ラグビー

明治大・東海隼 ファンアンケートで「もっと見たい選手」1位 同期の活躍も刺激に

8月の菅平での帝京大学B戦でトライを挙げ勝利に貢献、春の雪辱を晴らした

今年の春、明治大学ラグビー部の門を叩(たた)いた東海隼(あずま かいしゅん、1年、光泉カトリック)は、ルーキーたちの活躍が光った春シーズンの練習試合の中で自分の持ち味を出し、常にアピールしてきた。高校時代は高校日本代表とU-20日本代表候補に選出され、明大スポーツ新聞部が行ったファンアンケートでもっと見たい選手1位に輝いた今後の注目選手だ。これからも自分の強いプレーで勝負していく。

兄弟の絆でラグビー人生をキックオフ

「めっちゃ怖いから嫌や」。兄のラグビーの練習や試合をよく見に行ってた東。その迫力に圧倒され、始める前はラグビーに恐怖心を持っていた。しかし「お兄ちゃんとお風呂でラグビーの話をしていて、あがってきたら『俺やるわ』って言ったらしくて(笑)」。兄弟の熱い絆が東のラグビー人生を動かしたのだ。

小学2年生のときに、兄が通っていたラグビースクールに通い始めて以来、ラグビー一筋。始めた当初はメンタルがかなり弱かったが、監督に「強気でいけ。自信を持っていけ」と言われ続け、いつしか「自信を持って行動できるようになった」と話す。試合では、常に勝ちにもこだわるようになっていた。また、仲間との話し合いや下級生に教えるなど、コミュニケーション能力も培うことができ、厳しい練習を通し人としても成長していった。

試合中は自分の強いプレーで勝負することを意識している

尊敬できる監督、仲間とともに築き上げた高校3年間

光泉カトリック高校ラグビー部の薬師寺利弥監督から言われた「絶対に伸ばしてあげられる」という言葉を信じ、同校に進学する。「監督が自分たちに考えさせてくれる言葉をかけてくれる」。ラグビーとの向き合い方を学び、東は進化した。

入学当初、東は178cmで65kgと周りとのフィジカル差を感じていたが、母親の食事面でのサポートもあって3年間で体重を10kg以上増量する。「ボールを持っていないときでも、自分をどうアピールするか」を意識し、練習に明け暮れる日々。結果、その年の花園に1年生ながらもリザーブとしてメンバー入りを果たす。

東が途中出場することは叶(かな)わなかったが「次の花園に生かせる」と先を見据えた。しかしその矢先、コロナ禍に見舞われてしまう。そんな中でも、監督から「不利な状況でもポジティブに捉えて、新しい考えを探そう」と学んだことを実践。オンラインを通して部員と筋トレを行い、自分たちで考えた練習を動画で撮り、コーチに提出してアドバイスをもらうなど考えることをやめず、チーム一丸となって乗り越えた。

高校時代に伸びた「ランスキル」が現在の試合でも生かされている

最上級生になった東は、ダブルエースの1人としてプレッシャーを感じていた。「自分がいいプレーをしなあかん」。その時に東の支えとなったのが、ともにエースを務めていた奈須貴大(現・京都産業大学)の存在だ。東にとって、刺激し合えるライバルでもあった。「監督からもらったアドバイスをもとにチームの組み立てやアタック方法を主将の尾崎恵大(現・京都産業大)含め3人で考えていた」。東は仲間とともにチームを支え、プレーでも引っ張っていた。

最後の花園、1回戦はチームのミスが目立つも、東自身は3トライを挙げ勝利に貢献する。2回戦では優勝校の東海大仰星高校とあたり、完敗してしまう。だが、「みんなの表情がいつもと違い、体を張って楽しんでラグビーをしていてカッコよかった!」と、東にとって高校時代の最も印象に残る試合にもなった。

「大学日本一」に一番近いチームを選択

東は進学先を考える際、複数の大学から声をかけられたが、「日本一に一番近いチーム」として明治大を選択。進路決定には薬師寺監督からの後押しも大きく、「もっと成長できる。自信を持っていけ」と背中を押された。大学に入ってからは、コーチの勧めでセンター(CTB)からウィング(WTB)にポジションを変更。「しっかり分析してどこが強いか」と向き合い、アドバイスされたことも意識して習慣になるよう努力を惜しまない。春シーズンの練習試合ではウィングとして、6トライも挙げ着実に結果を残している。

「環境には恵まれているし、高いレベルの中でラグビーをできることは良かった」と話す。東は、チームメートのラグビーに対する姿勢に感化されている。なかでも、すでに紫紺を着て活躍する山村和也(1年、報徳学園)は刺激を与えてくれる存在だ。「山村は武器とするプレーを常に伸ばそうとするために、1対1の練習を申し込んでくる」。山村の向上心は、東の向上心をかき立てる源になっている。

ウィングにポジションを変更してから、「プレー中の視野が広がった」と話す

「声を出してチームのメンタルを整え、安定感のある選手になりたい」。Aチームに上がりたいという気持ちはあるものの、焦りはない。「自分の置かれたカテゴリーでできることがある」。自分の立ち位置を理解し、今できることを常に考えて行動している東。紫紺を着て東が躍動する日が来るのを待ち望む。

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