野球

特集:駆け抜けた4years.2022

東洋大・佐々木俊輔主将「野球が好き」の一心で挑んだ4年間、2部降格の悔しさを胸に

佐々木はラストイヤー、主将としてチームを引っ張った

2021年度の東洋大学硬式野球部で主将を務めたのは佐々木俊輔(4年、帝京)外野手。帝京高校(東京)からの2年先輩である小峰聡志(現パナソニック)を慕って東洋大に入学し、1年生の春季リーグ戦から1番打者としてスタメンに起用された。そんな“期待のルーキー”の大学4年間は平坦なものではなかった。

東洋大学の佐々木俊輔主将、心をひとつに「春4連覇」へ挑む 東都1部7校の激戦

3年目に再び1番打者へ

1年目の春季リーグ戦からスタートダッシュを決めた佐々木だが、打撃では思うように結果を残せず、以降は控えで守備や、持ち前の俊足を生かした代走での出場を模索した。転機となったのは3年生の時。新型コロナウイルス感染症の影響で春季リーグ戦は中止となったが、自粛期間を経て打撃を見直した。バットを振り下ろすイメージでフォームを改造。オープン戦で結果を残し、秋季リーグ戦でスタメンに復帰した。

9番打者としてシーズンのスタートを切ったが、好調が続きリーグ戦を折り返した中央大学戦から1番打者に返り咲いた。1年生の時を思い出すと「ちょっと不安な気持ちもあった」とこぼしたものの、3年生になってからは後半戦毎試合安打で1番打者の役割をきっちり果たした。リーグ3位の打率を残し、飛躍のシーズンとなった。

主将就任も苦悩の1年

シーズン終了後、話し合いの結果、主将に就任。主将だった山崎基輝(現・日本生命)から「チームを見ることも大事だけど、自分の結果をどう残すかを考えた方がいい」とアドバイスを受けた。しかしラストイヤーの春季リーグ戦は打率.273と首位打者の目標には遠く及ばず。チームも後半戦全敗の6位で東都リーグ1・2部の入れ替え戦へまわることになった。

チャンスでどう1本を出すかを考えながら入れ替え戦に備えたが、佐々木は3打数無安打、チームも初戦を落としてしまう。するとそのまま2部首位の日本大学に連勝され、2部降格となった。自己評価は40点。「自分の結果が出れば自然とチームのことを見ることができるという意味だったと思う。それができず自分のことにとらわれすぎた」と先輩の言葉を分析した。

最終打席前、ベンチを見て沸き起こった感情

2部で迎えたラストシーズンの秋季リーグ戦。最速1部復帰を狙ったが、新型コロナウイルス感染症の影響で入れ替え戦が実施されないことが決まった。モチベーションに苦しむ中でも次年度を見据えたチームのために、リーダーシップを見せる覚悟を決めた。

1部昇格のチャンスが消えても、佐々木は主将として4年生として、後輩たちのためにできることを考えた

4年生では唯一の全試合出場。率先してベンチを盛り上げ、活躍した後輩にガッツポーズを促すなどチームを鼓舞し続けた。最終戦は七回から代打で出場。バットを思い切り振りぬくと鋭い打球が上がったが、レフトフライに倒れた。第二打席は同点の九回、4年生がチャンスを演出し、佐々木まで回す。一打サヨナラの場面に意気込んでベンチを出たが、ネクストバッターズサークルでの心境は佐々木自身にとっても予想外のものだった。「ベンチを見ようとした時に久しぶりに野球で感動して、ウルっときた」。万感の思いで立った最終打席は、空振り三振。それでも最後は清々しい笑顔を見せた。

両親も認める「野球好き」

表情豊かにグラウンドに立つ姿が印象的な選手。野球を楽しむ笑顔、悔しさをかみしめる表情、喜びの力強いガッツポーズなど、一球一球を全力でプレーする。「自身にとって野球とは」の問いに佐々木の答えはシンプルだった。「好きなスポーツです」

小学6年生までは中村俊輔が大好きなサッカー少年でもあった。それでも「なんで野球やってるかって聞かれたら好きだから。それしかない」と打った時の高揚感、みんなで喜び合える一体感が魅力だと語る。両親も「(主将になった時は)心配だったけど、本人は本当に野球が好きなので」と自他ともに認める野球好きだ。

学生野球は幕を閉じたが大好きな野球を全うする人生は続く。次なる舞台は社会人野球だ。

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