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「今季は危ない」の下馬評覆すV 田臥勇太が誇ったチームの成長

第4クオーター、シュートを決め叫ぶ宇都宮ブレックスの6番比江島(撮影・井手さゆり)

 プロバスケットボールBリーグのチャンピオンシップ(CS)は29日、2戦先勝制の決勝第2戦が東京体育館であり、初代王者の宇都宮ブレックス(ワイルドカード1位)が、初優勝をめざす琉球ゴールデンキングス(西地区1位)を82―75で下し、2連勝で5季ぶり2度目の優勝を果たした。

宇都宮・比江島慎 青学大時代に唯一やり残したこと、胸に刺さった長谷川監督の言葉

 CSの最優秀選手には比江島慎(宇都宮)、決勝で最も印象的なプレーをした選手に贈られる日本生命ファイナル賞には鵤(いかるが)誠司(同)が選ばれた。

■自己犠牲いとわぬプレー

 前半に最大13点のリードを奪った宇都宮ブレックスが追い込まれていた。第4クオーター(Q)開始時にはわずか1点差。ここから、チームが真価を発揮する。

 「攻撃で相手の弱点をつくことが自分の役割」という司令塔の鵤(いかるが)誠司は、エース比江島慎にボールを集めつつも、相手守備のほころびを見逃さず、他の選手の得点をアシストした。「思い切りよくシュートを打つこと」を念頭に置く渡辺裕規は、苦しい場面で3点シュートを決めた。それぞれが自分の役割に徹し、最後までもつれた接戦をものにした。

 記録に残る働きだけではない。

 得点源でこの日も両チーム最多となる24得点をあげた比江島は言う。「仲間が僕につく守備を邪魔したり、僕のためにスペースを空けてくれたり。最後に決めきるのが僕の役割というだけ」。自己犠牲をいとわない宇都宮のスタイルを選手みんなが大一番でも貫いた。

 昨季は準優勝したものの、その後に複数の中心選手がチームを去った。今季は開幕でいきなり2連敗した。安斎竜三監督は「いろんなところから『今季は危ない』と言われた」と振り返る。

 「挑戦の年」と開き直った。新たな戦術を試し、プレーの選択肢が増えた。加入4季目の比江島がようやくチームになじみ、テーブス海ら若手も台頭。ワイルドカードで滑り込んだチャンピオンシップ(CS)で、優勝候補の千葉ジェッツ(千葉J)、川崎ブレイブサンダースを次々と破り、決勝も含めて無傷の6連勝で頂点まで駆け上がった。

 旧リーグ時代から在籍する田臥勇太は「やればやるほど一つになっていく感覚があった。最高のチームになれたと思う」と誇った。

■琉球、雪辱誓う

 初の決勝を戦った琉球ゴールデンキングスは、2連敗で頂点には届かなかった。この日も、前日の第1戦でも第4Qの勝負どころで差をつけられた。桶谷大監督は「決勝の舞台で何度も戦っている宇都宮との経験の差を感じた」。ガードの岸本隆一は試合後、相手エースの比江島慎や安斎竜三監督のもとに歩み寄った。「すごく強かった」とたたえ、小さい声で付け加えたという。「絶対にやり返す」。来季のリベンジを誓った。

=朝日新聞デジタル2022年05月30日掲載

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