陸上・駅伝

MARCH対抗戦で明治大・鈴木聖人が手助け、中央大の居田優太と湯浅仁が28分台へ

ゴール直前まで支えてくれた鈴木(左)に湯浅から「ありがとうございました」(撮影・全て松永早弥香)

GMOインターネットグループpresents MARCH対抗戦2021

11月24日@東京・町田GIONスタジアム
1位 青山学院大
2位 明治大
3位 中央大
4位 法政大
5位 立教大
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3組目
1着 山内健登(青山学院大2年) 28分34秒12
2着 居田優太(中央大2年)   28分46秒35
3着 鈴木聖人(明治大4年)   28分47秒54
4着 湯浅仁(中央大2年)    28分47秒81
5着 畦地貴斗(青山学院大3年) 28分53秒47

11月24日に初めて開催されたMARCH対抗戦は、箱根駅伝に向けた学内の最終選考の意味合いもあり、これが引退レースとなる選手もいた。10000mで競われたレースに中央大学からは28人が出走し、14人が自己ベストを更新。特に3組目を走った居田優太(2年、草津東)と湯浅仁(2年、宮崎日大)は、居田が28分46秒35、湯浅が28分47秒81とそろって初の28分台をマークした。レース後、湯浅はゴールの直前まで自分を支えてくれた明治大学の鈴木聖人主将(4年、水城)に笑顔で「ありがとうございました」と感謝を述べた。

ラスト1周、明治大・鈴木が中央大の2人を引き連れる

全5組のレースの中で、3組目の申請記録は28分55秒~29分20秒だった。28分9秒24の記録を持つ明治大の鈴木は5組目を希望していたが、けが明けだったことから山本佑樹監督に「今は箱根駅伝に集中しろ」と言われ、3組目にまわった。ただ練習の一環として走るだけでなく、自分がある種のペースメーカーを担いながら「明治大の選手の記録を上げられればいい」という思いも鈴木にはあったという。

3組目からペースメーカーがついており、3組目を担当した立教大学の監督で中央大OBでもある上野裕一郎さんは、5000mまで14分30秒のペースで引っ張る予定だった。鈴木も当初、上野さんについていくことを考えたが、想定よりも速いペースだったこともあり、集団の前方で自分のペースを守った。上野さんの後ろには法政大学の清家陸(4年、八幡浜)、その後ろには立教大学の内田賢利(2年、駒澤)と忠内侑士(2年、専大松戸)が続き、大きな集団でレースが進んだ。

3組目は上野さん(先頭)がペースメーカーとして7000mまで引っ張った

5000mを過ぎてからも上野さんは10人ほどの先頭集団を引っ張り、その後ろには青山学院大学の山内健登(2年、樟南)がぴったりとつく。7000mで上野さんが外れた。山内は次第に集団を抜け出し、中央大の湯浅を先頭に中央大の居田と青山学院大の畦地貴斗(3年、小林)の3人が2位争いとなり、その後ろから明治大の鈴木が追い上げる。ラスト1周、鈴木は2位集団の3人の前に出ると手で合図を出し、「28分台出すぞ!」と鼓舞した。畦地は離れてしまったが、湯浅と居田が応えて鈴木に食い下がる。ラストで居田が2人の前に出た。鈴木は湯浅と併走しながら励まし、一緒にゴール。笑顔で肩を抱き合い、湯浅は感謝を鈴木に伝え、鈴木は初の28分台を祝福した。

鈴木「大学関係なく声かけて、自分が手助けしよう」

レース後、鈴木は「明治の選手を引っ張りたかったんですけど」と言いながら、「今日はこういう対抗戦なんですけど、箱根に絡みたい選手もいるし、今日ここが学生最後のトラックレースになる選手もいる。大学関係なく声かけて、みんながしっかり上げられるよう、自分が手助けしようと思った」と素直な思いを口にした。目の前にペースが落ち始めている選手がいるんだったら、自分が前に出て引っ張ればいい。28分台を狙える位置にいるなら、その最後の力になりたい。

鈴木自身、まだベストコンディションではなかったため無理はできなかったが、「最後400mくらいしか引っ張れなかったけど、それでも1~2秒分くらいの風よけにはなれたかな」。最後に笑顔で湯浅の肩を抱いたのも、「自分も初めて28分台が出せた時はうれしかったし、初めての28分台だと思ったので、おめでとうって。そこはもう、終わった後は一緒に走った仲間です」という思いからだった。

ラスト1周で鈴木(先頭)が前に出ると、後ろの選手についてくるように手で伝えた

鈴木は全日本大学駅伝の直前に足に痛みが出てしまい、山本監督は2度止めたが、それでも主将の覚悟で出走を決めた。6区で順位を7位から3位に引き上げ、チームの流れを変える走りをしてみせたが、鈴木自身は「本来であればエース区間を走らないといけないのに……」と悔しさをにじませた。今回のレースでも痛みはあり、踏み込みのバランスの悪さを感じていた。ただそれでも28分47秒54と28分台を出せ、確実にアベレージが上がっていることを実感。「ここから1カ月でしっかり修正して、最後、箱根は万全な状態で走りたい」と自身最後の箱根駅伝をまっすぐに見据えている。

湯浅「4年間しっかりやって吉居を抜いてやる」

一方、湯浅はまず鈴木への感謝を述べた上で、初の28分台に「やっと練習が形になってきたんじゃないかな」と笑顔を見せた。また、今回のレースを引っ張った上野さんに対しても、「偉大なOBの方なので、引っ張ってもらえるということに感謝の気持ちを持ちながら、しっかり力を使わせていただきました。結果を残すことが上野さんに感謝の気持ちを伝えるいい機会だと思いました」と感謝の気持ちを忘れていない。

もともと距離が長い方が自分の持ち味を出せるのではという思いはあったが、スピードには苦手意識があった。そこでこの1年間はスピード強化に取り組み、夏合宿には更に距離も踏んだ。今回のレースでは、「しっかり順位を狙えばタイムも出る」という意識で持てる力を振り絞り、28分50秒切りという想定よりもいいタイムを出せたことで練習の成果を実感。自信を深め、「もう1段階レベルアップして箱根駅伝に向かいたい」と意気込む。

同期には、1年生の時に5000mのU20日本記録をたたき出した吉居大和(2年、仙台育英)がいる。「吉居が注目されがちですけど、一応、前に行かせないというのを2年生は意識しています」と湯浅は言う。吉居は練習では別メニューの日も多いが、他の2年生は吉居ができていないメニューにも取り組みながら、「4年間しっかりやって吉居を抜いてやる」との思いで切磋琢磨(せっさたくま)している。前回の箱根駅伝で同期の出走は吉居1人だったが、湯浅は「自分のタイプ的にもしっかり力を出し切れる区間」という8~10区で、自身初の学生駅伝を目指す。

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