東海大学の柴田凌光、悲願の初優勝へ大型SHが体を張って攻守に貢献
悲願の大学ラグビー日本一を目指す東海大学で、強力FWと決定力あるバックスをつないでいるのがSH(スクラムハーフ)柴田凌光(りょうと、4年、秋田工)だ。身長177cmの大型SHは関東リーグ戦4連覇を果たしたチームの防御でも大きく貢献してきた。1月2日の全国大学選手権準決勝(12:25@東京・国立競技場)では5大会ぶりの決勝進出をかけ、幼なじみもいる明治大学と対戦する。
経験踏み判断力上がる
今季から先発起用されている柴田はFB(フルバック)野口幹太(4年、東京)とともにバックスリーダーを務めており、全員が同じ成長する方向へ向かうという今季のスローガン「ONE WAY」を目指してきた。例えば才能あふれる2年生司令塔の武藤ゆらぎ(東海大大阪仰星)に対しては「SHとして手助けできれば」と不安を残すディフェンス面をカバーし、学年に関係なく個々の選手が持てる力を出せるよう心を砕いてきた。
キック力に磨きをかけ、自陣ゴール前からの陣地立て直しの役割に加え、出場機会が増えたことで判断力がよくなった。「自分のパスや攻撃からトライが生まれている部分もある」と言い、準々決勝の慶應義塾大戦の先制トライはWTB(ウィング)林隆広(4年、石見智翠館)への長いパスが効果的だった。
優勝校から一人で3トライ
父の久寛さんは現役選手の時はFW第三列で活躍し、秋田工高や筑波大でキャプテンだった。地元に戻って教員になり、秋田工高の監督を務めた経験もある。柴田自身は直接教わったことはないが、「人数が多いチームでみんなを引っ張ってきたと聞いた。自分にはないものを持っていて、『人を動かす』というところを尊敬しています」と言う。ちなみに弟の竜成(りゅうせい)は、69回目の全国高校大会出場となった秋田工の今年度のキャプテンだった。
柴田は6歳から秋田市エコー少年ラグビークラブで楕円(だえん)球に触れた。その時から将軍野中、秋田工高と一緒にラグビーをやってきたのが、明大の身長192cmの大型CTB(センター)児玉樹(いつき)だった。幼なじみの逸材は「もともと頭一つ抜けていて、そのままどんどんでっかくなっていった」そうだ。
4年前の元日、児玉主将と一緒に出た第97回全国高校大会3回戦(2018年)では優勝する東海大仰星(大阪)と27-27の激闘を演じた。秋田工は6-17と11点を追って折り返したが、柴田が後半だけで「ハットトリック」となる3トライ(1つはペナルティートライ)を挙げて一時逆転した。終盤に追いつかれ、トライ数差(3-5)で準々決勝へは進めなかった。
幼なじみと初対決へ
進んだ東海大の同期には、その時戦った仰星高の選手が明大戦でリザーブの前田翔ら3選手がいる。柴田は3年生になってリザーブで試合に出場する機会を得たが、「人数が多い分、いろいろと競争が激しく、自分を成長させてくれた場だった。入ってよかった」と振り返る。チームに10人以上いるSHの中で一番体格は大きい。「自分にとって、でかい部分は武器だと思っている。ハーフは小さくてパス裁きと思われがちだが、体を生かしてタックルにいき、自分で持っていけるところも強み」とみている。
柴田はバックスのSOやWTBもやってきたが、自分に一番合っていると自らSHを希望して高校3年生から専念した。これまで高校やユース世代の代表経験はない。「これから先、まだ、ラグビーを続けるので日本代表を目指して頑張りたい」。パスワークと俊敏性がより求められる日本のSHは大きな選手が育ちにくいとも言われるが、卒業後はリーグワンのチームへ進む予定だ。
2大会前の準決勝でチームは明大に10-29と完敗している。その前年も準々決勝で涙を飲んだ相手だ。柴田は出場していなかったがが、その時、悔しさを味わった同期もいる。明大の児玉は22番でベンチからのスタート。「明治とは何回かやっていますが、(児玉)樹とは初めてです。小さいころから一緒だったので、大学の最初で最後の大舞台で、明治と樹を倒して決勝に進みたい」