野球

近畿大学・竹谷理央 けがで出遅れたスラッガー、苦しいときこそ星稜の「必笑」を胸に

9月末に先発メンバーに復帰した近畿大の竹谷(撮影・沢井史)

9月29日の近畿大学と同志社大学による第3戦。今秋の関西学生野球リーグ戦の7試合目にして、ようやく近畿大のスタメンに竹谷理央(4年、星稜)の名前が並んだ。3年春からチームの主軸としてフル出場し、すっかり強力打線の顔となっていた竹谷だが、8月下旬のオープン戦で右足の太ももを肉離れし、実戦から離れていた。

オープン戦で肉離れを起こし、治療に専念

「オープン戦でデッドボールを受けて、そのまま出塁してエンドランのサインが出ていて、思い切り走ったんですけれど、その後に痛くなってしまって……。病院で診察したら内出血していることも分かって、しばらく安静にしていたんです」

走るどころか、歩くことにも普段の生活でかなり気を使い、練習をセーブ。その期間は約2週間に及んだ。肉離れは再発の可能性が高く、少しでも無理をすれば今後に影響が出てしまう。「起こってしまったことは仕方がない」と本人は現実を冷静に受け止め、治療に専念した。リーグ戦の開幕後、第2節の関西学院大学戦からベンチ入りすることができ、次節の同志社大戦1回戦は代打出場で、実戦に復帰。台風接近の影響で日程が延びていた同志社大3回戦で、ようやくスタメンに復帰することができた。

第1打席は相手の失策、その後は3打席連続の四球で出塁。自らのバットから快音は出なかったものの、全打席出塁でチームに貢献した。

先発復帰戦は、全打席出塁でチームに貢献した(撮影・沢井史)

「まだあまりちゃんと練習できていないので、そういう意味では(全打席で出塁できたことは)良かったです。練習を本格的に始めたばかりで、まだまだな部分はありますが、ボールはちゃんと見えていました」。順調に状態が戻っていることを確認できたようだ。

星稜時代は石川大会決勝で4アーチ

この秋は大学のラストシーズン。有終の美を飾るには、初戦からフル出場することが最低条件だった。夏場のオープン戦、肉離れを引き起こすまではフル出場を続けていただけに、歯がゆさは残るが「切り替えて、ここからの試合を全力で戦うしかない」。今では気持ちはリセットしている。

9月29日の時点で、チームは関西大学、同志社大と並んで勝ち点2の首位。近大は竹谷がスタメン復帰した一戦で同志社大に完封負けを喫し、勝ち点を落とした。ただ、不利な状況に陥ったわけではない。「守備のミスがあったので、そういうところをなくして次に切り替えていきたいです。残りの試合は全て勝つつもりで戦います」と前を向く。

竹谷は高校時代、主将としてチームを牽引(けんいん)した。第90回選抜高校野球大会は、計3試合で先発登板し、8強入り。夏の甲子園は2回戦で済美(愛媛)をに延長13回タイブレークでサヨナラ負けを喫したものの、当時4番を務めていた竹谷は、石川大会決勝で4本の本塁打を放ち、強打を誇るチームの中心的存在だった。

星稜時代は石川大会決勝で4本塁打を放ち、甲子園でも中心選手として活躍(撮影・朝日新聞社)

当時から星稜のモットーは「必笑」。どんな状況でも笑顔で、前向きな気持ちでいることを心がける。対同志社大の敗戦は悔しさだけが残ったが「チームが勝てるように貢献するだけ」とショックを引きずっていない。ただ、ラストシーズンを締めくくるには、自身の数字の物足りなさに本音も漏らした。

4年生らしく、苦しいときも笑顔で

「この秋は規定打席に立てないので、そのあたりは悔しいですね。それでもチームが優勝争いをしていくうえで、今後は負けられない試合ばかり。ベストナインや首位打者など、タイトルはもう狙えないですけれど、最後のシーズンだからこそ楽しみたいです。もちろん、勝つことは大前提。全力でやっていきます」

卒業後も社会人野球の舞台で、野球を続けることが決まっている。大学ではラストシーズンだからこそ、自身のためだけでなくチームのために足跡をしっかり残したい。

「ホームランを打ちたいというのはありますね。去年からリーグ戦で打てていないのもあるので…。力のある後輩がたくさん入ってきて、来年も優勝する力があるのに。勝ち切れない試合を今後はできるだけなくしていけるように。最後まであきらめない姿をしっかり示していけるようにしたいです」

大学ラストシーズンも前向きな気持ちを忘れない(撮影・沢井史)

4年生らしく、前向きに、笑顔で。高校時代も下を向いてしまいそうになる時ほど、笑顔で仲間の背中を押した。この秋ももちろん、最上級生として最後まで明るくチームを引っ張るつもりだ。

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