3年ぶりの内野席応援で「三位一体」 東都の福島開幕を盛り上げた応援団たちの思い
東都大学野球の秋季リーグが9月3日、福島県内で開幕した。春の大分県に続く地方開催。1部6大学の応援団も、前日祭からの4日間を全力で走り抜けた。
9月2日午後5時半、郡山駅前の特設会場で、前日祭が開催された。6大学の応援団がそれぞれの特徴を生かしたパフォーマンスを披露し、「ぜひ球場に足を運んで下さい!」と呼びかける。3日は福島市の県営あづま球場、4、5日は郡山市のヨーク開成山スタジアムに多くのファンを集めて、3試合ずつが行われた。各試合の五回終了後には、両校のチアリーダーがグラウンド内でショーを披露し、会場を盛り上げた。
亜細亜大学は、総勢44人の迫力
春季リーグで優勝した亜細亜大学は、応援指導部27人(リーダー2人、ブラスバンド2人、チアリーダー23人)と吹奏楽団17人で福島入り。迫力のある応援を展開した。「応援って、まったく同じものは存在しないんです」。応援指導部主将でチアリーダーの牛山菜乃葉さん(4年、甲府東)は力を込める。
「一緒に応援して下さるお客さんの反応によって、雰囲気は変わってくる。選手やお客さんが元気になれるよう、笑顔になれるよう、私たちが盛り上げます」
福島県は毎年夏に猪苗代で合宿をしていて、なじみの深い場所だと言う。「私たちにもこんなスポットライトが当たる場をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。たくさんのお客さんと一緒に応援でき、私たちにとっても成長の場となりました」
精鋭17人の國學院大學「1人でも憧れ持ってもらえたら」
國學院大學は全学応援団の部員48人から、リーダー、ブラスバンドが各3人、チアリーダー11人の精鋭17人で臨んだ。
新型コロナウイルスの影響もあり、内野席で野球部員や一般客と一緒に応援するのは、2019年秋以来。「新鮮というか、元に戻ったといううれしさがあります」と副団長の木村友哉さん(4年、高崎)はしみじみ語る。「こんなに多くの人に見てもらえる。一緒に盛り上がってもらいたいです」
「福島に来られなかった部員の思いも背負って全力で応援した」と話すのは、チアリーダー部長の宮本和嘉さん(4年、大分東明)。福島開催のための特別パフォーマンスも準備したという。
「私たちの踊りに合わせて一緒に手を回してくれたりして、うれしかった。福島の方の中から、1人でもチアに憧れをもってもらえたら」とはにかんだ。
駒澤大学は、伝統の「客前」にこだわり
駒澤大学はリーダー3人、チア7人、ブラスバンド10人で福島開催に参加。前日祭では何人かがお客さんの中に入り込み、手拍子を促して会場を盛り上げた。「応援で最も大切なことは『客前』だと、私たちは先輩から教わりました」と応援指導部代表の清水喬斗さん(4年、桶川)が教えてくれた。
1年生で入部し、最初に担当するのが「客前」だ。お客さんのすぐそばで、手拍子やかけ声を促しながら一緒に盛り上がる。「そこが大事。そこができないと駒澤の応援は成り立ちません」
前日祭ではチアの何人かも、一緒に会場の周囲を練り歩いた。試合当日は清水代表自らが、率先して「客前」に立った。「選手がいて、お客さんがいて、はじめて応援は成り立ちます。目標とするところは野球部を勝利に導く応援ですが、そのためにも盛り上げることを大切にしたいと思っています」
青山学院大学の女性団長は「ジーンときました」
応援団3人、吹奏楽バトントワリング部とチアリーディング部各7人の総勢17人。青山学院大学の応援を取り仕切ったのは、女性団長の我妻実玲さん(4年、青山学院)だ。コロナ禍以前の3年前は野球部が2部だったため、1部の試合応援を内野席でやったのは、入学以来初めてになる。「感無量です。2年間はほとんどイベントがなかったので。ジーンとくるものがありました」とほほえんだ。
高校時代はチアリーディング部。「そこで野球部の応援の楽しさを知りました。もっと応援をしたいと思った」そうで、大学でもチアを続ける仲間がいる中、リーダーを志望して学生服に袖を通した。
3人のリーダーが交代でリーダー、太鼓、客前を担当する。内野席でOBや一般客にも呼びかけながら、同校卒業生の桑田佳祐さんの楽曲「勝手にシンドバッド」「波乗りジョニー」などにのせて野球部を鼓舞した。「普段は大学野球を見ない人にも楽しさが伝わったら。一緒に盛り上がれたと思います」
アメフトと二手に分かれて奮闘した日本大学
日本大学は応援リーダー部の12人が、郡山市にある日大東北高校の吹奏楽部の演奏に合わせて、試合を盛り上げた。
日大はアメリカンフットボール部も強豪。こちらも3日に東京ドームで関東大学リーグ1部TOP8が開幕したため、32人の部員が二手に分かれた。直前の8月26~28日はチアリーディングのジャパンカップに参加。「それから野球用の応援を練習しました。大変だったけど、野球の応援はめちゃくちゃ楽しいので、まったく苦になりません」と主将の尾林花梨さん(4年、千葉明徳)は笑う。
「チャンスでは球場全体が盛り上がる。自分たちもその先頭になれる。自分たちの競技活動以外に発表の場があるのは本当にありがたいです」
五回終了後のパフォーマンスも、アメリカンフットボールのハーフタイムショーとはまったく違うオリジナルを用意した。「相手校と1曲ずつ出し合って、それぞれにダンスなどを考える。お客さんが応援して下さり、ありがたかったです」
三位一体の応援で盛り上がった中央大学
中央大学の応援団はリーダー部5人、チアリーディング部12人、ブラスコアー部11人で福島県に乗り込んだ。団長の安蒜和樹さん(4年、松本深志)は「お客さんがいっぱいいらっしゃる方がモチベーションが上がります。福島市でも郡山市でも多くの方が来て下さり、本当にありがたいです」と感謝した。
3年ぶりとなる内野席での応援。「とても新鮮な気分です」と安蒜さん。お客さんとの距離が近いため、一人ひとりの表情がよく見える。「うれしい、悔しいといった感情を共有できます。より楽しく応援することができました」
「中央大学は代々、お客さんと一体となっての応援を心がけてきました。福島の皆さんの応援に対するスピリッツは素晴らしいです。私たちの応援がグラウンドの選手にも届き、三つが一体となれたような気がします」