アメフト

法政大学のLB山田敦也、15年ぶりの日本一へディフェンスの要は3年生副将

法政大学のLB山田敦也副将。3年生になり相手との駆け引きもうまくなった(撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの甲子園ボウル(12月19日)で法政大学が15年ぶりの日本一をつかむには、関西学院大学の強力で多彩なオフェンスをどれだけ止められるかにかかっている。その法大ディフェンスの中心にいるのが3年生で副将を務めるLB(ラインバッカー)の山田敦也(千葉日大一)だ。

駆け引き楽しみ成長

山田は関東大学で9年ぶりの優勝を決めた早稲田大学戦で貴重なインターセプトを決めた。捕球体勢に入っていた早大レシーバーは照明が目に入ったのかパスを取り損ねた。そのボールがレシーバーの足に当たり、詰めていた山田のところへ。そのまま山田は切り返し12yd前進した。本人は「ラッキーボールです」と謙遜したが、しっかり体を寄せていたことが運も引き寄せた。

指示を出しディフェンス陣をまとめる(撮影・北川直樹)

身長181cm、体重93kg。入学当初、DL(ディフェンスライン)で鍛えたこともあり、1年秋から力強いプレーで活躍してきた。今季は相手との駆け引きを楽しみながら成長している。「体を当てるにしても、相手が少しでもブロックしにくくなるように考えながらやっている」。小澤優太コーチ(ノジマ相模原)から細かいアドバイスをもらってきた。

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「学年は関係ない」

3年生での副将就任には、やってみたい気持ちとやっていいのかという思いが同居したという。同じく3年で副将を経験した昨年の山岸達矢主将(オービック)に相談、アドバイスをもらった。「フィールドでは学年は関係ない。勝ちたいやつがどんどん前に出ていけばいい。副将だからというのはなく、フラットなチームの雰囲気を大切にしている」

今季の法大は山田と一緒に日本高校選抜でアメリカへ遠征した斎藤穂高(日大豊山)と石井潤(佼成学園)のOL(オフェンスライン)やRB(ランニングバック)星野凌太朗(日大三)ら3年生の主力が多い。だが、山田は「キャプテン自身も先発ではないが、サイドラインに戻ると『こうしたらいい』とアドバイスをしっかりくれる。春から負けなしなのは、絶対に4年生の力がある」と言い切る。信頼を寄せる同じLBの太田成哉主将は千葉日大一高からの先輩でもある。

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LB太田成哉主将(中央)、WR小山昭瑛副将(右)の両4年生と(撮影・朝日新聞社)

ライバル止める

中高一貫校の千葉日大一で、山田は父の影響でゴルフ部に入った。スコアで100を切るほどにはなったが、「素人から伸びるところまでは伸びた」と中学で一区切りをつけようと思った。そんな時、中3で同じクラスになったQB(クオーターバック)平井将貴から「アメフトやってみない」と声をかけられた。「彼に誘われたのが全て。運命を感じます」

体験会に顔を出すと、はまった。細身の体で最初はレシーバーをやった。「ゴルフは個人の戦いだけど、みんなで一つの目標に向かって頑張れるのが楽しかった」。アメフト部員は多くなく、試合には出ずっぱり。オフェンスはOLに、ディフェンスではLBに入った。

高校2年の時、「地区が一緒だったので見たことあります。一つ上で話したことはないですが、『エドトリ』(茨城・江戸川学園取手)で大暴れしていて、すごいなと思った」。関学が誇るRB陣の一人、齋藤陸(4年)だった。クリスマスボウルへつながる高3最後の関東大会は4強に進出。千葉日大一として最高成績だったが、準決勝で敗れた相手は佼成学園。3年連続高校日本一を達成するそのチームには、関学で非凡な捕球をみせるWR(ワイドレシーバー)梅津一馬(3年)がいた。自身初の大舞台で、2人を止めなければ栄冠はない。

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タックルなど力強いプレーには定評がある(撮影・北川直樹)

法大が9年前に甲子園に出た時はアメフトも知らない小学6年生だった。「出場したコーチの方に話を聞くと『フィールドが揺れている感じがする』と。楽しみでしょうがない」
法大は有澤玄ヘッドコーチが主将で出場した第49回大会(1994年)から8年連続甲子園ボウルに出場するなど2000年代にかけて黄金時代を作った。「YouTubeに映像が残っていたりするので、そういうのを見てこんな様子だったんだと時代を感じます」と山田。1試合ごとに成長してきた若きオレンジが、新たな黄金時代を切り開く。

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