フィギュアスケート

特集:駆け抜けた4years.2022

それぞれの夢に向かって 「明治法政 ON ICE」で引退選手が最後の滑り

「明治法政ON ICE」に出演した引退選手(すべて撮影・浅野有美)

明治大学と法政大学の引退選手らが出演するアイスショー「明治法政 ON ICE」が3月5日、ダイドードリンコアイスアリーナ(東京都西東京市)で開かれた。今年で4回目。無観客開催だったが演技はYouTubeでライブ配信され、選手たちは家族や仲間に感謝の思いを伝えた。

無観客でも特別な時間

引退選手が花道を飾る場として2019年から始まった学生主催のアイスショー。一時は有観客を試みたが、新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置のため昨年に続き無観客での開催となった。選手たちが心待ちにしていた舞台。明治大学の主将・井上千尋(椙山女学園)や法政大学の主将・佐上黎(武蔵野学院)ら引退選手8人が出演し、約2時間の特別な時間を共有した。

前半は世界ジュニア選手権代表で法政大学1年の渡辺倫果(青森山田)や全日本選手権出場の明治大学3年の山隈太一朗(芦屋国際中教校)ら現役選手8人がショーを彩った。後半は引退選手がそれぞれのプログラムを万感の思いで滑り切った。演技後は引退選手のあいさつがあり、卒業後の進路や将来の夢を語った。

表現力で見せる明治大学の山隈太一朗

法政大・佐上「谷ばっかりの競技人生」

「れーぴー」の愛称で慕われる佐上は滑らかなスケーティングが魅力の選手だ。今シーズンのショートプログラム「スタンド・バイ・ミー」の音楽にのせて伸びやかにリンクを舞った。大学の後輩、鈴木楽人(駒場学園)が佐上のプログラム「Flash light」を滑るサプライズもあった。

あいさつでは涙が止まらなかった。「今年開催できるかすごく不安でしたが今無事に終えてすごくほっとしています。今日の滑りを最後にフィギュアスケートを引退します。山あり谷ありの競技人生と言いたいところですが、谷ばっかりの競技人生でした」と言葉を詰まらせた。

「明治法政ON ICE」で伸びやかなスケーティングを見せる法政大学の佐上黎

関係者からあたたかい拍手が送られると、中田誠人コーチや一緒に練習した部員やクラブの仲間に感謝を述べ、「何度もスケートをやめたいって思ったんですけど、みんながいたので最後まで滑ることができました」とつないだ。

「やっぱり自分スケート好きだなって最後に思うことができました。本当にありがとうございました」と締めくくった。佐上の周りには後輩や仲間たちが集まり笑顔で記念撮影。思い出をかみしめながら15年間のスケート人生の幕を閉じた。

明治大・井上はアイスショーの道へ

井上は名古屋・大須のリンクで育った。そこには北京五輪男子銅メダリストで中京大学の宇野昌磨(トヨタ自動車)がいて、貸し切り練習以外に一般滑走で何時間も練習する姿を見て自分も頑張ろうと思えた。進路で悩んでいるとき、同郷で明治大学の1学年上、大矢里佳(2021年3月卒業)から誘われ、新しい環境を求めて入学した。

新横浜のリンクに通い、浅田真央さんらを指導した佐藤信夫、久美子コーチに師事。一番印象に残っているのは大学2年で初めて出場した全日本選手権。「心の底から楽しかったです」とほほえむ。

「明治法政ON ICE」に出演した明治大学の井上千尋は感謝の気持ちでいっぱいだった

コロナ禍でリンクが閉鎖になったり、インカレが中止になったり。この2年間はなかなか思い出をつくることができなかった。それでも「すごい選手がいっぱいいて合宿で一緒になったときの刺激がすごかったです。自分を成長させてくれて感謝しかないです」と振り返った。

この日のために作った「Rise Up」を情感を込めて滑り終えると、「大学4年間はあっという間でとても濃い4年間でした。この4年間で本当に自分はスケートが好きと実感でき、これからもスケートに関わっていきます」と語った。競技引退後は世界各国を回るアイスショーで滑る予定だ。「王道のアメリカやヨーロッパも行きたいですが、なかなか旅行ではいけないような所に行ってみたいです」と目を輝かせた。

ゲストスケーターも最後の滑り

アイスショーには全日本選手権出場選手などゲストも出演した。昨年明治大学を卒業し、1年間競技を続けた森千夏(愛知みずほ大瑞穂)、春から指導者の道を歩む早稲田大学の石塚玲雄(駒場学園)、理学療法士になる国際医療福祉大の早川晃太郎(福大大濠)。国体成年女子で優勝した福岡大学大学院の竹野比奈(沖学園)は現役続行を宣言した。日本大学の緑川諒人(芽室)や東洋大学の鶴田翔真(開志学園)も最後の演技を心を込めて滑った。

昨年明治大学を卒業し1年間競技を続けた森千夏

スケートから離れる選手、スケートに関わり続ける選手、それぞれの決意を胸に前へと進んでいく。引退の花道となる舞台をつくりたいと始まった「明治法政 ON ICE」は先輩から後輩へと引き継がれている。来年こそはたくさんの観客の中で滑れる舞台が訪れることを願っている。

【動画・写真】「明治法政 ON ICE」練習を共にした仲間と最後の思い出
2021年の「明治×法政 ON ICE」の記事はこちら

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