野球

青学大の左腕・児玉悠紀 2年目の壁を乗り越え、コントロールを磨き、プロへの切符を

児玉はどんな状況でもポーカーフェイスを貫く

春季リーグの12試合中5試合で先発のマウンドに上がり、青山学院大学の投手陣を支えた左腕・児玉悠紀(2年、日大三)。児玉の活躍なしには青山学院大の1部残留は語れないだろう。今回は、そんな彼にスポットを当ててみたいと思う。

日大三高の背番号1、青学大へ進学

伸びのあるストレートと切れ味抜群のスライダーが持ち味。日大三(東京)のプロ注目のエースとして児玉は2020年夏、甲子園を待ちわびていたが、新型コロナウイルスの影響で大会は中止となった。その悔しさを胸に大学での活躍を近い、昨春、青山学院大へと進んだ。

与えられた背番号は21

児玉のリーグ戦初登板となったのは、昨年の秋季リーグ。相手は春季リーグの覇者亜細亜大学だった。この試合は、青山学院大の先発・森圭名(現三菱重工East)が2回4失点と捕まりノックアウト。迎えた三回、児玉は闘志を秘め、神宮のマウンドに上がった。

6回を投げ、6奪三振、許したヒットはわずかに3本と圧巻のピッチングを披露。本人も「正直楽しもうと思っていた。4点差で負けていたので、割り切っていけた」と、強心臓ぶりを見せた。その後も3試合に登板し、勝ちこそつかなかったものの、防御率1.93とルーキーとは思えない堂々たるピッチングだった。

迎えた2年目、立ちはだかる大きな壁

偉大な先輩たちが卒業し、飛躍を胸に2年目のシーズンとなった今年、開幕戦は東都大学野球史上初の大分県で迎えた。児玉は日本大学との開幕第2戦目の先発マウンドを託された。宮崎県出身の児玉にとっては慣れ親しんだ九州の地。日大打線を8回1失点、8奪三振で勝ち投手となった。大学ではリーグ戦初勝利に、幸先のいいスタートを切った。

しかし、強打者がひしめき合っている東都野球1部リーグ。そう簡単には思い通りのピッチングはさせてもらえない。2戦目の登板相手は、プロ注目の森下翔太(4年、東海大相模)や北村恵吾(4年、近江)といった恐怖のクリーンアップ陣を擁する中央大学。そんな中央大打線に、児玉は捕まった。先発のマウンドに上がったものの打ち込まれ、1回2/3で6失点を喫しマウンドを後にした。

「自分の持ち味であるテンポ、リズムで投げる本来の投球ができなく、不甲斐(ふがい)ないピッチングをした」。後の取材で児玉はそう口にした。テンポの良さが生命線の一つでもある児玉だが、この試合ではそれを生かせなかった。中1日で第3戦の中央大戦にも先発するも、5回持たず降板。ここでも、児玉本来のピッチングとは程遠かった。

キャッチャーの青木颯汰(左、3年、聖望学園)は同じコミュニティ人間科学部コミュニティ人間科学科で学ぶ仲間だ

しかし、児玉もこのまま黙っているわけにはいかない。第2戦の駒澤大学戦、児玉は九回途中まで132球の熱闘で、完投とはならなかったものの、駒澤大打線を零封。今シーズン2勝目を手にした。「真っすぐで押せたことが良かった。内野の人たちが声をかけてくれたので後押しされた」と児玉は振り返り、「完封のことは考えていなかった。目の前のバッターを打ち取ることだけを考えていた」と明かした。この春季リーグは7試合に登板し、2勝0敗、防御率2.93、クオリティースタート(QS)3回という成績だった。

リーグ優勝、その先にプロを見据え

児玉はもちろん、青山学院大学野球部自体、2006年から実に16年、1部優勝から遠ざかっている。今シーズンは小田康一郎(1年、中京)や藤原夏暉(1年、大阪桐蔭)らをはじめとする、強力な新戦力を迎え入れて臨んだリーグ戦だったが、激闘の末、最終的には中央大や日大とともに同率最下位に沈み、後に史上初の2カードとなる最下位決定戦にまわった。その結果、青山学院大は4位で春季リーグを終えたものの、苦しい戦いだったことに違いない。

秋季リーグ制覇に向け、児玉自身もチームも、さらなるステップアップに期待する。そんな児玉自身、1年生の時と比べて「配球の面で、キャッチャーに任せきりではなく、自分で投球パターンを考えて投げるようになった」と言い、心身ともに成長した一面も見せた。

プロを目指し、今日も神宮のマウンドに上がる

「やるからにはプロを目指す」

そう答えた児玉。自慢の精密機械のようなコントロールに磨きをかけ、プロへの切符をつかみ取る。

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