駒澤大・田澤廉「世界との差を感じることもできなかった」 初の世界陸上で残した悔い
第18回世界陸上競技選手権大会 男子10000m決勝
7月18日(日本時間)@ヘイワード・フィールド(米オレゴン州ユージン)
20位 田澤廉(駒澤大4年) 28分24秒25
学生駅伝界のエース・駒澤大学の田澤廉(4年、青森山田)が初めての世界大会に挑んだ。7月15日~24日に米オレゴン州ユージンで開催されている世界選手権の第3日、男子10000m決勝に登場した。田澤は「緊張はしなかった。逆に楽しみだった」とスタートラインに立った。
5000mから差し込み、耐えしのぐレースに
24人がスタートを切り、田澤は後方の2、3番手に伊藤達彦(ホンダ)とともについた。先頭は400mを65~67秒ほどのペースで刻んでいく。5000mを過ぎたあたりで少しペースが上がり、伊藤が遅れ始める。田澤は汗をぬぐいながら、「5000mくらいから上がることは予想できていた」と先頭集団に食らいついた。だが、誤算があった。「5000mでついていけたのは良かったが、そこで差し込みがきてしまった」。6400m付近でとうとう、ふるい落とされた。
結果は28分24秒25の20位。地面にひざをついて倒れ込んだ。自己ベストの27分23秒44からは1分近くも遅いタイムとなった。「ただ耐えしのぐレースになってしまった。非常に悔しいというか、自分自身でも残念だなと思います」と肩を落とした。
先頭集団は最後の400mを約53秒という驚異的なラップでゴールした。「世界と自分との差を感じたい」と語っていた田澤。しかし、現実は「自分の差し込みのせいで、世界の選手との差を感じることもできなかった。ただ、参加しただけのレースになってしまった」と振り返った。
「今後の陸上人生のプラスになる」
田澤は大八木弘明監督と二人三脚で力を磨いてきた。2021年、2年目の箱根駅伝が終わった頃に、「世界を目指すぞ」とはっきりと伝えられた。その後、大八木監督は3年生の田澤をチームの主将に指名。「周りを見て感じることが、自分自身の成長につながる。世界と戦える人間に成長させるための段階のひとつ」という大八木監督の狙いがあった。3年目の箱根駅伝が終わり、主将を外れた。4年目に本格的に個人種目で世界で戦う準備をするためだった。
そんな大八木監督も現地で観戦し、田澤にげきを送った。レース前には「最低でも27分台では走ってこい」と言われたというが、達成できず。田澤は「本当に情けないなと思います」と話した。
ただ、得たものも大きい。全米選手権が行われるなど「陸上競技の聖地」と言われるヘイワード・フィールドで走り、「観客の歓声がすごくて、選手を鼓舞して、選手も力を発揮できるような場所だった。日本にはないものを感じた」。そして、続けた。「学生の間に世界のスタートラインに立てたのは良かった。今後の陸上人生のプラスになると思います」
世界の舞台で感じた悔しさと高揚感。21歳は間違いなくこの1日で大きく成長したはずだ。