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専修大が18年ぶりトーナメントV 佐々木優一監督がどん底を味わいながら貫いたもの

決勝で白鷗大を破り、専修大が18年ぶり2度目の優勝を果たした(撮影・すべて松永早弥香)

第71回関東大学バスケットボール選手権大会 決勝

5月8日@ 大田区総合体育館(東京)
専修大学 71-55 白鷗大学
専修大学が18年ぶり2度目の優勝

5月8日、関東大学選手権(トーナメント)の決勝が行われ、71-55で専修大学が白鷗大学を破り、18年ぶり2度目の優勝を果たした。その18年前は主将としてチームを支え、2014年にアシスタントコーチから監督に就任した佐々木優一さんは、監督として初のタイトルを手にした。学生たちからの胴上げに「飛ばし過ぎないでくれよ」と照れ隠し。「どん底からはい上がってきて、みんなのおかげで優勝できたので、やってきて良かったと心から思いました」と笑みを浮かべた。

ディフェンスを徹底した我慢比べ

試合前、専修大も白鷗大もフォーカスしていたのはディフェンス、特にリバウンドだった。相手にシュートチャンスを与えないようプレッシャーをかけ続け、第1クオーター(Q)は14-16で白鷗大がリード。第2Q開始後、白鷗大は嘉数啓希(かかず、3年、豊見城)の3Pシュートも決まり、14-23で引き離す。すかさず専修大がタイムアウトをとったが、試合再開後の得点も白鷗大だった。インサイドではクベマ・ジョセフ・スティーブ(専修大3年、福岡第一)とジョエル・モンガ(白鷗大1年、別府溝部学園)が競り合い、スティーブがリバウンドで流れを引き寄せる。専修大は久原大弥(4年、大分舞鶴)のゲームメイクで得点を重ね、26-29で試合を折り返した。

ここぞという時に浅野が3Pシュートを決め、チームに勢いをもたらした

第3Qでは専修大が先制点をあげ、佐藤寛太(2年、金沢工)の3Pシュートで逆転。白鷗大も脇真大(3年、岡山商科大附)のドライブで追い上げたが、専修大の米山ジャバ偉生(3年、東海大諏訪)や浅野ケニー(2年、洛南)が立て続けに3Pシュートを決める。第3Q終了間際には赤嶺有奎(3年、豊見城)も3Pシュートを決め、48-38と専修大が10点差をつけた。専修大は第4Qでも積極的にシュートを打ち、白鷗大はオールコートプレスでプレッシャーをかけるも、浅野や米山の3Pシュートで点差が開く。最後は71-55で勝負がついた。

オフェンスは自由に、ディフェンスは組織化を

ロースコアの試合でどれだけ我慢できるか。“能力者集団”と称されてきたこれまでの専修大とは違った戦い方だった。だが、佐々木監督が今の新チームになってから「個よりもチーム力」という意識でチームを導き、指導者として「ディフェンスを組織化」を貫いた先で手にした優勝だった。

佐々木監督が就任した14年の成績は、トーナメントが1回戦敗退、新人戦が2回戦敗退、リーグ戦が1部最下位で入れ替え戦の3戦目で残留、インカレが2回戦敗退だった。「散々な結果で、自分のバスケットがなんなのか分からず、手探りの状態でした」と振り返る。年を重ねる中で専修大は能力者が際だったオフェンスのチームという評価がされるようになったが、それだけでは優勝は絶対できないという意識が佐々木監督にあったという。

スティーブ(右)はインサイドの要として攻守ともに活躍し、最優秀選手賞を獲得した

「背が高いから、高く跳べるからリバウンドがとれるわけではなく、とりにいく行為があるからリバウンドがとれる。ルーズボールをどれだけ自分たちのものにしてオフェンスにつなげるか。きっちりとルールを設けてディフェンスを組織化することが必要だと思いました。オフェンスは楽しく、見ている人にも楽しんでもらえるもの。だからオフェンスは自由に。でもディフェンスは組織化してルールをつくってやってきました」

18年には14年ぶりにインカレ決勝進出を果たし、準優勝。翌19年も準優勝だった。目指してきたものが少しずつ形になっていることを佐々木監督も実感していたが、あと一歩届かない状況に自問自答の日々を過ごしていたという。

真面目な4年生たちの新しい色

今年3月に主力を担ってきた選手が卒業。まだ経験が浅いチームを強くするにはどれだけチーム力で戦えるかが絶対に必要な部分だと佐々木監督は感じ、その思いを日々の練習から伝えてきた。

鈴木(右)は喜志永の思いも引き受け、コート上で選手たちを支えてきた

主将の喜志永修斗(きしなが、4年、豊浦)は現在、リーグ戦での復帰を見据えてリハビリ中ということもあり、“ダブルキャプテン”として鈴木悠斗(4年、桐光学園)も主将としてコート上でチームを支えている。喜志永は選手と佐々木監督の間をつなぎ、選手とコミュニケーションをとってアドバイスをし、佐々木監督には選手の情報を補ってきた。

しかし今大会の東京経済大学との第1試合では、まだ“自分たちのバスケ”ができていないことを選手たち自身が痛感した。全員が集まってミーティングを開き、一人ひとりの思いを聞いた。その時も「チームにまだなっていないからチームになっていこう」と方向性を示してくれたのが、4年生のケイタ・シェイク・ブーバカー(日体大柏)だったという。このミーティングを経てチームは一つになり、試合を重ねる中でより強固なチームへとなっていった。

佐々木監督として、初めての胴上げとなった

今年の4年生たちに対し、佐々木監督は「4年生らしさの自覚が芽生え、真面目に取り組んでいる学年の色が出てきて、今までにないような色かもしれないけど、これが今年の新しいスタイルなのかな」と言った。ここからさらにチームを磨いていき、佐々木監督が専修大の2年生だった02年以来となるインカレ優勝を目指す。

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