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中央大が東海大を倒してベスト8へ、渡部琉「チームを勝たせられる選手」になる

渡部(中央)は27得点をあげ、チームを勝利に導いた(撮影・すべて小沼克年)

第71回関東大学選手権大会 5回戦

5月5日@大田区総合体育館(東京)
中央大学 72-61 東海大学

中央大学が迎えた最初の山場。前半で手にした21点の大量リードは、みるみるうちに減っていった。牙をむき襲いかかる東海大学。試合時間が残り5分台に差しかかった時、ついに5点差まで迫られた。

だが、ここで流れを断ち切ったのは中央大のエース・渡部琉(りゅう、4年、正智深谷)。ファウルを受けながらも難なくシュートをねじ込み、左手をグッと握った。前半から14得点を挙げ、終わってみればゲームハイとなる27得点で期待に応えた。それでも渡部は言う、「今年は数字だけにこだわらず、精神的な部分でもチームを勝たせられる選手になりたい」

大学界に現れたサウスポーシューター

正智深谷高校(埼玉)でエースを張っていた渡部が大学へ進学した時、中央大はまだ2部リーグに所属していた。その中でも渡部は1年生の頃からプレータイムを勝ち取り、リーグ戦では20得点を超える試合もあるなど、既に戦力の一人として活躍していた。

身長192cmのサウスポー。オフェンスのバリエーションも多く、チームメートたちは「どこからでも点が取れる」「嗅覚がすごい」「クレバー」といった言葉で渡部のすごさを語る。特にアウトサイドからのシュートに関しては本人も自信を持っていて、試合前のシューティングでは3ポイントラインから1.5m以上離れた位置からも華麗にネットを揺らす。既に特別指定選手として2年連続でプロの舞台を経験していることも、ポテンシャルの高さを物語る証だ。

渡部は特別指定選手として、秋田ノーザンハピネッツと広島ドラゴンフライズでプレーをしている

そんな彼が大学界で名を馳(は)せるようになったのは、1部に昇格した2年目。この年に行われたオータムカップで筑波大学や早稲田大学相手にも持ち前の得点能力を示したことで、周囲の視線を集めた。

「個人的にも大学で通用する手応えがありました」と、渡部は2年目を振り返る。しかしそれは、自分一人の力ではなく、当時の4年生の存在が大きかったと明かす。「僕が2年生の時に樋口雄気さんというキャプテンがいて、その方がチームの練習メニューや戦術、個々の役割など、チームとしての土台を作ってくれました」

誰よりも点を取り、チームのエースになる。それが渡部に与えられた役割だった。

関東得点王のその先へ

樋口らが引退した翌2021年からは、4年生だった町井丈太、清水宏記らが中心となってチーム作りを引き継ぎ、リーグ戦では6勝5敗で勝ち越し7位の成績を収めた。そして、名実ともにエースとなった背番号21は、関東1部の点取り屋たちを押しのけ得点王を受賞した。

「得点の部分は意識していましたし、チームとしても任されていた部分だったので率直に嬉(うれ)しいです」と、渡部も確かな手応えをつかんで臨んだインカレはベスト8進出を果たしたが、準々決勝の東海大戦では65-69。惜しくも4点届かず、チーム、そして渡部も涙でシーズンを終えた。

「戦術的な面でも精神的にも、4年生がしっかりと責任感を持って引っ張ってくれていました。今年はその穴を自分たちが埋めなければいけないですし、それを超えることが自分たちの目標です」

チームを勝たせるためにも、渡部(左)は仲間への目配りを大切にしている

「確実にステップアップした1年」を経て、渡部は今シーズン最初の公式戦に姿を現し、そう述べた。「大学バスケ界で一番点を取る」。この目標は変わらずに持ち続けている。けれど、今の渡部はたとえ自分が点を取れなくても「チームを勝たせられる選手」になれればそれでいいとも話した。

バトンを受け継ぎ、目指すは中央大の柱

今回のトーナメントでも、それを体現しようとしている渡部の姿がある。今大会の中央大は渡部と吉田崇紘(土浦日大)の2人が4年生として先発を務め、全体的に見ても2、3年生が多くメンバーに名を連ねる。その中で渡部は積極的に周りとコミュニティケーションを図り、試合中はボールを保持していない時でも味方に指示を出し、リバウンドにも体を投げ出して飛び込む。東海大戦でファウルトラブルに陥り、一時コートを去った際も、ベンチから声を張ってチームを鼓舞し続けていた。

「去年までは点を取ることが大きな役割でしたけど、今年はそれよりもチームを勝たせることが第一優先です。今は相手にマークされた時に、そこで終わりではなく次のアクションを起こせるように意識していますし、精神的な面でもチームを支えられるような選手に成長したいなと思います」

昨シーズンの関東得点王はラストイヤーの今シーズン、チームを勝たせることが第一優先に掲げた

渡部はエースという現状に満足せず、むしろそれを危機感とも捉えてさらなる進化を誓う。大学ラストイヤーは、これまでとはまた違った輝きを放ってくれそうだ。

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