フィギュアスケート

特集:フィギュアスケート×ギフティング

文武両道のアイスダンサー早大・高浪歩未 パートナー探し「また皆さんの前で演技を」

カナダを拠点にパートナーを探す高浪歩未(すべて撮影・浅野有美)

早稲田大学国際教養学部3年の高浪歩未(ケイインターナショナルスクール東京)は、フィギュアスケート・アイスダンスと学業の両方で高みをめざす学生アスリートだ。部活動と学業を高いレベルで両立した学生に贈られる「早稲田アスリートプログラム(WAP)」の「年間優秀学業成績個人賞」を2年連続で受賞。2021~22年シーズンはカナダ・トロントを拠点にしながら全日本選手権3位と健闘した。現在は新しいパートナーを募集している。アイスダンスへの思いや学業との両立について語った。(※競技引退に伴いギフティング受付を終了しました)

ジェットコースターのような1年

高浪は7歳のときアメリカでスケートを始めた。10歳で日本に戻り、ジュニア時代はアイスダンス日本代表で世界ジュニア選手権に出場。21~22年シーズンは早稲田大学3年の西山真瑚(目黒日本大高)と組み、シニアに参戦した。

「ジェットコースターみたいだった」

激動の1年をそう振り返る。以前のパートナーとカップルを解消し、1年間のブランクを経てパートナーを探すためフランス行きの準備をしていたところ、急きょ西山とカップルを組むことに。21年3月上旬に結成発表すると、4月初旬にはフリーの振り付けのためアメリカへ。だがコロナ禍で1カ月後に帰国。6月下旬には新拠点のカナダに渡ったが隔離生活でしばらく練習が再開できず、生活が落ち着いたのは夏休みを過ぎてから。秋以降はカナダの大会で実践を積みながら年末の全日本選手権まで走りきった。

その全日本で北京オリンピック代表の小松原美里、尊組(倉敷FSC)、世界選手権代表の村元哉中(かな)、高橋大輔組(関大KFSC)に続いて3位に食い込んだ。

「課題としたことを1つ1つクリアしながら、1日1日精一杯頑張ってきました。夢だった全日本の舞台に立てて表彰台にも立つことができてうれしかったです。会場でファンの声援やバナーも見えて力をもらえたと思います」

今年3月の「WASEDA ON ICE」に出演した

憧れの先輩カップルと全日本の舞台に

全日本は北京オリンピック代表の最終選考会で、アイスダンスの1枠をめぐる争いを肌で感じた。

「公式練習やウォーミングアップを通して、試合に向けた準備の姿勢、雰囲気。1枠を勝ち取るのがどれだけ難しいのかというのを感じられて、今後に生かせる経験になったと思います」

大会ではライバル同士でも日本のアイスダンス界を盛り上げる仲間でもある。「美里さんは更衣室が同じだったのですが、気軽に話しかけてくれて試合に向けていい気持ちでのぞめました。チームココ(小松原美里、尊組の愛称)としての魅力は長く組んでいるからこそ一体感。フリーの『SAYURI』は作品としてプログラムが出来上がっていて、ナレーションが心に響くように入ってきました」

村元には昔、世界ジュニア選手権前に振り付けを見てもらったことがある。2人とも英語が堪能なため英語で会話することもあるという。「今回解散の発表をしたときもすぐに連絡をくれて励ましてくれました」。高橋に対しては「一緒に表彰台に並んでいられるのがうれしくて。表彰式の前に集まったときも声をかけられず試合よりも緊張したくらいでした」と明かす。

2人の体幹の強さや技術の高さには驚くばかり。「リズムダンスのミッドラインステップでは足を上げて前傾になってもぶれずにレベルをとっていました。高橋選手はアイスダンス2年目とは思えないほど複雑なリフトも入れていました」

たくさんの観客の前でまた演技を披露したいと願う

学業と両立のコツは「前もって準備をすること」

早稲田大学では学生アスリートに対し、学業と部活動を両立し、社会性と豊かな人間性を兼ね備えた人格形成を目指す育成プログラム「WAP」を設けている。

高浪は英語と日本語で授業を受けながらレポートや試験も欠かさず、20、21年度と連続でWAPの年間優秀学業成績個人賞で表彰された。

大学の講義は主に英語。アカウンティングや心理学などを英語で、基礎スポーツ医学やスポーツビジネスなどは日本語で受講している。高浪にとっては英語で理解する方が早く、日本語の授業は自分の中でのチャレンジだ。アメリカにいたころから漢字も独学で勉強してきたが日本語でも難しい専門用語が出てくると英語で意味を調べてから理解しているという。

大半はオンデマンドで受講しているが、大変なのがリアルタイムの講義だ。トロントとの時差は13時間(サマータイム)。日本で日中でも現地は深夜。テスト受けて30分~1時間仮眠してから練習に行ったときもあった。

日々の練習をこなしながら学業の成績も残せるのはインターナショナルスクール時代からタイムマネジメントが身についているからだという。

「成績や出席日数が厳しく、海外練習のときも宿題があり、遠征先で常に勉強していました。早め早めに宿題やレポートをやったり、期限よりかなり前に提出したりしていました。自分は睡眠を大事にしているので早く寝るためにどうしようと考えて、練習の移動時間や合間に学校のことをやってきました。タイムマネジメントを小さいころから積み重ねてきた経験があったから今も両立ができていると思います」

今年3月、WAPの年間優秀学業成績個人賞の表彰式に出席した(本人提供)

カップル解散後、カナダでパートナー探し

22年3月、西山とカップル解消後、3月12日に開催された「WASEDA ON ICE」に出演後、カナダ・トロントに戻った。

解散前と変わらずクリケットクラブで練習ができている。スケーティングのレッスンやジムでのトレーニング。引き続きアンドリュー・ハラム氏、トレイシー・ウィルソン氏、ジョイ・ラッセル氏の指導を受けている。

「1人なんですけど自分を磨けることがたくさんあります。いろんなパターンダンスを練習したり、ターンなどアイスダンスならではのエレメンツの練習をしたりしています」

アイスダンスのパートナー探しのサイトにも登録した。「日本の選手がいたらそれに越したことはないですが、パートナーがいないと競技を続けられないですし、大会にも出られないので、そこはオープンに動きたいと思います」と話す。

海外拠点はお金がかかるため、オンラインの家庭教師に加え、日本人がオーナーの鮮魚店でアルバイトも始めた。「スケートをやっているといっても大学生でもあるので、両親に頼り切りにならず少しは自分でも責任をもって学費を払いたいと思っています。週3回、休憩いれて5~6時間やっています。いい体力トレーニングにもなっています」

ファンが選手に支援金を寄付できるスポーツギフティングサービス「Unlim」も利用している。応援してくれたファンにはクリケットクラブでの最近の様子を「お礼動画」として届けている。(6月3日に最新がアップされている)

来シーズンに向けて強い思いを語ってくれた。「第1にパートナーを見つけること。そしてまた皆さんの前で演技することが最大の目標です。いまは自分ができること、技術面や表現力といった1人でもできることを頑張りたいと思います」

アイスダンスは相手がいてこそ成り立つ競技。新しいパートナーと出会える日を信じて練習に励む。全日本、そして五輪の夢舞台を目指して歩み続ける。

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