フィギュアスケート

同志社大・籠谷歩未、3年ぶりの全日本で結果を出し、再び坂本花織・三原舞依と一緒に

籠谷は同志社大に進んでからは今年が初の全日本選手権となる(代表撮影)

高校3年生の時に初出場して以来、あと少しのところで届かなかった全日本選手権。籠谷歩未(同志社大3年、神戸野田)が今年こそはと挑んだ11月の西日本選手権では、小さなミスが響き、ショートでは9位となる。翌日のフリーではもともと武器であったジャンプに加え、練習を強化してきたスケーティングも評価されて2位となり、総合4位で3年ぶりの全日本選手権(12月23日開幕)への切符を手に入れた。

坂本花織は「親友というよりは家族という感覚」

スケートとの出会いは5歳の時。テレビで全日本選手権を見て、氷の上で1人で演技している選手たちを「きれいでかっこいい」と思い、神戸市立ポートアイランドスポーツセンターに家族と遊びに行ったのが始まりだ。そのリンクで行っていたスケート教室に通うようになり、スケートを始めて1年ほどで少人数のグループレッスンへ。「オール兵庫に出てみる?」とコーチに誘われる形で試合デビューもした。気付いた時にはクラブにも入って貸し切り練習にも参加し、自然な流れで競技を始めることになった。

テレビで見た選手たちに憧れてスケートを始め、自然な流れで競技の道へ(写真は本人提供)

ホームリンクである神戸市立ポートアイランドスポーツセンターは夏はプールになるため、兵庫県西宮市に通年リンクができるまでの間は、練習場所を求めて大阪のあらゆるリンクへ通っていた。時には日付が変わる頃に練習が終わることもあったが、一度もやめたいとは思わなかったという。スケート教室に通っていた時から近所に住んでいる同い年の女の子がいると知り、そうして出会ったのが坂本花織(神戸学院大3年/シスメックス、神戸野田)だ。互いの家族が協力しあってリンクへの送迎をするなど、「親友というよりは家族という感覚」と、小さな頃からずっと一緒に練習をともにしてきた。

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すぐにシニアへ移行した2つの理由

現在フィギュアスケートでは、ジュニアからシニアへの移行期間を設けており、その年齢の範囲内であれば、選手自身が移行時期を選択できるようになっている。その中で、籠谷はシニアの年齢に達すると同時にシニアへの移行を決めた。その背景には習得したトリプルジャンプの種類が関係している。

中学2年生の時に得点が高いフリップとルッツのトリプルを習得し、高難度の構成ができていた。しかしジュニアのショートプログラムでは、3つのジャンプのうち2つが指定のジャンプとなっている。1つはダブルアクセル、もう1つはそのシーズンによってループ、フリップ、ルッツの3つがローテーションで変わる。ジュニア3年目となるシーズンではループが指定ジャンプだったが、籠谷自身が少し不安を抱えるジャンプでもあった。また、スケートを始めた時からの目標であった全日本選手権を目指すために、籠谷にはジュニアから早くシニアに移行したいという思いもあったという。

高3の西日本選手権で結果を出し、全日本選手権初出場を決めた(撮影・朝日新聞社)

シニアに移行してからも、西日本選手権であと少しのところで全日本選手権を逃していた。そして高校3年生では西日本選手権でほぼノーミスの演技で予選通過を果たし、ようやく全日本選手権への切符を手にした。初めての全日本選手権は、大きな会場に大勢の観客が詰めかけていた。取材のカメラも多く、控室も空気が張り詰めており、その独特の雰囲気に籠谷は圧倒されてしまったという。またショートで1番滑走となり、初めての全日本選手権はあっという間に終わってしまった。

同志社大の仲間から刺激を受け、スケーティングを強化

翌年の2019年、スケートと学業を両立させるため、フィギュアスケート部がある同志社大学に進学。フィギュアスケートの選手は、大学進学後もスケート部として設けている練習時間ではなく、所属しているクラブチームの練習時間で練習することもあり、籠谷もその選択をした1人だ。しかし部活の時間にも可能な限り参加し、大学からスケートを始めた選手の指導をするなど、自分の練習を優先しながらもできる範囲で部活に参加している。

同志社大には全日本選手権に出場する選手が数名おり、部活で練習が一緒になることもある。普段の練習では一緒になる機会はなかったため、スケーティングの技術などを間近で見ることができ、その時間が籠谷自身いい励みになった。

というのも、早くから高難度のトリプルジャンプを習得した籠谷は、技術点の面ではトップ選手とほぼ同じ構成ができていたが、スケーティングスキルの点数が伸びず、それが順位に影響していると感じていたからだ。大学進学後、2年連続で全日本選手権出場を逃していた籠谷は、スケーティング強化に力を入れて練習を重ね、今シーズンにようやくその成果が結果となって現れ、3年ぶりの全日本選手権出場を決めた。

全日本で上位に入り、また3人で一緒に練習を

クラブチームには坂本と三原舞依(甲南大4年/シスメックス、芦屋)もおり、2人とは小さい頃から一緒に練習をしてきた。これが籠谷にとっては当たり前の環境であったが、「世界で戦う選手と一緒に練習ができる自分は恵まれているな」と思うと同時に、とても刺激になっている。

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「引退までにユニバーシアードに出たい」と話す籠谷にはもう1つの目標がある。全日本選手権で上位になった選手は強化選手に選ばれ、ナショナルトレーニングセンター(NTC)で練習ができる。そのNTCで坂本・三原とともに一緒に練習するためにも、今回の全日本選手権で結果を出したい。

坂本(左)と三原(右)の3人でまた一緒に(写真は本人提供)

全日本選手権の会場であるさいたまスーパーアリーナは初めて行く場所。大きな会場で滑る楽しみを胸に、「見ている全ての人に、自分の想(おも)いや気持ちが伝えられる演技がしたい」と目を輝かせる。今季、ようやく練習の成果が試合で出せるようになってきていると実感している籠谷。得意であったジャンプに加え、今年強化してきたスケーティングを武器に、更なる飛躍してほしいと願っている。

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