野球

特集:2022年 大学球界のドラフト候補たち

天理大・友杉篤輝 一塁まで3秒73の快足、体調不良で出遅れたが、全力アピール中

1年春から持ち味の快足でチームを引っ張ってきた(天理大の写真はすべて撮影・沢井史)

50mのタイムは6秒0。一塁までの到達タイムは3秒73。天理大学の友杉篤輝(4年、立正大淞南)は、快足を生かしたプレーが持ち味だ。1年春の阪神大学リーグ戦から打線を引っ張ってきた。身長172cmで、「プロ注目の遊撃手」としては大柄ではない。友杉の良さは前述のような瞬発性の高さに加えて、打席での選球眼の良さもある。

特集「2022年 大学球界のドラフト候補たち」

何もかもが新鮮だった国際舞台

フル出場した昨秋のリーグ戦は三振がゼロだった。今春のリーグ戦もフル出場し、わずか3三振。20年秋から3季連続でベストナインに選ばれ、今春のリーグ戦ではMVPと首位打者にも輝いた。6月の大学選手権にも出場し、7月には大学日本代表に選出。初めて日の丸を背負い、国際大会「ハーレムベースボールウィーク2022」を経験した。大学選手権後、慌ただしく合宿に入り、オランダへ渡ったが、初めての国際大会は何もかもが新鮮だったという。

「内野の芝や土の質が日本と違っていて、慣れるのに時間がかかりました。でも、海外の選手と試合ができたことは、良い経験でした。海外の投手のボールは動いていると言いますけれど、僕はうまく動かしている、という感じでした。日本ならスライダー、カーブが主流ですけれど、海外のピッチャーはツーシームもすごくいい。代表にならないと分からないことをたくさん肌で感じられたのは良かったです」

春は首位打者にも輝き、国際大会も経験した

実戦を重ねながら状態を上げる

今秋のドラフト会議に向け、順風満帆に秋を迎えるはずだったが、よもやの事態に見舞われた。

8月半ばから体調不良となり、その後新型コロナウイルスの感染が判明。約2週間、練習から離れた。21日から8月いっぱいは寮内で隔離生活を送り、高校日本代表と行われた31日の壮行試合も辞退した。

「実は壮行試合にはすごく行きたかったんです。日本代表に選ばれた時に結構楽しみにしていたので…。でも周りに迷惑をかけるわけにはいかないと(辞退した)」

チームに合流したのは9月に入ってから。リーグ戦は3日に開幕したが、初戦の大阪電通大戦では4打数無安打。チームも1-4で黒星を喫した。でも、下を向いている暇はない。実戦を重ねながら、状態を上げていくしかないと腹をくくった。

春のリーグ戦までは3番を打ってきたが、「打席が少しでも多く回ってくるように」という藤原忠理監督の判断で、翌週の神戸国際大戦は1番に座った。ただ、半月近く離れた実戦の感覚を取り戻すのは容易ではない。

「まだ変化球が見えていない時もありますし、ボール球に手を出しがちですね」。10日の第1戦は四回1死二塁のチャンスで打席に立ち、キャッチャーフライに倒れた。「あの打席は体勢を崩されてしまいました」と渋い表情を浮かべながら振り返った。

「普段は色んな球種に対応できるように待っているんですけれど、待っているボールが来ない時の対応力を磨かないといけないと思っています」

コロナの影響で出遅れたが、実戦を積みながら感覚を取り戻している

それでも友杉が打線を活気づけているのは間違いない。三回は1死走者なしから左前安打で出塁。攻撃の起点となって連打を呼び込み、先制のホームを踏んだ。「走者がいない場面は出塁することだけを考えて、チャンスではランナーをかえすことに集中しています」

いかに1球に集中して挑めるか

これまでの経験値から見ても、友杉が塁に出ることがどれだけ雰囲気を変えているか。この秋は1打席、いや1球にいかに集中して挑めるかが重要になる。

「試合に勝つことが大前提ですが、自分の今の最大の課題はバッティング。1節目の試合がそうだったのですが、自分が打っていたらもっと楽な展開になっていた試合がありました。チームが自分にいいところで回してくれているのに、申し訳ないです。これからの試合の中で、ベストの状態に何とか持っていきたいです」

走塁面はベストの状態に戻りつつあると自信を見せる、小さな好打者。「自分の幼い頃からの夢をかなえたい」とめざす来月のドラフト会議に向けて、全力でアピールを続けるつもりだ。

立正大淞南高校時代から、攻守の中心だった(撮影・朝日新聞社)

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