アメフト

関西大学LB仲村優志 挑戦者の気持ち忘れず、王者関学に最後まで食らいつく

関大ディフェンスを引っ張る仲村は高3でアメフトを始めた(撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は11月13日、5戦全勝でトップに並ぶ2校による関関戦が大阪・万博記念競技場である。関西大学が関西学院大学に勝てば、12年ぶり7度目のリーグ優勝と全日本大学選手権準決勝進出が決まる。今シーズン二つ目の大一番へ向け、関大ディフェンスの要の一人、LB(ラインバッカー)の仲村優志(4年、大阪学芸)は「勝つか負けるかで人生が決まるというぐらいの気持ちでいく。ここまでの人生で一番大きな戦いになる」と話している。

日本一への思いに共感し、カイザーズへ

10月30日の立命館大学戦。仲村はとくに前半、かなりのプレーに絡んだ。「あれだけのお客さんが入って、ラストイヤーの思いも強くて、どこかカタくなってたところがあった」とインターセプトをミスしたプレーもあったが、相手のOL(オフェンスライン)にしっかり当たって最前線に割り込み、タックルするシーンもあった。身長176cm、体重95kg。自分より大きなOLにもガンガン当たり、迷いのないブリッツでボールキャリアーをしとめる。仲村はパワー派で、テクニック・スピード派の前野貴一(4年、関大一)と組むLBユニットはいまや日本の学生界を代表する存在だ。

関西大学LB前野貴一 兄の背中を追いかけて14年目、強いタックルで必ず日本一に

関西のトップレベルの選手は小学生のころからフットボールに親しんでいる選手も珍しくないが、仲村は一線を画す。アメフト部のある大阪学芸高校に入ったのも、現地での単位が認められる留学プログラムにひかれたからだ。入学式でアメフト部の勧誘を受けたが、「入りません」と即答した。

タックルを決めて叫ぶ仲村(右、撮影・北川直樹)

家の近所に英語の塾があり、幼児向けのコースもあった。そこに3歳から通い、気がつけば英語が身近にあった。高1の冬から高2の最後まで、カナダの首都オタワに留学。「英語の力を生かすために部活をやりたい」とラグビー部に入った。フランカーとして試合にも出た。

帰国して高3の1年が始まると、アメフト部の監督から猛烈に勧誘された。大阪学芸高校にラグビー部はなく、自分でも体が大きいことは自覚していたので、「強みを生かせたら」と入部した。人数が少ないチームだったので、いきなりRBとLBの両面で試合に出始めた。アメフトを始めて3カ月目、6月の関西地区オールスター戦「プリンスボウル」に大阪選抜の一員で出場した。その試合後、関大の和久(わく)憲三コーチ(現・ヘッドコーチ)から声をかけられた。仲村は「驚きが大きかったです。スポーツ推薦自体、そのときまで自分の中で考えたこともなかった」と振り返る。その後、和久さんから日本一への熱い思いを聞いて共感し、関大出身の高校のコーチからもカイザーズについて聞き、「チャンスや。やったろ」と思って入学を決めた。

相手OLのブロックをかわし、ボールキャリアーに向かう(撮影・篠原大輔)

関学戦でもショートヤードを止める

3年生になった昨年からLBでスターターの座をつかんだ。秋の関学戦は10-10の同点で折り返したが、終わってみれば10-20と敗れた。その春の関関戦は雷の影響で第3クオーター途中で打ち切りとなったが、関大が14-6とリードしていた。秋への手応えを感じていた仲村だったが、関学の真の強さを目の当たりにさせられた。「関学は秋に向けてちゃんと仕上げてくる」との思いを強くした。

そして大学ラストイヤーを迎えたこの春、関関戦は7-7の引き分けだった。第4クオーター、関学はゴール前に迫った。ここから4回連続で中央付近のラン。これを関大が止めきった。フィールドゴール(FG)に切り替えていれば関学が確実にリードを奪えていた場面だったが、大村和輝監督によると「春やし、OLの練習」と、ランを繰り返した。仲村の中ではこれが関大ディフェンスの「らしさ」を体現できたシーンととらえている。

春の関学戦でブリッツをかけ、割り込んだ仲村(中央下、撮影・篠原大輔)

前節の立命戦でも、相手が3回仕掛けてきた第4ダウンギャンブル(パントからのスペシャルプレーは除く)のうち、2回を止めた。「うちのディフェンスの強みは最後まであきらめないこと。ショートヤードを止めきる力が特長なのかなと思ってて、次の関学戦もゴール前に攻め込まれても、TDでなくFGの3点にとどめられるのか。それが勝負の決め手になると思ってます。立命戦で止めたのは自信にしていきたい」と話した。

ディフェンスで粘れるかどうかが関学戦勝利のキーポイントになる(撮影・北川直樹)

卒業後は英語を生かしたい

仲村にとって前野の存在はどんなものなのか。「僕はパワー系のLBで、OLにもこわがらずに当たれるし、ブリッツもガンガン入っていく。それは前野が隣にいるから。だからこそ、僕がのびのびプレーできるんです」と語った。

仲村にとって前野(41番)の存在は大きい(撮影・篠原大輔)

最近は英語を勉強する時間もあまり取れないが、SNSを通じてカナダ時代の友だちやラグビーの監督、コーチとメッセージのやりとりをしている。内定した会社には英語を生かせる部署があるそうだ。

いざ関学戦。「とにかく挑戦者の気持ちを忘れたくない。しんどい試合になってくると思うので、気持ちで負けないようにしていきたい。最後の笛が鳴るところまで、自分の強みを出して食らいついていきます」。カナダ経由で出会ったアメフト。関大の18番が燃えている。

フットボール5年目、王者関学にすべてぶつける(撮影・篠原大輔)

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