同志社大キッカー・高本龍一郎 キック1本の重みを胸に、ひたむきに前だけを見て
「努力に勝る天才なし」。その言葉を胸に刻み、日々アメフトと向き合う高本龍一郎(2年、同志社香里)。1年時からスタメンに名を連ね、今もなおキッカーとしてコートに立ち続ける。そんな高本がアメフトと出会ったのは、異国の地でのことだった。
「自分を変える」留学でアメフトに出会う
高校3年の時、「自分を変える年にする」と決心し、アメリカへ1年間の留学に旅立った。幼い頃からサッカーボールを追い掛け、中学1年時からサッカー部、その後転部し中学3年時からスキー部に所属していた高本は、新天地で新たなスポーツに挑戦すると決めていた。そんな中、入国後すぐに観戦したことをきっかけにアメフトと出会う。たくさんの観客に埋め尽くされる会場。得点のたびに沸き上がる歓声。初めて目にしたその景色に心動かされ、アメフトの道に足を踏み入れることを決意した。
サッカー経験があることからポジションはキッカーを選択。不慣れな英語に苦戦したこともあったが、同じキッカーを務める友人をはじめ、チームメートに支えられながら技術を身につけた。スタメン起用とまではならなかったものの、出場機会を得るほどにまで成長を遂げた。
高校卒業後は同志社大学に進学し、アメリカンフットボール部「WILD ROVER」の門を叩いた。2番手ではなく、重大な場面を任されるような信頼の置けるキッカーに。近年入れ替え戦出場の沼から抜け出せず、苦境に立たされていたチームを救うべく、第2のアメフト人生を歩み始めた。
キック1本の大切さを胸に
仲間の助けもあり、1年生ながら秋の近大戦で公式戦デビューを果たす。京大戦では、FG3本中2本成功とまずまずの成績を残すも、チームは13-16で惜敗を喫し、今試合をもって当時の4年生は引退を迎えた。プレッシャーの中、長い距離のキックを決められた喜び。自分が外した1本のせいで、先輩を笑顔で送り出せなかった悔しさ。「希望」と「絶望」を一挙に味わったこの試合は、キック1本の大切さを痛感させる一戦となった。
1年が経ち、リベンジマッチの時が訪れた。今季の関大戦まで成績が低迷していたが、自分自身を一から見つめ直し生活習慣から改善。入念に準備し、万全の状態で京大戦に挑んだ。試合では巡ってきたチャンスを逃さず、FG2本中2本とも成功。勝ち越しキックで今季初白星をもたらし、昨年の雪辱を果たした。
着実に前進を続けるが、自身の実力におごることなく日々鍛錬を積む。家族のように接してくれたホストファミリー、アメリカで声を掛けてくれたアメフトファン、ともに練習に励むスペシャリストの2人、そして両親。たくさんの人の応援や支えのおかげで今の自分がある。アメリカ留学を経て、そのありがたさを改めて感じたからこそ、前だけを向いて突き進むことができる。
「仕事の完成よりも、仕事をする者の完成」。目先の結果を追い掛けるよりも、人として正しいと思うことを行うことで、自ずと結果はついてくる。そう信じて疑わず、ひた向きに努力を重ねる高本の進化はとどまることを知らない。