陸上・駅伝

駒澤大・佐藤圭汰「不甲斐ないレース」、初の日本選手権は17位 秋に躍進誓う

佐藤は5000mで世界陸上を目指したが、思うような走りができなかった(撮影・すべて藤井みさ)

1500m、3000m、5000mの高校記録、5000mのU20記録保持者である駒澤大学のスーパールーキー佐藤圭汰(洛南)。6月9日に開幕した日本選手権では5000mに照準を合わせ、7月にアメリカ・オレゴンで開催される世界陸上代表内定の条件である「日本選手権での表彰台」を目指していた。結果は13分55秒08での17位。レース後は疲労困憊(こんぱい)といった状態で取材に応えた。

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1500mから5000mに切り替え世界を目指す

佐藤はシーズン当初、1500mで世界陸上を狙おうと考えていた。高校時代は初めから飛ばしてラストまでに周りを引き離すスタイルで結果を残してきた。しかし3月29日のTHE MIDDLE、4月9日の金栗記念ではラスト300mで他の選手に差され、勝ち切れず。「それまでのやり方では通用しない」と考え、大八木弘明監督とも相談し、ラストで仕掛けるスタイルを模索していた。

4月24日の兵庫リレーカーニバルに出場した際には前半で足をためてラストで切り替えるレース運びを試し、トップとは1秒以内の5位。一定の手応えを感じるとともに、「日本記録(3分35秒42)を更新して世界陸上に出場したい」と語っていた。

しかし、続く5月4日のゴールデンゲームズinのべおかでは5000mに出場し、組15位ながら13分22秒91をマーク。中央大学の吉井大和(3年、仙台育英)が持っていた従来のU20日本記録(13分25秒87)を更新した。この時、レースが終わってからも「まだいける」という感覚があったという。「1500(での出場)も狙ってたんですけど、やっぱり1500で勝つためにはラスト勝負の力が必要になってきて、その力はまだ自分にはないので」

自信を持ってスタートラインに立った

スピード持久力を磨いて5000mでの出場を目指そうと考え、日本選手権を迎えた。13分10秒台、そして世界陸上出場の内定条件である表彰台(3位以内)を取る。大舞台にも緊張はなく、「やってやるぞ」という気持ちで佐藤はスタートラインに立った。

徐々にペースダウンし苦しいレースに

レースが始まるとオープン参加のギデオン・ロノ(GMOインターネットグループ)、キサイサ・レダマ(カネボウ)が集団を引っ張り、佐藤は積極的にその後ろについた。1000mの通過は2分41秒。その次の1000mも2分42秒とペースを保って進んだが、佐藤は2000mの時点で徐々にペースダウンし始め、2400m過ぎには集団の中盤へと後退した。

その後も2分40秒台で進むトップ集団には追いつけず、4000mを過ぎると苦しそうに顔をゆがめながら走った。優勝した遠藤日向(住友電工、13分22秒13)からは30秒以上遅れる13分55秒08、17位でのゴール。走り終わった後はトラックに座り込む場面もあった。

序盤は積極的に先頭付近でレースを進めた(181が佐藤)

「しっかり3位以内を狙って、いけるところまでいこうと思っていたんですけど……思った以上に最初から体が全然動かなくて、余裕度も1000mぐらいからなくなっていて、最後の方もペースダウンする一方で……不甲斐(ふがい)ないレースをしてしまったなと思います」

走り始めると体に変な力が入っていて、リラックスできなかったと振り返る。

この1週間ほど前から試合に向けての調整に入っていたが、そこではいい感触をつかめていた。今までにないぐらいいいタイムで練習を上げられた時もあり、「言い訳なんですけど、それが知らず知らずのうちに疲労を溜める原因になっていたのかもしれない」と話す。19時30分のレーススタート時点でも25度近い気温だったこともあり、暑さから軽い脱水症状のようにもなってしまっていたという。

ラスト1000mは苦しい表情になった

「不甲斐ない」「申し訳ない」

駒澤大のエースである田澤廉(4年、青森山田)は昨年12月の日体大記録会10000mで日本歴代2位となる27分23秒44をマークし、世界陸上の参加標準記録(27分28秒00)を突破している。5月7日の日本選手権10000mでは10位だったものの、国内では現状、田澤以外に標準記録突破者がいないため、世界陸上代表内定への可能性を残している。レース前、佐藤は田澤から「一緒にオレゴンに行こう」と連絡をもらっていた。

また、ともに出場した篠原倖太朗(2年、富里)にも「3位以内を目標にしていきます」と話してレースに臨んだ。その篠原は13分46秒23で13位と、佐藤を上回る成績を残した。

レース後、篠原(左)と互いをねぎらった

「本当に不甲斐ないレースをしてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです」。短い取材時間中、佐藤からは「不甲斐ない」「申し訳ない」という言葉が何度も聞かれた。本来はここで3位以内に入り、22日のホクレンディスタンス20周年記念大会で記録を狙うと考えていたが、それは白紙となった。今後については大八木監督と相談して決めたいと話す。「まずは疲労をしっかり抜いていって、次は夏にしっかり練習を積んで、秋以降にはしっかり調子良く戻ってこられるようにしたいです」

今回は思うような結果を出せなかった佐藤だが、彼の存在がチームに大きな影響を与えていることは間違いない。主将の山野力(4年、宇部鴻城)や副将の円健介(4年、倉敷)ら上級生も、佐藤の存在が刺激になっていると話していた。そんな先輩たちの思いに触れ、佐藤は「今までは田澤さんが一番というか、別格という感じで練習をされていたんですけど、自分は本当に田澤さんを目標にして食らいついていこうという思いがあるので、1年生が底上げをしているというのは上級生に刺激になるのかなと思います」と、自らの与える影響についても自覚を持っているようだ。

まだ18歳、大きな可能性を秘めたルーキー。悔しさを糧にして取り組む今後の挑戦と活躍からも目が離せない。

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