出雲駅伝6位の早稲田大 相楽豊監督「勝負どころでの強さ」を見つめ直し、駅伝二冠へ
第33回 出雲全日本大学選抜駅伝競走
10月10日@島根・出雲大社~出雲ドームの6区間45.1km
優勝 東京国際大学 2時間12分10秒
2位 青山学院大学 2時間14分07秒
3位 東洋大学 2時間14分13秒
4位 國學院大學 2時間14分17秒
5位 駒澤大学 2時間14分53秒
6位 早稲田大学 2時間15分00秒
7位 創価大学 2時間15分37秒
8位 帝京大学 2時間16分24秒
「駅伝三冠」を目指していた早稲田大学はその初戦となった出雲駅伝を6位で終えた。レース直後、相楽豊監督は言葉に迷いながら、「一言で言うと目指していた強さが思っていた以上になかった。優勝に対しての認識が、私も含めてチーム全体で甘かった」と悔しさをにじませた。
1区で菖蒲が2位でつなぎ、2区で先頭に立つも……
エースの中谷雄飛(4年、佐久長聖)は今年に入ってから左足の痛みが続き、不完全燃焼なレースが続いていた。本格的に走り込みができたのは夏合宿に入ってから。また主将の千明龍之佑(4年、東農大二)は6月の日本選手権5000mで8位入賞(学生1位)を果たすなど、トラックシーズンに結果を残してきたが、出雲駅伝の直前になって腰に痛みが出てしまい、大事をとってメンバーから外れた。
そうした不安要素はあったものの、今のチームが始動した時から相楽監督は「千明さんがいれば、中谷さんに渡せば、という誰かに頼る姿勢はやめよう」と言い続けてきた。そんな中でチーム内競争はより熾烈(しれつ)になり、特に夏合宿で調子が良かった6人が出雲駅伝のメンバーになった。
1区を任されたのは、6月の日本選手権3000mSCで早稲田大記録(8分37秒24)をマークした菖蒲敦司(2年、西京)。30度を超える天候の中、選手たちは1km3分前後のペースを刻みながら集団でレースを進め、菖蒲は集団の前方につけていた。ラスト500mを過ぎてからスパート合戦となり、菖蒲はトップの青山学院大学・近藤幸太郎(3年、豊川工)と4秒差での2位で襷(たすき)をつないだ。
2区の井川龍人(3年、九州学院)はすぐにトップに立ったが、青山学院大主将の飯田貴之(4年、八千代松陰)が意地を見せ、再び前に出る。國學院大學の主将・木付琳(4年、大分東明)が6位から追い上げ、一気に先頭へ。井川は木付と5秒差での4位で太田直希(4年、浜松日体)に襷リレー。太田は同タイムで襷を受け取った青山学院大の佐藤一世(2年、八千代松陰)と併走しながらレースを進め、國學院大と順天堂大学を抜いて2位争いへ。しかし佐藤との差が開き、10位から追い上げてきた創価大学のフィリップ・ムルワ(3年、キテタボーイズ)が2位につけ、太田は4位で石塚陽士(1年、早稲田実)に襷をつないだ。
ルーキー石塚が2位に浮上、5位でエース中谷へ
石塚は早稲田実業(東京)3年生の時に1500mで3分44秒62(当時・高校歴代3位)をマークし、高校生ながら日本選手権決勝を経験している。前を走るのは同じくルーキーの青山学院大・若林宏樹(洛南)。スタートしてすぐに若林の背中を捉え、その前を走る創価大の濱野将基(3年、佐久長聖)も抜き去り、単独2位に浮上。若林との差を54秒に広げ、同期の伊藤大志(佐久長聖)に襷をつないだ。石塚は追う展開だったこともあり、前半からつっこみ、後半は思うように走れない状況が続いた。18分40秒の記録も遅いと感じてしまい、まさか区間賞がとれるとは思っていなかったという。初の学生駅伝での区間賞は喜びよりも驚きを持って受け止めた。
5区を任された伊藤は暑さに苦しみ、区間12位。順位を5位に下げてしまった。アンカーの中谷はまだ本調子でないことから、相楽監督には「前半は抑えて後半しっかり上げよう」と言われていた。トップの東京国際大とは1分23秒差。相楽監督の指示通り、中谷はペースを抑えながらも少しずつ前との差を詰めていったが、後半になるにつれて思うようにペースが上がらなくなり、8位から追い上げてきた駒澤大学の主将・田澤廉(3年、青森山田)につかまった。中谷も意地を見せて田澤に食らいついたが、最後の最後で競り負け、最後は6位でフィニッシュ。倒れ込んで動けなくなり、仲間に抱きかかえられた中谷はうつむいたままゴールエリアを後にした。
相楽監督「出雲よりも全日本の方が戦えるチーム」
中谷、太田、井川と10000m27台の選手が3人いる早稲田大は、今大会の優勝候補に上げられていた。暑さに弱い中谷が熱中症気味になってしまったという誤算はあったが、「暑い中でレースをするのは分かってて、他大学も同じコンディションですから」と相楽監督。
ただそれ以上に、「前の走者と差を詰めて襷をつなぐとか、前に出てレースを引っ張るとか、自分たちの流れに持っていくべきところでいけませんでした」と、勝負どころで積極的な走りができなかったことに課題を感じている。その中でも菖蒲や石塚という若い力が結果を出したことは収穫だった。「チームとしてずっと同じ練習をしてきたわけですから、チーム全体の自信というか、『自分もやれる』という前向きな気持ちにしていってほしい」と、相楽監督は熾烈なチーム内競争を勝ち抜いてきた選手たちの力を信じている。
全日本大学駅伝まではもう1カ月を切った。相楽監督としてはここから大きく変えるというよりは、普段の生活から細かいことを見直し、一人ひとりが悔しさを忘れることなく立て直していくことを期待している。「出雲よりも全日本の方が戦えるチームだと、この夏からずっと言ってきたんで、夏にしっかりためたものを全日本で発揮できればと思っています」
三冠という目標はもう果たせない。だからこそ、残る2つの舞台は譲れない。