FC GRAN SUMA・藤原裕也 失敗を恐れず挑戦することで広がる、新しい世界
大学の部活ではなく、「大学生だけの社会人サッカーチーム」で競技を続ける選手がいる。FC GRAN SUMAの藤原裕也(二松学舎大2年、明秀学園日立)は大好きなサッカーに関わりながら、新しい世界を広げようと日々を過ごしている。その気持ちの持ち方について聞いた。
サッカーを「やりきる」も、好きな気持ちを抑えられず
小学校からサッカーをはじめた藤原は、中学までは鹿島アントラーズの下部組織で、高校ではプロを目指し、選手権を目指して明秀学園日立でプレーした。しかし自分の実力はプロにはほど遠く、寮生活でサッカー漬けの3年間を送ったこともあり、「やりきった」という思いが強くなった。大学では新しいことをやろう。そう決めていくつか勧誘のあった大学サッカー部をすべて断り、大学に入学してからはやってみたかったファストフード店でのアルバイトを始めるなど、新生活を満喫した。
しかしファストフード店と合わせてフットサル場でアルバイトをしていたところ、ボールを蹴っていて「やっぱりサッカーをやりたいな」という気持ちが大きくなってきた。いくつかの社会人チームの練習に参加し、たまたま友達から紹介されたのがGRAN SUMAだった。創立者も運営者も大学生という異色のチーム。横浜市を拠点とし、神奈川県社会人サッカーリーグ3部に参入している。藤原はいまは右サイドバックのポジションでプレーをしながら、「営業部」「企画部」といった部署に所属し、チーム運営にもかかわっている。
失敗を恐れず積極的に行動する
藤原が大学生になって意識していることが2つある。まず1つ目は「新しいことに挑戦してみる」だ。大学入学当初から新型コロナウイルスの影響でオンライン授業だということもあり、友達を作る機会がなかった。そのためブログを始めてみて、毎日自分の思っていることを発信した。発信しているうちに同じ志向の人とネット上で出会えることもあったという。「ブログを書くことで、自分が知らなかった世界を見ることができました。いままで自分が出会ったことがない人が、どういう思いで生活しているのか、新しい世界が広がっていくなという気がしました」。新しい環境に飛び込み、失敗してもいいから挑戦してみる。失敗しないと覚えないし、失敗できる環境があるのなら、学生のうちにたくさん失敗したほうがいい、と思って積極的に行動しているという。
しかし藤原は高校時代からそういう思考を持てていたわけではない。大学に入り、ファストフードのアルバイト先で出会った先輩の影響が大きいと話す。「僕がアルバイトに入りたての頃、ミスをしてしまったんです。そしたら『俺と一緒の時は失敗していいから、いろんなことやりなよ』ってサラリと言ってくれたんです。すごく嬉しくて、それから失敗することを重いことだと考えないようになりました」。その言葉に背中を押され、いろいろな役割にも挑戦するようになった。「本当に、大学に入ってから一番の恩人だと思ってます」と笑う。
楽しむことで気づけた、競技の新しい魅力
そして意識していることの2つ目は「自分の得意なことを曲げない」だ。「サッカーでもそうだと思うんですが、一人ひとり特徴がそれぞれ違います。不得意なことをみんなと同じぐらい伸ばすよりは、自分の得意なことを伸ばすために時間を費やすのが大事かな、と思っています」。得意なことで突き抜けて、社会に出たときも勝負していきたい。それぞれが主体的に「サッカーをしたい」と集まったチームに身をおくからこそ、その思いはより強くなった。
話を聞いていると、やっぱりサッカーが好き、という気持ちが伝わってくる。これからもサッカーを続けたいですか? とたずねると、「もちろんです」と返事が返ってきた。「とにかく、楽しくやることが目標です。楽しい範囲でずっとサッカーを続けていきたいと思います。プロになるためと思ってサッカーをしていたときは、きついトレーニングをして、勝つためだけにやっているようなところがありました。今はそれとは違う面白さも感じられています」。チームの監督も大学生で、年齢も近い。練習や試合でもそれぞれの意見を出し合って進めることで、サッカーの新しい魅力に気づけたという。
「プロを目指していた頃は、うまくならなきゃいけないと毎日必死でした。今は、興味本位という感じで『こうやったらうまくなるのかな』という感じでやっています。いい意味で肩の力を抜いてできているのかなと思います」
大好きなサッカーに関わりつつ、新しい世界を広げる。「いま、すごく忙しいですね! 毎日次の日のこと、来週のことを考えてから行動しています。やることがいっぱいあります」。そういって笑う藤原。自ら行動することで世界を広げ、充実した毎日を送ることができている。