陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

関東学生連合、箱根駅伝は15位相当目標 キャプテン・新田颯「すべてをぶつけたい」

ガッツポーズで写真におさまる学生連合チームの選手たち(撮影・藤井みさ)

11月20日に第99回箱根駅伝における関東学生連合チームの合同取材が行われ、新型コロナウイルスの感染が確認された東大大学院の古川大晃(D2、八代)をのぞく15人の選手が顔を揃(そろ)えた。中央学院大学の川崎勇二監督が監督を務め、「チーム」となって箱根路を駆ける。

育英大・新田颯キャプテンは「喜んで!」

関東学生連合チームの選出基準は、本戦に出られなかった大学のうち、個人成績上位の者かつ箱根駅伝への出走経験がない者となっている。今回のチームでキャプテンに任命されたのは育英大学の新田颯(4年、千原台)。予選会ではチームトップ、全体の33位でゴールし、今回選出されたメンバーの中では1番手だ。

予選会のあとに川崎監督から新田に「キャプテンをやってくれないか」という打診があり、「ぜひお願いします」と受けた。「『喜んで!』という感じでした。4年間の集大成として、学生連合のキャプテンを務めていい形で終われればと思っていたので、うれしいです」とやる気を見せる。

キャプテンをできることになってうれしかったと語る新田(撮影・藤井みさ)

直接顔を合わせるのは今回が初めてだったが、すでにZoomで選手間ミーティングなどは行っているという。「『僕がキャプテンとして引っ張るけどみんなでやっていきましょう』と言ったら、発言をしっかりしてくれて、やりやすいチームだと思います。やる気も意欲もあるのかなと感じます」。実際に会った時も積極的に話しかけてくれるなど、チームの雰囲気は明るいようだ。

けががあったからこそ自分が成長できた

新田は2年前の97回大会でも、予選会でチームトップ、個人総合92位の成績をおさめ、学生連合に13番手で選出された。しかしこの時は12月の初旬に膝の半月板を損傷し、出走はならず。他の選手が練習している中で補強しかできず、やる気を失った時期もあった。復帰してから走れることのありがたみに気づき、「走ることに貪欲(どんよく)にならないといけない」とも思ったという。「補強していたことで春先にタイムが伸びたりもしましたし、あの故障はいい経験だったと思っています。それに、あの時もし箱根を走っていても中途半端なタイムで終わっていたと思います。今はその時に比べて勝負できる体になっています」

実は予選会の時は、後半の残り3kmぐらいから太ももがずっとつっており、ラスト500mのあたりではコーチの前で止まりかけるほどだったという。その状態でありながら1時間3分28秒でフィニッシュ。「62分台を狙ってたんですけど、最後は失速してしまったので、まさか(学生連合チーム内)1位で通っているとは思ってなかったです。本番は『そんなに弱い僕じゃないぞ』と見せつける走りをしたいです」と自信ものぞかせる。

新田(353番)は箱根駅伝予選会で最後足がつってしまったという(撮影・佐伯航平)

昨年はチームメートの諸星颯大(4年、前橋育英)が10区を走り、1時間9分12秒で区間5位相当と好走した。諸星とは普段から食事や練習を共にする仲だといい、「箱根でも絶対通用するよ」と言ってくれたという。「その言葉もあるので、自信を持って臨めると思います。諸星以上のインパクトを与えられるような走りをしたいです」。希望区間は1区。これが競技として最後のレースとなる新田は「今まで負けてきた悔しさ、2年前走れなかった悔しさがあるので、しっかりといい区間順位で走って、その悔しさを消化したいです。すべてをぶつけるつもりで走ります」。各校の主力に負けない走りを誓う。

芝浦工大・橋本、5区への強い思い

「5区を走りたい」と明言しているのが、芝浦工業大学の橋本章央(3年、國學院久我山)だ。橋本はこの日行われた10000m記録挑戦競技会にも出場し、果敢に先頭を引っ張る場面もあった。ラスト1周で後ろから来た3人にかわされたものの、29分27秒75で自己ベストを更新。箱根駅伝に向けて走り込みを増やしている最中で、13日の日体大記録会でも5000mで14分16秒28とわずかだが自己ベストを更新し、「流れ的にはいいと思います」と手応えを語る。

橋本が5区にこだわる理由は二つある。ひとつは國學院久我山高の3年だった時の夏合宿で、山登りのタイムトライアルでトップとなり、歴代のチーム内記録も更新したこと。「高2の時まではまったく得意だと思ってなかったんですが、それで適性があるんだと知りました」。ふたつめは恩師との約束。大学1年の冬、母校が都大路(全国高校駅伝)に出場すると決まり、恩師でもあった有坂好司監督(当時)に「都大路出場おめでとうございます」とメールを送ったところ、「5区走れよ」と返事が返ってきた。しかし年が明けて1月に有坂監督は亡くなられた。最後に交わした恩師との約束。5区を走ることでそれを果たしたいと考えている。

この日の記録会でも積極的な走りを見せた橋本(撮影・藤井みさ)

芝浦工大は理系大学。橋本も環境システム学科で環境問題やエネルギーなどについて学んでいる理系アスリートだ。勉強と競技の両立はむずかしく、睡眠時間を削りがちになってしまうことが多いと話す。それもあり1年時、2年時はけがが多く、箱根駅伝予選会も走れなかった。「3年になってからは授業が減ったのもありますが、徹夜はしないように心がけています。12時までには絶対に寝ようと決めていて、もし超えてしまった場合は朝練を休んだりして、どうにか両立させようとしています」。今年は大きなけがもなく練習を継続できており、それが予選会で総合36位の好走につながった。

5区を走るからには、いいタイムと順位を狙って頑張りたいと話す橋本。自信はありますか? と聞かれると「けっこうあります」と答える。狙うのは区間記録。それも現在の記録(1時間10分25秒)ではなく、「初代山の神」今井正人(順天堂大~トヨタ自動車九州)の作った1時間9分12秒の記録だ。「(オープン参加なので)記録には残らないけど、勝負できたらと思います」。強い気持ちで箱根の山に挑む。

チームとしての目標順位は15位相当。各大学のエースが集まり、その経験をチームに持ち帰るために。新田は「高校時代無名だった自分でも、箱根駅伝を走れるんだと伝えられるような走りをしたい」と口にした。感謝や挑戦、そして応援。選手たちはそれぞれの思いを抱いて箱根路に臨む。

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