陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

法政大・松永伶 関東インカレ5000mで会場沸かせたスパート「すごく楽しかった」

ラスト2周で松永は一気にスパートをかけた(撮影・すべて藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 男子1部5000m決勝

5月22日@国立競技場(東京)
1位 三浦龍司(順天堂大3年)       13分42秒35
2位 ムサンガ・ゴッドフリー(駿河台大1年)13分47秒69
3位 中野翔太(中央大3年)        13分48秒01
4位 九嶋恵舜(東洋大3年)        13分48秒67
5位 ボニフェス・ムルワ(山梨学院大4年) 13分49秒35
6位 松永伶(法政大3年)         13分50秒45
7位 富田峻平(明治大4年)        13分50秒72
8位 松岡竜矢(日本大4年)        13分51秒36

5月22日の関東インカレ最終日、長距離種目最後となった男子1部5000m。順天堂大学の三浦龍司(3年、洛南)が出場するとあって注目が集まったレースで、会場を大きく沸かせた選手がいる。法政大学の松永伶(3年、専大松戸)だ。大学に入って初の大舞台で大きなインパクトを残し、「自信になりました」と笑顔を見せた。

ラスト2周での飛び出し、大いに盛り上がる会場

松永は1日目の男子1部10000mにも出場した。この時は序盤は集団の前方にいたものの、徐々にペースを落とし、34人中30位、30分15秒69でのゴールとなった。そして翌日の男子1部5000m予選では集団の最後方からレースを進め、徐々に前方へ。ラスト1周でペースアップし、トップとは3秒あまりの差で6着。最終日の決勝へと進んだ。

迎えた決勝では、三浦がスタート直後から飛び出し集団の先頭へ。1000m2分45秒から50秒のペースで刻み、集団を引っ張った。松永は集団の最後尾で走り続け、3000mを過ぎてから徐々に位置取りを前にしていった。レースが動いたのは残り2周。松永は一気にスパートをかけて三浦の前に出ると、後続を引き離していく。会場は大きくどよめき湧き立った。

松永(22番)は序盤、集団の最後尾で走っていた

ラスト1周の鐘が鳴っても松永はまだ先頭を走っていたが、ギアを切り替えた三浦が脅威的なスピードで松永を追う。残り250mで捉えられると、後ろから来た駿河台大学のムサンガ・ゴッドフリー(1年)ら4人にも抜かれ、6位でのゴール。走り終わった直後は出し切った様子でトラックに倒れ込んだ。

苦しい時期を抜けて、3年目の大舞台

松永は専大松戸高校2年生の時に千葉県高校総体男子5000mで、得意のスピードを生かして優勝。この時の2位は八千代松陰高校の石井一希(現・順天堂大3年)、3位は流通経大柏高校の中村唯翔(現・青山学院大4年)、4位は石井と同じく八千代松陰の佐藤一世(現・青山学院大3年)といずれも現在、学生駅伝で活躍しているメンバーだった。同年の南関東インターハイでは5000mで7位。しかしその後はオーバートレーニングによって体調を崩してしまい、法政大に入学してからもレースに出られない時期が長く続いた。一時期は10分や20分程度のジョグもできないほどだったという。

緊張もあったが、楽しさを感じながら走れた

そこから徐々に復帰し、昨年7月の法政大学対明治大学定期陸上競技大会の5000mで大学初レース。11月のMARCH対抗戦にも出場し、徐々に調子を戻してきていた。とはいえいまだ学生3大駅伝の出場はなし。今回は駅伝主将の内田隼太(4年、法政二)をケガで欠く中、法政大の代表として2種目に出場した。

「10000mではミスをしてしまったけど、刺激が入ったのか5000mの予選ではいい形で走れて、そのイメージで決勝も走れました」と振り返る。しかし、決勝に出場した選手の中で自己ベストが一番遅い(14分06秒77)ということもあり、「いけるはずないだろうな」という思いと緊張もあったと話す。だがそれ以上に、見慣れた千葉県の仲間と一緒に戦えて楽しい、という気持ちもあった。

駅伝でも活躍できるチームの主力に

大会にあまり出ていないので自信を持てない。それもあって集団の後ろの方について走ったことで、松永は終盤まで余裕を残していた。ラスト2周となったタイミングで余裕があったのでしかけた。最後の1周はもたないだろうと考えてはいたが、「何もしないよりは何かしらしかけた方がいい」という気持ちで前に出た。

鐘が鳴ってからはほぼ余力がなく、ラスト300mぐらいから電光掲示板で三浦が後ろからきているのは確認していたが、「あまりにも相手の方がスピードが速くて、ついていけませんでした」と苦笑い。三浦の前に出た時は会場が沸いていましたが……と話を向けられると笑い、「すごく楽しかったです。長い間大会に出られていなかったので、それもあってもっと楽しくなったというか。すごくいいレースだったと思います」と充実した表情を見せた。

これからは法政大の主力として。さらに大きく飛躍できるか

法政大は新型コロナウイルスの影響で、3月の学生ハーフマラソンを全員が欠場した。そのため、松永はまだハーフの記録を持っていない。だが坪田智夫監督からの期待は大きく、箱根駅伝の2区候補だとも声をかけられているという。松永自身も2区を走りたいという気持ちはある。「でもまだまだ力不足だと思うので、これからもっと練習を積んで、2区を走れるような、主力の走りができるような練習をしたいと思います」。そして千葉県でともに戦ってきた石井や佐藤にも勝ちたい。「駅伝で区間上位で戦っていけるような体をもっと作っていかないとな、と思います」

結果を残し、大きな自信を得た松永。法政大学は年始の箱根駅伝で10位となり、3年ぶりのシード権を獲得した。上り調子のチームに現れた頼もしい戦力は、オレンジエクスプレスを加速させる原動力となるか。

in Additionあわせて読みたい