アメフト

明治大RB森川竜偉、高校3連覇の絶対的エース ラストイヤーは偉大な先輩の夢乗せて

昨秋の中央大学戦でボールキャリーする森川

明治大学の6番に注目だ。抜群のボディーバランス、手と体を使ったテクニックを駆使するダイナミックな走りはフィールドでひときわ異彩を放つ。明治大のエースRB(ランニングバック)森川竜偉(4年、佼成学園)は高校3連覇の立役者ながら、大学ではこれまでチームとして結果を残せていない。それだけに学生ラストイヤーにかける思いは強い。

関学大相手に7点差

グリフィンズにとって充実の春シーズンだった。「全員出場」を掲げ、新戦力を試しながら公式戦計6試合を戦い、結果は5勝。唯一敗北した関西学院大学戦も、甲子園ボウル4連覇中の学生王者相手に7点差と接戦を極めた。大学アメフトにおいて「春と秋は別物」が定説ではあるが、春で基礎力の高さを示した明治大が、関東制覇の最有力候補の一角に名乗りを上げたことは間違いない。

好調のチームの中心にはいつも森川がいる。今春初戦の国士館大学戦では開始30秒、先陣を切る21yd(ヤード)TD。厳しい展開になることが予想された関学大戦でも、開始早々TDを奪われた後、大事なオフェンス1プレー目でボールを託されたのは森川だ。しっかりとゲインし反撃のスイッチを入れて見せた。さらに最終・立教大学戦では単独で149ydを稼ぎ、格の違いを見せつける。「あまり言葉では引っ張れていない」。口が良く回るタイプではないが、背中で見せるエースとして十分な結果を残し続けている。

立教大学戦では149ydを稼ぐ活躍を見せた

森川のエースとしての存在感は試合中だけにとどまらない。副将に就いた今季、「チームで決めたルールを一番に体現すること、日本一のチーム作りのために貪欲(どんよく)にいろいろなことをミーティングで提案して、実行しています」と、フィールド外でもチームを引っ張る姿勢を崩さない。

高校時代の栄光から一転

森川は佼成学園高校(東京)時代に3度の日本一に輝き、日本高校選抜で米国とも戦った世代トップRBだった。高3にはLB(ラインバッカ―)としてプレーしていたため、大学では「1年ぶりにRBができる! うれしい!」と世代トップのプレッシャーはまったくなし。意気揚々と大学アメフト界へ乗り込んだ。しかし、高校時代の栄光から一転、これまでの3年間はチームとして大学日本一の目標には届いていない。

上級生となった昨年は、春に手術を経験。「夏の間リハビリをしていて、秋の初戦に間に合わなかったことが大きな原因だと思います」と、ラッシングヤードはチーム内2位、関東TOP8内8位と低調だった。「特に早稲田大戦はランに悔いが残っていて、出られなかった4年生のRBに申し訳ない気持ちでいっぱいでした」。この悔しさが今の森川を走らせている。

昨秋の早稲田大学戦。森川(6番)のTDで追い上げるも一歩届かず、甲子園ボウルへの道が途絶えた

最終学年の覚悟、「RBパートがゲームチェンジャーに」

ついに4年目を迎え、甲子園ボウル優勝を目指せる最後のチャンスとなった。森川自身も最終学年にして自身の変化を感じている。「去年は4年生に任せっきりでしたが、今年はRBパート全員が伸びる練習メニューの作成であったり、チームの雰囲気づくりのために練習中は名指しで声をかけたりしています」。下級生に実力者がそろう自パートの育成にも力を入れる。「どんな状況でもRBがランを出すことでゲームチェンジャーになりたい」。すべてはチームで勝つためにしていることだ。

実際、森川が作り上げた今季のRBパートは、紛れもなくグリフィンズのストロングポイントに成長している。森川とともにダブルエースを張る廣長晃太郎(2年、箕面自由学園)は「一方的にかもしれないが、とても意識しています。竜偉さんが試合で活躍しているとうずうずして、次のプレーで竜偉さん以上のプレーをしてやるという気持ちになる。プレー以外でもとても良くしてもらっていて、優しい先輩です」。廣長の成長には間違いなく森川の存在が大きい。

85-0で圧勝した日本体育大学戦も、「実力差のある相手で満足している選手もいたので、まだまだだな」と4年生として冷静にチームを見渡し、気を引き締めた

大エースの先輩から託された使命

森川は断言する。「小泉亜斗夢さん(2019年卒、現東京ガスクリエイターズ)からもらった使命を果たしたい」。その使命とは、リーグ戦を通して最も足で稼いだ選手に与えられる、リーディングラッシャーの座。RBにとって最も名誉ある称号だ。同時に、明治大を強豪に押し上げたかつての大エース・小泉亜斗夢をもってしても成し遂げられなかった、高い目標でもある。

「亜斗夢さんは一番尊敬している人」と森川は言う。小泉が引退する時に、思いを託されたのが当時1年生の森川だった。現在は「結構練習にも顔を出してくれるので、いろいろなことを聞いていますし、LINEで相談することもあります」。4年生となった今でも、小泉との親交は続いている。「お世話になった先輩のために頑張る」。森川のラストイヤーは偉大な先輩の夢も乗せて走る。

当然、簡単な目標ではない。「昔から“ランの明治”と呼ばれていてプレッシャーもある。秋の相手はランディフェンスもしっかり対策してくると思う」。だが、37年ぶりの悲願、創部史上初の歓喜に向け、森川は自身に課せられた使命を全うする覚悟だ。2カ月後に迫った秋季リーグ戦、“ネイビージャージーにイエローの6番”に注目してほしい。

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