駒澤大・篠原倖太朗、個人選手権5000mで笑顔のV 駅伝でも更なるレベルアップを
2022日本学生陸上競技個人選手権大会
4月15~17日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
篠原倖太朗(駒澤大2年)
10000m 3位 28分43秒03
5000m 優勝 13分47秒90
4月17日の学生個人選手権最終日。男子5000mで駒澤大学の篠原倖太朗(2年、富里)がラストスパート勝負を制して優勝を果たした。2日前の男子10000mで3位だった悔しさを晴らし、レース後には笑顔を見せた。
10000mは「勝ちきれなかった」悔しさを糧に
個人選手権1日目に行われた10000mにも出場した篠原。この時は「はじめは後ろの方で走って、最後自分のスピードを生かして勝つ」と考えていた。しかし序盤、位置取りが集団の後方すぎたこと、また大学に入って初めての10000mのレースで勝手がわからなかったこともあり、プラン通りにはいかなかった。
中盤で独走態勢となった創価大学の葛西潤(4年、関西創価)に追いつけず、同じく前に出た創価大の嶋津雄大(4年、若葉総合)に次ぐ3位。「自信がなくて、途中びびってしまったところもありました。上げなきゃいけないところで上げられないなど、自信とスタミナが足りないと思います」と反省点を口にした。
篠原は昨年の日本インカレ5000mに出場し、ラストの1周でトップに立ったが、青山学院大学の近藤幸太郎(当時3年、豊川工)にスパートで抜かれて2位となった。「勝ちきれない」ことはずっと課題にしており、10000mのレース後も悔しさをにじませた。「5000mも走るので、そこでは勝てるようにしたいと思います」と話し、中1日で5000mのレースを迎えた。
我慢して我慢して、最後のスピード勝負を制す
5000mに出場したのは篠原を含めて7人と少人数。スタートすると日本体育大学の藤本珠輝(4年、西脇工)が先頭に立ち、7人は1つの集団となって進んだ。篠原ははじめ4番手につけていたが、2600m手前あたりで藤本が徐々に後方に下がると、2番手につける。藤本に代わり青山学院大の山内健登(3年、樟南)が先頭へ。残り3周で山内に代わり青山学院大の若林宏樹(2年、洛南)が先頭になり、残り700mで中央大学の中野翔太(3年、世羅)が先頭に立っても、篠原は2番手をキープし続けた。
ラスト1周の鐘が鳴り、中野、篠原、青山学院大の鶴川正也(2年、九州学院)の3人が抜け出してスパート。ラスト300mで初めて先頭に立つと、追いつきそうになる鶴川をかわし、両手を広げて笑顔でゴールに飛び込んだ。ゴール後は腕を突き上げて「やった!」と大きな声をあげた。
篠原のレースプランは「最初から積極的にいって、最後絶対に勝てると思ったところで仕掛ける」。10000mのレースの反省を生かし、残り800mぐらいで出たいと思った時も我慢して、我慢して、最後に力を爆発させた。「途中ペースが落ちたところもあったので、タイムより着順を狙っていこうと切り替えました」。最後の鶴川とのスパートでは、同学年に負けたくないとの気持ちもあったと話す。大学に入って初のタイトルに「気持ちいいですね。よかったです」と笑顔を見せた。
偉大な先輩の背中を追って
篠原は入学時のタイムは14分30秒台だったが、そこからいきなり頭角をあらわし、6月に13分台に突入。その後5000mを走るたびに自己ベストを更新してきた。10月の出雲駅伝ではルーキーながらスターターの1区を任されたが、流れに乗り切れずトップと16秒差の区間8位だった。その後の全日本大学駅伝はけがで回避。箱根駅伝もエントリーメンバーに名を連ね、6区にエントリーされながらも、当日変更で出走とはならなかった。
特に全日本大学駅伝では、同級生の佐藤条二(2年、市立船橋)が1区区間賞と快走。チームは2連覇で14度目の優勝をつかんだ。それまで篠原は、「自分が学年を引っ張っている」という思いが強かった。同級生が活躍し、自分がいない中での優勝に、嬉(うれ)しい反面素直に喜べていないところもあったという。箱根駅伝でも走れず、その悔しさを糧に意識をレベルアップしてきた。
チーム内に日本トップレベルの実力を持つ田澤廉(4年、青森山田)がいることも大きい。週1回ほど練習をともにしており、先日初めてポイント練習を一緒に走って「初めてたれました」と話す。「レベルが違います」と苦笑するが、トップレベルとはどういうものかを身をもって常に体感できることを有利ととらえ、自らの成長につなげている。2月の実業団ハーフマラソンでは日本人学生歴代5位の1時間1分01秒、その2週間後の福岡クロカンでは7位入賞。着実に「強さ」を身につけ、今回ついに「勝ち切る」ことができた。
このあとは5月4日のゴールデンゲームズinのべおかでの5000mへの出場を考えている。ここでは「しっかりタイムを狙っていきたい」と篠原。スピードとスタミナの両立のため、今年は10000mにも力を入れ、できれば27分台を出したいとも言う。そしてその先には、昨シーズン悔しい思いをした駅伝での活躍。「3大駅伝をしっかり走って、優勝に貢献していきたいです」
4月からは1500m、3000m、5000mの高校記録を持つスーパールーキー、佐藤圭汰(洛南)が入学。強力な後輩の存在に「やっぱり負けず嫌いなところがあるので、後輩には負けてられないです。より一層、練習にも力が入っています」。出る大会ごとに、しっかりとインパクトを残していきたいと話した篠原。更なる飛躍にも期待の持てるレースとなった。