ラグビー

29季ぶりに1部昇格の東洋大が快挙! 4連覇中の東海大を破ったディフェンス力

後半、再逆転のトライを決めた東洋大学のボンド(すべて撮影・斉藤健仁)

9月11日(日)、東京・秩父宮ラグビー場であった関東大学リーグ戦の開幕節、昨季は2部の2位ながら、中央大学を下して1部に昇格した東洋大学と、1部を4連覇中で昨季の大学選手権4強の東海大学が対戦した。今季も優勝候補の東海大に対し、東洋大はラインアウトディフェンス、タックルでプレッシャーをかけ続け、好機にしっかり5トライを重ねて24-27で逆転勝利を収めた。

スタンドには学生だけでなく、OBの姿も

春季大会ではグループCで5戦全勝、夏合宿では昨季関西2位の近畿大学、リーグ戦のライバル法政大学にも勝利し、調子を上げていた東洋大。三洋電機ワイルドナイツ(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)で日本一を経験した実績を持つOBの福永昇三監督が2018年から指導にあたっている。指揮官は試合前、「ジャージーとマウスピースとスパイクとパッションだけを持って臨もう」と選手たちに声をかけた。

「生きている中で、こんな素晴らしい舞台でラグビーできる機会はない」と開幕戦に挑んだ主将のロック(LO)齋藤良明慈縁(らみんじえん、4年、目黒学院)は「29年間、先輩方は1部の舞台を目指しても昇格できず、日本一すら目指せない位置にいた。先輩たちの気持ちを代表して戦おう」とチームを鼓舞した。

スタンドには東洋大の現役の学生だけでなく、「秩父宮に連れてきてくれてありがとう」と書いた紙を持ったOBも駆けつけた。現役の部員だけでなく、先輩の思い、歴史も背負った東洋大フィフティーンは開始直後から気負うことなく、好パフォーマンスを発揮する。

スタンドには「秩父宮に連れてきてくれて ありがとう」と書かれたメッセージも見られた

光ったラインアウトディフェンス

前半5分、敵陣ラインアウトからのサインプレーで、ウィング(WTB)のモリース・マークス(2年)がトライを挙げて勢いに乗った。

その後は、東海大のセンター(CTB)伊藤峻祐(4年、桐蔭学園)が「自分たちのラグビーをさせてもらなかった」と悔しがった通り、東洋大は齋藤主将、身長212cmのLOジュアン・ウーストハイゼン(1年)らを中心に、相手のアタックの起点であるラインアウトにプレッシャーをかける。ボールを奪ったり、反則を誘ったり、モールを組まれても停滞させ、5回連続、効果的なアタックをさせなかった。

福永監督は「(ラインアウトディフェンスは)キャプテンを中心に、下級生から試合に出ている選手が多くて、私たちからアドバイスすることなく過ごしている。その中でもウーストハイゼンのような仲間も加わって、より強みが出た」と全幅の信頼を寄せる。

前半の終盤になると、東海大が徐々に攻める時間が増えてきた。フランカー(FL)のレキマ・ナサミラ(4年)にトライを許すが、東洋大は試合後にプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に輝いたCTB繁松秀太(4年、札幌山の手)を中心に、粘り強いタックルを繰り返し、前半は1トライに抑えた。

粘り強いタックルで東海大のアタックを阻み続けた

5-7で迎えた前半38分、相手の強みであるスクラムでペナルティーを奪い、スクラムハーフ(SH)神田悠作(4年、東筑)がクイックタップで仕掛け、フルバック(FB)田中康平(4年、土佐塾)がトライ。10-7で前半を折り返した。

主将が「チャレンジを忘れるな」と鼓舞

後半に入ると、東海大も本来の強さを発揮。後半10分までにセットプレーを起点にFLナサミラが2トライを重ね、10-19とリードを奪われる。それでも東洋大は諦めることはなかった。円陣で齋藤主将は「自分たちは何も成し遂げていない。チャレンジを忘れるな」と声をかけると、チームに再びエナジーが戻った。

「齋藤キャプテンはすごく謙虚で、盛り上げることがうまい。声を聞いたらすごく落ち着く。悪い展開になっても素晴らしいキャプテンがいるから、そのまま崩れない。集中して頑張れたと思う」とウーストハイゼンは言う。

4連覇中の東海大学も意地を見せた

セットプレーに自信を持つ東洋大は、相手のお株を奪うかのように、20分、24分とモールを起点にアタックを仕掛けて、控えから出場したFWの選手が2トライ。22-19とし、再びリードを奪った。31分に再び相手にトライを許し22-24とされるが、最後まで東洋大の集中力は途切れることはなかった。

東洋大はFWとBKが一体となってボールを継続し、36分に副将のスタンドオフSO土橋郁矢(4年、黒沢尻工)が右に3人を飛ばしのパスを放った。最後は途中出場のWTBボンド洋平(2年、東海大相模)が右隅に押さえて27-24と再逆転に成功する。

残り時間3分ほどあったが、東洋大は最後まで全員で粘りのディフェンスを見せてゴールラインを割らせず、試合はそのままノーサイド。選手たち全員が歓喜を爆発させた。

再逆転トライを決めたボンドのもとに集まり、喜びを分かち合う東洋大の選手たち

1部での勝利は30年ぶり

東洋大が前回1部に所属した1993年のリーグ戦は、0勝7敗だったため、1部での勝利は1992年の11月の日本大学戦以来、30年ぶりの快挙で、リーグ戦8位扱いのチームが昨季の王者を下す番狂わせとなった。途中出場した選手が後半に3トライを挙げるなど、采配が見事にあたった福永監督は「最後まであきらめないタックルを80分通してくれて、すごく良かった!」と満面の笑顔を見せた。

齋藤主将は「狙い通りでした。自分たちのセットプレーから流れを作ることを常にテーマにして、ラインアウトで(相手を)勢い付かせないこと、スクラムもクリーンに(ボールを)出させないことができて、相手がやりたいことができなかったと思います」と胸を張った。ラインアウトディフェンスで大きな存在感を見せたLOウーストハイゼンは「タフな試合でしたが、選手全員がパッションを見せて戦えた。このまま継続して、他のチームにも勝てるように頑張りたい」と先を見据えた。

東洋大の福永監督は試合後「すごく良かった!」と選手を褒めたたえた

チームは大きな自信を得たはずだ。「秩父宮(ラグビー場)という大きい舞台で、一緒に頑張っているメンバーとラグビーができる喜びでいっぱいだった。シーズンを通してもっと強くなるので注目してほしい」と齋藤主将。

29シーズンぶりの1部の開幕戦で、大学ラグビー界に大きなインパクトを与えた東洋大が「台風の目」となり、群雄割拠の様相を見せている関東リーグ戦を大いに盛り上げながら、3位以内に入り大学選手権初出場を狙う。

試合後、スタンドに向けてあいさつする東洋大の選手たち

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