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関西学院大が4年連続32度目の大学日本一、甲子園ボウル最優秀選手は齋藤陸

甲子園ボウル最優秀選手の関西学院大学RB齋藤陸。第4QにもTDを挙げる(撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの大学日本一を決める三菱電機杯第76回毎日甲子園ボウル(全日本大学選手権決勝)が12月19日に阪神甲子園球場であり、西日本代表で6年連続55回目出場の関西学院大学が9年ぶり18回目の出場となった東日本代表の法政大学を47-7(7-0、6-0、10-7、24-0)で下し、4年連続32度目の優勝を果たした。

年間最優秀選手は関学の前田公昭

甲子園ボウル最優秀選手には2TD(タッチダウン)を挙げた関学RB(ランニングバック)の斎藤陸(4年、江戸川学園取手)、敢闘選手は法大RBの星野凌太朗(3年、日大三)が選ばれた。年間最優秀選手(ミルズ杯)には関学RBの前田公昭(4年、関西学院)が輝いた。
昨季まで学生と社会人代表で争われた日本選手権ライスボウルは、今季の2022年1月3日から社会人Xリーグの優勝決定戦となり、甲子園ボウルが大学シーズンの締めくくりとなった。

最初のシリーズでタッチダウン

関学が鮮やかな速攻をみせた。キックオフリターン後の相手陣46ydからのファーストシリーズ。2枚看板のRBで仕掛けた。まず、齋藤陸が左サイドでパスを受け22yd前進、次は前田が11yd走って攻撃権を連続で更新した。残り13yd、齋藤がRB安西寛貴(4年、関西大倉)に守られるように左ライン際をTDまで走り込んだ。

開始1分27秒。齋藤は「4年間で一番落ちつてプレーできた。余裕がある分、周りをみて走れる。安西がブロックしているのを僕が動かしながらTDしたが、下級生の時だったら突っ込んでいたところ」と振り返った。甲子園ボウルで初めてTDを挙げたが、「思ったよりTDした後も落ち着いていて、自分でもびっくりした」。

先手を取られると法大はやっかいとみていた関学は、自信のある勝負手から打って出た。しかし、エース前田は最初に走ったこの時の11ydがこの日の最長だった。実は2週間前の西日本代表決定戦で足を痛めて満足に走れる状態ではなかった。大村和輝監督は「練習は1回もしていない。ぶっつけで、4年生の根性でという感じだった」と明かした。これも折り込み済みだ。齋藤は「前田の分も走ったろう、4年間の集大成と思っていた。最悪を想定してきたので、(前田が走れなくても)落ち着いてプレーできた」。王者の懐の深さだった。

第2Q、タックルをかわす関学のWR河原林佑太(撮影・田辺拓也)

2年生QB(クオーターバック)鎌田陽大(追手門学院)はパスで430ydを稼いで及第点だったが、大舞台の初先発で硬さもあった。インターセプトを喫したり、ゴール前まで攻め込みながら、前半のTDは立ち上がりの一つだけだった。

父を追う前島仁が勝負決める

第3Q立ち上がりに法大のエース星野にTDを許して6点差と迫られた。この嫌な流れを断ち切ったのはWR(ワイドレシーバー)前島仁(まえしま・じん、2年、関西学院)だ。8分13秒に68ydを走りきってTDを奪った。父の純さんは関学OBで1993年には3年生で年間最優秀選手に輝き、甲子園ボウルでも独走TDを挙げた名RBだった。前島は「(シーズンを通じ)毎試合、毎試合活躍するのは難しいことやし、こういう大きな舞台で結果を残せるのはすごいことだというのを実感した。正直、目標とする人です」と話した。

第3QにTDを挙げるWR前島仁(左)と好ブロックのWR河原林佑太(撮影・田辺拓也)

才能豊かな逸材は今季、レシーバーとRBの「二刀流」に挑んできた。「どっちも花形なので最初はうれしかったが、実際やってみると体作りや技術も違い難しかった。前例がないので、自分の中でスタイルを確立していった」と努力を重ねてきた。QBの経験もあり、関西学生リーグの立命館大戦では貴重なTDパスも通すなど今季はここ一番での活躍が光った。

9年ぶりの出場だった法大は硬さからかキックオフやFG(フィールドゴール)でミスがあった。目立たなかったが関学のK永田祥太郎(4年、浜松西)が4本のFGを全て成功させたのも大きかった。第4Qには3TDをたたみかけた。点差が開き、苦労をともにしてきた4年生も次々に起用でき、チーム史上4度目の4連覇(1度は5連覇)を最高の形で締めた。

挑戦者貫き4度目のV4

法大の3年生司令塔、平井将貴(千葉日大一)は「昨冬に関学のオフェンスをみて、サードダウン、フォースダウンのオフェンスが素晴らしく、そこを関学さんよりとれるように意識して頑張ってきた。今回試合をやって完敗だと思う。もう一度、突き詰めないといけない。1対1の強さ、思い切りのよさが想定していたものとは全然、違った」と雪辱を誓っていた。

優勝して記念撮影する関西学院大の選手ら(撮影・田辺拓也)

関学の4年生は甲子園ボウル負けなしで卒業していく。「勝ってはじまるチームは難しい。去年と同じにやればいい、では基準が下がる。主将になった時に『去年の優勝にこだわらず、今年は今年、何がなんでも俺らは挑戦者』と伝えてきた。来年も次の代で自分たちの持っている実力で挑戦してほしい」。DL青木勇輝主将から後輩たちへの言葉に、ファイターズの強さが詰まっていた。

「得点差以上によくやった」

法大・有澤玄ヘッドコーチ 「(負傷による)レフリータイムアウトが多い時は経験上、負けることが多い。そう考えるとうちの方が多かった。タフさ、フィジカルで勝ちにいく、と言っていた割にはフィジカルがまだまだだなと、勉強になりました。フォースダウンから攻めたのは、攻めのフットボールでいくと決め練習からやってきた。選手がそこで迷わずいけたのはよかった。とれなかったのは私の指導不足、学生は得点差以上によくやってくれた。4年生は試合に出ている人は少なかったが、選手がいかにいい環境でできるか、いろいろやってくれた。すごく頑張ってくれた。本当に感謝しています」

第3QにTDを返した法大のRB星野凌太朗(撮影・田辺拓也)

法大のRB星野凌太朗 「点差がこんなに開くとは思わず、自分もチームももっともっとやれた。この悔しい気持ちを忘れず、次からに生かせていければ。自分らのOLも負けていない。その中で自分がもっと走れればよかったが、できなかった。もっともっと足りない部分があるということ。そこをしっかり修正したい」

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