3年、湘南工科大附)やチームの底力が合わされば、優勝争いに絡んでくることは確実だ。

大学駅伝デビューの1区で区間新記録で区間賞を獲得した三浦(左、撮影・金居達朗)

國學院大學は18年の6位が最高成績で、それを上回る「5位以内」だが、「3位以内の表彰台を狙いに行く」とも記した。出雲駅伝では主将の木付琳(4年、大分東明)が2区区間賞でトップに立ち、最終6区終盤でも単独2位で走る場面もあった。課題を克服すれば上位を伺える力は十分にあるはずだ。また、帝京大学は「大学最高順位、記録の更新」。帝京大の過去最高順位は18年の5位だ。

「シード権獲得」または「8位入賞」と書いたのは、東海大学、明治大学、法政大学、中央大学、中央学院大学、日本体育大学、そして関東から唯一、立命館大学の合計7校。東海大は昨年2位だが、出雲駅伝の9位をふまえての目標か。同じく昨年3位の明治大も「堅実」ともいえる目標設定にとどめた。

関西地区選考会をトップ通過した立命館大学は、昨年は15位。チームを引っ張っていた昨年度の4年生が卒業し、危機感の中で今年のチームはスタートした。エース・山田真生(3年、中京)が戦力の中心。山菅善樹監督は主将の永田一輝(いつき、4年、豊川)を期待する選手に、安東竜平(3年、山梨学院)を実力が伸びた選手として挙げた。また同じ関西勢の関西学院大学は「関東勢の一角を崩し、過去最高順位を更新し、一桁順位でゴール」が目標。日本インカレ男子10000mで上田颯汰(3年、関大一)が日本人トップとなり、「長距離パートの部員に非常に良い影響を与えた」と竹原純一監督。関西インカレハーフマラソンで守屋和希(2年、県西宮)が優勝するなど、チームに勢いがある。

地区枠を増やし、次回大会につなげる目標も

全日本大学駅伝では、毎年成績に応じて翌年大会の地域に割り当てられる枠の数が変動する。各8地区の基本枠は1ずつ。現在はシード枠として1~8位の大学が自動的に次回大会の出場権を得、9位~17位の大学の所属地区に成績枠計9を配分。また各地区の出場枠は最大で15とするルールになっている。

前回大会でエース・川瀬翔矢(現・Honda)が2区で区間賞を獲得し、大きなインパクトを与えた皇學館大学。17位に入り東海地区枠を1から2へと増枠した。今年は12位を目標とし、さらに上を目指している。

昨年は関西地区の枠は4あったが、立命館大学が15位、関西学院大学が18位、びわこ学院大学が19位、京都産業大学が21位となった。関東地区の基本枠、シード枠、成績枠の合計が16となったため、18位の関西学院大に枠が配分されたが、今大会の枠は4枠から3枠に減った。

出雲駅伝のアンカーを務めた中角。竹澤HCも伸びているとして注目する選手だ(撮影・藤井みさ)

地区枠を増やせる「17位」を目標にしているのは、北海道地区の札幌学院大学、東海地区の岐阜協立大学、関西地区の大阪経済大学、九州地区の第一工科大学。3大会ぶりに伊勢路に戻ってきた大阪経済大学は、出雲駅伝では立命館大に次いで12位と好結果。竹澤健介HCは駅伝シーズン前の取材で「スピードより距離のほうが適性があるかも」と答えており、選手たちがどのような戦いをするのか注目だ。また、中四国地区代表の環太平洋大学は2回目の出場。常連校への第一歩として「20位」と目標を記した。

目標順位を明言しない大学・チームもあった。拓殖大学は「1つでも上を目指してやる」。東北大学は「過去に出場した東北大学記録更新と可能な限りの上位進出」。エースの松浦崇之(M2年、越谷北)は出雲駅伝に東北学連選抜で出場し、1区4位と好結果を残した。コロナ禍で部活動が制限される中でも東北地区選考会を勝ち抜いてきたチームだ。2年連続出場となる信州大学は「伊勢神宮まで繰り上げなく襷をつなぐ。北信越記録の更新」。5年ぶりに出場した前回大会は22位だった。エースの坪井響己(M2年、狭山ケ丘)は日本インカレ、出雲駅伝にも出場し、5000mの北信越記録も更新。2つの国立大学の動向にも注目だ。

松浦(左)と坪井(右)はともに出雲駅伝でスターターの1区を担当(撮影・藤井みさ)

また、昨年は新型コロナウイルスの影響により編成がなかった日本学連選抜、東海学連選抜の2つのチームが今年は復活。日本学連選抜チームの監督を務めるのは神奈川大学の大後栄治監督。メンバーは北は北海道大学から南は鹿児島大学まで、学年も1年から院2年までと多彩な顔ぶれがそろう。「経験と挑戦を合言葉に、ゴールまで襷を繋げたいと思います」と記した。東海学連選抜を率いるのは中京大学の榊原靖之監督。榊原監督は青学の原監督と大学の同級生だ。「東海地区単独出場校に勝負し勝つ。大会を経験しそれぞれの大学に持ち帰り来年に活(い)かす」と目標を記載した。

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