東洋大学・ウーストハイゼン 南ア出身、身長211cmのロックがかなえた「夢」
7月3日、秩父宮ラグビー場(東京)で、3年ぶりに関東大学ラグビーオールスターゲームが開催された。メインゲームとなった「リーグ戦選抜―対抗戦選抜」で、リーグ戦選抜唯一の1年生として選ばれたのが、今季1993年以来、29年ぶりに昇格した東洋大学のLO(ロック)、20歳のジュアン・ウーストハイゼンだ。
秩父宮に立つと、スタンドから驚きの声
南アフリカ・プレトニア出身のウーストハイゼンは身長211cm(大学の登録では212cm)、体重130kgの巨漢で、日本国内のクラブに登録した選手としては史上最高身長だろう。春季大会から早速3試合に出場し、その活躍が認められて選出された。リーグ戦選抜を率いた東海大学の木村季由監督も「でかいですよね。異次元の選手。対戦前に一度見てみたかった(笑)」と話した。
後半0分、ウーストハイゼンが初めて秩父宮ラグビー場のグラウンドに立つと、スタンドから「ウォー!」という驚きの声が聞こえてきた。「日本に来て日も浅いですし、オールスターは初めてで、予想外(の選出)でしたので非常にワクワクしました!」
ウーストハイゼンは身長を生かしたラインアウトだけでなく、ボールキャリーやラックで相手をはがすプレーなどで気を吐き、「いいタックルやボールキャリーがいくつかできたと思います!」と声を弾ませた。
試合は38-42で敗れたが、木村監督はウーストハイゼンについて「日本に来たばっかりだが、コミュニケーションを取って、一生懸命取り組んでいる。体幹が締まってくれば楽しみな選手ですね」と、今後の活躍に期待を寄せた。
東洋ではスポーツサイエンスを専攻
4月に来日して、4カ月が経った。好きな食べ物はピザやTボーンステーキだが、うどんや唐揚げといった日本食もお気に入りとなった。東洋大では健康スポーツ科学部でスポーツサイエンスを専攻。寮ではベッドに入りきらなかったため、大きなマットレスの上で寝ているという。
「身長はもう止まりましたね。日本のラグビーはスピードがありますね。フィジカルも強いです。生活はだいぶ慣れましたけど、言葉が全然話せないので、日本語の勉強をしています」
大柄な選手がそろうことで知られ、2019年ラグビーワールドカップ日本大会で優勝した「スプリングボクス」こと南アフリカ代表でも、身長210cm代の選手はいない。では、なぜ来日を選んだのか。ウーストハイゼンは「海外でラグビーと勉強をすることがずっと夢だった」という。強豪ブルズのアカデミーでプレーしていたが、高校の最終学年を終えて南アフリカのプロチームと契約がうまくまとまらず、代理人が紹介してくれたのが日本だった。
プロゴルファーを目指した可能性も
「最初は迷いましたが、海外に行くのは当初から希望していたことでした。日本はラグビーワールドカップで、南アフリカ代表と日本代表がいい試合をしていた印象があって、いいチャンスだと思うようになりました」。ただコロナ禍のため、高校卒業後すぐに日本に来ることはできず、クラブチームでプレーしながら、1年待ってからの入学となった。
身長193cmの父、伯父もプロ選手にならなかったが、ラグビーをやっていた。身長180cmの母はネットボール経験者。自身は4歳の頃からラグビーをやっており、スプリングボクスに入ることが憧れだったという。ただゴルフにも同時に精を出していたため、「ラグビー選手にならければ、プロゴルファーを目指していたかもしれません」と話す。
将来に関して聞くと、「できれば日本でプロのラグビー選手になりたい。ただ南アフリカのチームから声がかかったら帰りたいという気持ちもあるので、非常に悩みます。まずは日本で4年間、勉強するので、今の時点ではわからないですね」と明言を避けた。
1部残留に向け、大きな存在に
現在、ワールドラグビーのルールでは、日本に5年間在住すれば日本代表の資格を得ることができる。 ウーストハイゼンは大学を卒業し、もう1年、日本のリーグワンでプレーすれば、桜のジャージーへの道も開ける。大学時代にフィジカルをつけて、より力強いプレーができるようになれば、きっと日本のチームも放っておかないはずだ。
東洋大は9月11日、昨季王者の東海大戦からリーグ戦がスタートする。ウーストハイゼンは「タフなリーグになると思いますが、チャレンジしていい経験にしたい」と腕を撫(ぶ)した。身長211cmのロックは1部残留を目指す東洋大のFW陣にとって大きな、大きな存在となるだろう。