アメフト

高知大・池田拓朗「勝ちにいこう!」という雰囲気に魅了されて始まったアメフト人生

池田は高知大でアメフトに初めて触れた(写真は全て本人提供)

2021シーズン、高知大学は「中四国1部リーグ優勝」を目標に掲げていたが、新型コロナウイルスの影響で8~9月、課外活動が禁止となり、リーグ戦への出場試合も制限された。結果は4位。WR(ワイドレシーバー)として「中四国1部リーグのベストイレブン」を目指していたWR/DB(ディフェンスバック)の池田拓朗(3年、須磨学園)は「コロナの影響もあって満足いく練習ができなかったのはあるけど、最後の最後に詰めが甘かったのが反省点」と明かした。だからこそラストイヤーへの思いは強い。

「最後こそは勝ちたいし、下回生にも勝った時の喜びを味わわせてあげたい。そのために自分が何ができるかを必死に考えて取り組むのが最上級生の役割だと思ってます」

長距離選手からアメフト選手へ

2021シーズンの高知大の選手は16人。アメフト経験者の入部はまれであり、直近の3年間はゼロだ。池田も小学校ではサッカーを経験し、中学校・高校は陸上部で長距離種目に取り組んでいた。特に駅伝強豪校でもある須磨学園高校(兵庫)では、推薦で入学してくるような力のある選手が複数いたこともあり、大会に出場することも難しかった。ただ陸上自体は大学でも続けようと考え、高知大に進んでから陸上部の見学に行ったが、それよりもアメフト部の雰囲気の方がより魅力的に感じたという。「練習から『勝ちにいこう!』という雰囲気が伝わってきました。大学でもスポーツをするならガチでやりたいと思っていたので、中四国1部リーグ優勝を目指して取り組んでいる姿を見て、魅了されて入部を決めました」

陸上をやってきたこともあり、最初は接触の多いアメフトに慣れるのに時間がかかった。特に一番苦労したのが体作りだ。入部したての頃は身長168cmで、体重が50kg。まずは体重を増やすために白米をめいっぱい食べ、慣れない筋トレにも積極的に取り組んだ。夏合宿では1回の食事で2kg体重を増やす食トレもあり、元々食べること自体は好きな方だった池田も、「さすがにしんどくなりました」と振り返る。だか努力の積み重ねで、3年生になった今では体重が15kgほど増えた。

WRは自分から希望した。「練習を見てて、キャッチして走っているのがかっこいいなと思ったんです。複雑な理由とかではなくて、普通にかっこいいなと」。アメフトではWBにパスを送るQB(クオーターバック)が花形と呼ばれているが、「そのボールをとるレシーバーがうまくなかったら、QBも活躍できないんですから。だからレシーバーが一番かっこいいなと思ってます」と加える。ただ、初めは楕円(だえん)形のボールをキャッチするのが難しいものだが、池田は入部して1~2カ月目にはキャッチできるようになり、「それが自分の中ででかい体験だった」と振り返る。できなかったことが練習を経て少しずつできるようになる。自分が上級生になった時には、その喜びを後輩たちに伝えられたらと感じるようになった。

日々の練習から意識を変える

池田は3年生にあがるにあたり、幹部の4年生たちからポジションリーダーに任命された。同じポジションには4年生もいたが、自分のことを信頼して任せてくれた4年生たちへの感謝を胸に、目標である「中四国1部リーグ優勝」のために、今のチームに何が足りていないのかをまず考えた。部にはコーチはおらず、学生自身が練習メニューを考え、チームの強化を図っている。池田もゼロから先輩たちに教わり、先輩たちから学んだことを後輩に伝えてきたが、「何かを変えなければいけない」という思いが池田にはあったという。

学生主体のチームだからこそ、池田(右から4人目)は変化が重要だと考えている

その1つが「キャッチへの意識」だ。キャッチ練習ではボールを落とすことに抵抗がない選手もいるように見受けられた。「これは練習だから、という意識の選手もいたんだと思います。でもそういうところが試合に出てしまう。意識付けが必要だと思いました」。そこでキャッチ練習で成功した人にポイントを与えて順位をつけ、落としてしまった選手に対しては、選手自身に考えさせるため、強めに指摘をする。日々の練習で積み重ねるうちに、次第にボールを落とす回数が減り、選手も練習に対する意識が変わってきたという。

また、池田は選手一人ひとりの練習を見た中で良くないクセが目立つようであれば、そのクセを本人に指摘し、なぜ良くないのか、どうすればより良いプレーにつなげられるか、どんな練習が必要なのかなども伝えるようにしている。「例えばレシーバーはパスをとるだけでなくて、ディフェンスの妨害にも行かないといけないので、『体が前に行きすぎているから、こういう体勢をできるように練習しないといけないよね』などと客観的な視点も交えてサポートしています」。また、相手チームのスカウティングにも力を入れている。メンバー全員で試合を見て、時にはみんなから意見を求めながら、どのような対応が必要か、そのためにどんな練習をしなければいけないのか、一人ひとりが理解して行動ができるように促している。

成功した時の喜びを後輩にも

特にリーダーになってからは「基礎を固めること、成功体験を重ねること」を意識するようになった。

「急に専門的なことをし始めても特に1年生は戸惑うと思うので、慣れてきたところで少しずつ専門的なことをするようにしています。でも楽しいと思えないと続かないと思うんです。自分がそうだったように、成功するとそれが楽しくて、もっと頑張ろうという意欲が出てくると思うので、成功体験を日々の練習の中で積み重ねていけたらいいのかな」

「楽しい」という気持ちも成長にはかかせない

コロナ禍がいつ明けるのかはまだ分からない。また練習ができなくなることもあるかもしれない。どんな状況になったとしても、できること全てをやり切るだけだ。「中四国1部リーグ優勝」そして「中四国1部リーグのベストイレブン」を目指し、日々の練習から池田自身も積み重ねを大切にしていくつもりだ。

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