陸上・駅伝

特集:第98回箱根駅伝

目標は箱根駅伝総合優勝 チーム力上昇中の國學院大が本気で狙う頂点

木付(右)は主将として3年生のときからチームをまとめてきた。集大成の箱根駅伝はもうすぐだ(撮影・佐伯航平)

出雲駅伝、全日本大学駅伝ではともに4位。國學院大學は、今年初めて箱根駅伝に対して「総合優勝」を目標に掲げた。各大学の戦力が拮抗する「戦国駅伝」にあって、國學院のチーム力は着々と高まっている。

前評判は高くなくとも、着実に強く

前田康弘監督は「箱根で総合優勝」することを最終目標として、1年間チームを作ってきた。昨年度は藤木宏太(4年、北海道栄)と中西大翔(たいが、3年、金沢龍谷)の2人が「エース」と評価されていたが、3月の学生ハーフマラソンで島﨑慎愛(よしのり、4年、藤岡中央)が3位で表彰台に。関東インカレ10000mでも藤木が28分10秒30の國學院歴代最高タイムでの6位入賞と、好結果を残した。しかし6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では2位通過したが、3組終了時点で暫定1位だったところを、最終4組で東京国際大に逆転されたことで、選手たちに笑顔はなかった。「トップ通過しないと駅伝シーズンでは戦えない」という気持ちがあったからだ。負けから気持ちを引き締め、ホクレンディスタンスチャレンジを経て夏合宿、そして駅伝シーズンに入った。

國學院大は日本インカレには出場せず選手たちの様子が見えなかったこと、エントリー選手たちの平均タイムが駒澤、青学などと比べて速くないことなどもあり、前評判は決して高くはなかった。2年ぶりに開催された10月の出雲駅伝は、季節外れの30度を超える暑さの中でのレースとなった。1区島﨑の区間3位の快走から、2区では主将・木付琳(4年、大分東明)の区間賞でトップに立ち、流れをつくる。アンカー平林清澄(きよと、1年、美方)は3位でもらった襷(たすき)を一時2位に押し上げたが、最後にかわされて4位となった。表彰台に乗れなかった悔しさはあったが、「勝負できる」という手応えが選手たちの中に生まれた。

区間賞の走りで順位を3つ上げ、4位でフィニッシュした伊地知(撮影・佐伯航平)

続く11月の全日本大学駅伝では、出雲と同じ1区島﨑、2区木付の布陣。2区に順天堂大の三浦龍司(2年、洛南)がいたため最後は離されたが、トップと15秒差の5位と上々の前半スタートになった。7区は平林が区間3位の快走、そしてアンカー8区では伊地知賢造(2年、松山)が区間賞の走り。國學院大史上最高となる4位でのゴールは、着実なチーム力の高まりを感じさせる結果だった。

ルーキー山本は「主要区間を走りたい」

箱根駅伝に向けての期間の間でも、國學院大の存在感はさらに大きくなってきている。11月13日に箱根ターンパイクで開催された「激坂王決定戦」では、登りの部で殿地琢朗(4年、益田清風)が「三代目山の神」神野大地に次ぐ2位、学生トップでゴール。23日の関東学連主催の10000m記録挑戦競技会では、ルーキーの山本歩夢(1年、自由が丘)が28分41秒59の自己ベストで組トップ。最終組では木付が先頭集団で走り、28分37秒76で組3着となった。

殿地は前回の箱根でも5区を走った。今回も5区候補の筆頭だ(C)激坂最速王決定戦2021

これが大学初の10000mレースとなった山本は、充実の表情を見せていた。レースは箱根駅伝に向けての選考の意味合いも持っていたといい、前田監督からも「ここでミスしたら箱根(のメンバー入り)はないよ」とも言われており、本人も大事なレースと自覚し、ここに合わせて調整をしてきたと話した。

ペースメイクしたヴィンセントが残り2000mでペースアップすると、山本はひとりついていった(撮影・藤井みさ)

入学時に5000m13分台のタイムを持っていた山本は、期待されていたルーキーの1人だ。しかし春先と夏合宿でけがをしてしまい、「なかなか高校の時みたいにうまくいかなかった」。その間に同期の平林は力をつけ、出雲、全日本のメンバーに入り2度の好走を見せた。この日も平林のタイム(28分38秒26)を抜きたいと考えながら走ったという。「同期だし、絶対負けないという気持ちを持ってここまでやってきました。チーム全体的にも彼の存在は大きいと思っていて、切磋琢磨しています。1年生は平林だけじゃないと、今日しっかり力を示せたと思います」。箱根で走りたい区間は1区。「でも4年生も島﨑さんとかが強いので、12月が大事になってくるのでしっかり調子を上げて、箱根駅伝で主要区間を走りたいと思います」と頼もしい。

2年前より強いチームに

前田監督は全日本大学駅伝後、主力には無理に記録会に出させず、箱根駅伝に向けた足づくりを中心に取り組むと示唆していた。主力の中でも木付は自ら前田監督にこの記録会に出たいと志願。別メニューで調整してスピードを磨くことに徹してきたという。それは主将として、4年生として「箱根の往路で戦いたい」という気持ちがあるからだ。木付は過去2回箱根駅伝を走ったが、2年時は7区、3年時は10区と復路だった。今年は主力の自覚があるからこそ、最後の箱根は主要区間で。その思いが感じられた。

「今日はタイムというよりは順位にこだわって、箱根につながるレースにしたいと思ってました。全日本が終わってからも状態がよく来られています。内容としてはラスト勝てなくて、ちょっと力が足りないなという感じですが、悪くはなかったなという印象です」とここまでの取り組みへの一定の手応えを見せた。

スピードに課題があると語る木付。弱点を克服し主要区間でチームに貢献したい(撮影・藤井みさ)

2年前には土方英和(現・Honda)、浦野雄平(現・富士通)、青木祐人(現・トヨタ自動車)という力のある4年生3人が中心となり、箱根駅伝で学内史上最高となる総合3位を成し遂げた。だが、今年は主力に次ぐ中間層のレベルがここ数年でもっとも上がっているという木付。「出雲を走った6人を中心に、全体的なレベルは2年前より高いと思います」と話す。その通り、今年は1年生から4年生まで各代の選手がそれぞれ活躍している印象だ。前田監督は常々、「駅伝は4年生の力」と話す。しかし今年は強い4年生と、それを下から突き上げる下級生が融合し、今までにないチームを見せてくれるという面白い予感を感じさせる。どんな戦いを見せてくれるのか、ワクワクとともに待ちたい。

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