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特集:駆け抜けた4years.2022

明治大・常田耕平主将、せめて後輩に1部で戦う喜びを 最後まで貫いたキャプテンシー

常田は主将としてラストイヤーを駆け抜けた

誰よりも大きな声でチームメートを鼓舞し、誰よりもコートを全力で駆け抜ける。2021年、明治大学は関東2部秋季リーグ戦で全勝優勝を遂げ、1部昇格の切符をつかんだ。その中心には常に主将としてチームを引っ張る常田耕平(4年、正智深谷)の姿があった。2部降格、コロナ禍、1部昇格と激動の4年間を駆け抜けた熱き主将に迫る。

1部昇格への強い思い

3年前、明大は10年間守り続けていた1部の座から退くことになった。2部降格決定後のミーティングでは多くの選手たちが涙を流し、2年生の時から試合に出場していた常田も悔しさをかみ締めていた。「1部でプレーするために明大に入ったので悔しかった」。それでも、来年度すぐに1部に戻れるように。1部復帰を目標にひたむきに練習を重ねていた。

しかし、待っていたのは思ってもいなかったような未曾有の事態だった。新型コロナウイルスの影響で、春季トーナメント戦は中止に。更に秋季リーグ戦はトーナメント方式に変更され、昇降格制度は消えた。どれだけ勝ち進んでも1部には上がれない。自分たちはもう1部でプレーするチャンスはない。現実を知った時は「だいぶ落ち込んだ」。だからこそ、ラストイヤーにかける思いは人一倍強かった。自分たちの代で絶対に1部に上がる。そして後輩たちに1部の舞台という土産を残して引退する。強い覚悟からラストイヤーが始まった。

常にチームをプレーでも声でも引っ張り続けた

チームを引っ張る大きな存在に

高校時代にも主将を務め、明大に入学してからも3年生から副将を務めた常田。「意識しなくとも主将っぽくなってしまう(笑)」と本人も語るほど、主将と隣り合わせのバスケ人生を送ってきた。4年生になり、主将になるとキャプテンシーはますます磨き上げられていった。常に自分のことよりも全体のことに意識を向け、周りへの気遣いは欠かさない。責任感もチームの誰よりも強く、自分が思ったことを周囲に伝え続けた。「気持ちでプレーは変わる。だから気持ちが変わるスイッチを入れるような声かけをする」。試合に出ている時もベンチにいる時も必死にチームメートを声で支えた。

そんな主将の姿は後輩だけではなく同期に与えた影響も大きかった。「本当に大きな存在だった。4年生として後輩には気持ち的な部分を声かけすることを意識した」と溝口月斗(4年、東海大札幌)は言う。試合を重ねるごとに常田だけではなく、4年生全員の声かけがチームの大きな支えになっていった。

4年生を中心にまとまったチームは快進撃を見せる。関東秋季2部リーグ戦では初戦を白星で飾ると勢いは止まらず、そのまま11連勝で見事1部復帰を果たした。更に神奈川大学とのインカレチャレンジマッチでは、試合時間残り10.3秒で同点に追いつき、延長戦までもつれる激闘を制し、インカレの出場権をつかんだ。

インカレチャレンジマッチの試合終了後には涙を見せる場面も

最後のインカレでも「来年につなげよう」

そして迎えたインカレでは初戦の星槎道都大学戦に勝利を収めるも、2回戦目の京都産業大学に惜敗を喫し、涙をのんだ。目標としていたインカレベスト4には及ばず、ベスト16で大学バスケに別れを告げることに。それでも、敗北が近づいた最後のタイムアウトではチームメートにこう言った。「来年につなげよう。しっかりこの結果を受け止めて最後までやり切ろう」。最後の最後まで、強いキャプテンシーでチームをまとめ上げた。

試合中は鬼気迫る表情を見せる場面もあるが、一度試合が終われば表情は緩む。「遠いよね。大変だよね。1部になったらもう少し会場近くなるよ(笑)」と私たち学生記者にも気さくに声をかけてくれた。そんなささいな一言は試合会場までの移動の疲れを吹き飛ばし、やりがいを与えてくれる。チームメートだけではなく、周りへの気配りは欠かさない。その立ち振る舞いの中にもキャプテンシーが垣間見えた。

大学バスケから地元・愛知県のB1チーム・三遠ネオフェニックスへと舞台を移す常田。2020-21シーズンも特別指定選手として加入していたチームに戻る最高の形となった。全勝優勝、1部昇格、インカレ出場へとチームを導いたキャプテンシーを生かし、活躍する姿をプロの舞台でも見せてくれるだろう。

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