箱根駅伝・関東学生連合チームの主将は立教大・斎藤俊輔「チャンスをものにしたい」
11月23日に関東学連主催の10000m記録挑戦競技会が開催され、大会終了後に箱根駅伝で関東学生連合チームに選ばれた選手・スタッフのミーティングがあった。選手間で決めたチームの目標は「10番以内」。キャプテンは立教大学の斎藤俊輔(4年、秦野)と決まった。
立教大・斎藤「ここまで来たのは運命」
斎藤は自らキャプテンに立候補した。「時間があったのと、いい機会だと思いました。立教大にとっても、来年以降後輩に残せる何かがあればいいなと思ってやってみようと思いました」。今大会にかける思いは「頑張りたいなという一言に尽きる」と斎藤。「こういう機会になったのもある意味めぐり合わせというか、運命だったのかなと思って。機会を無題にしないように、チャンスをものにしていきたいと思う」と学生生活最後の大舞台に向けて前向きな言葉を発する。
斎藤が1年のときに「立教箱根2024」プロジェクトが発足し、上野裕一郎監督が就任。非強化校から強化校へと変わり、寮もできて、地元・平塚から片道2時間半かけて埼玉・新座キャンパスまで通学していた生活もガラリと変わった。4年間を総括すると「すごくいい経験ができたと思う」と口にする。もともと長い距離が苦手だった斎藤は、大学入学時には自らが箱根駅伝を走ることに関してはほとんどイメージができていなかったという。プロジェクトが始まり、紆余曲折がありながらも実力を伸ばしてきた。
ライバル・鎌田との勝負に勝ち自信
10月の箱根駅伝予選会では、日本人トップ集団の中で勝負し、1時間3分00秒は全体19位、日本人11位のタイムだった。ここまで自分の力が伸びると思っていましたか? とたずねると「びっくりしたのが正直なところ」と率直な気持ちを明かす。昨年は上位60人の選手が1時間2分台以内で走るコンディションの中で、斎藤は1時間3分38秒でチーム2番目の総合129位だった。「去年、学生連合にも入れない順位から、日本人トップのところで勝負できるようになりました。もともと目標が学生連合チームに選ばれることだったので、こんな形になるとは思っていなかったんですが、ある意味自信に変えて頑張っていきたいです」
神奈川県出身の斎藤は、法政大学の鎌田航生(4年、法政二)と中3のときから知り合いの関係。高校の時は一度も勝てたことがなく、「意識する選手」として名前をあげた。この取材の翌日にあったMARCH対抗戦で、斎藤は鎌田と同じ最終組で走り、ラストの直線で差し切り、突き放して鎌田に勝った。28分32秒53は立教大新記録。集団を引っ張ってもらった鎌田に対し「改めて怪物だなって思いますけど、勝てて嬉(うれ)しいなって思いは正直ありますね」と笑顔を見せた。「タイムを持っておけば、『学生連合の人も速い』と存在感が出ると思うので、そこに関しては良かったかなと思います」。本戦まで1カ月足らずだが、メンバー同士で話す機会を増やし仲良くなって、チームとしての一体感を作っていきたいと話した。
日本薬科大・中山「2区に挑戦したい」
日本薬科大学の主将を務めている中山雄太(3年、花咲徳栄)は今年日本インカレ10000mで9位(日本人4位)、予選会でも1時間3分02秒で全体22位だった。今年ブレイクした要因をたずねると「2年生の時は全然結果を出せず、思った以上に実力を発揮できなくて落ち込んでいました。でも1月に走り込みをやった結果なのか、5月の関東インカレで自己ベスト(10000m28分56秒00)を出せて、吹っ切れた感じです」という。7月のホクレンディスタンスチャレンジ深川大会でも5000m13分57秒31と大幅に自己ベストを更新。「強くなれた」という自信を持って予選会にも臨むことができた。日本人先頭集団で勝負できたことが、「自分にとって今後戦える自信になった」と話す。
走りたい区間は1区か2区だ。斎藤も1区を希望するなど、チーム内で1区希望者は多い。「1区は多いので、できれば2区をやりたいです」という中山。起伏のあるコースやクロカンが好きだといい、特殊な区間に挑戦してみたいという気持ちと「今まで強い選手が2区を走ってるので、挑戦して今後のステップアップにしたい」と意気込む。
チームには学生トップクラスの実力を持つノア・キプリモ(3年、ティンボロア)がおり、彼と練習をともにすることも多い。「彼についていけば必然と学生トップは狙えると思うので、いい練習パートナーだと思います」。将来は世界で活躍するマラソンランナーになりたいという中山。入学時から日本薬科大で箱根駅伝に出たい、と意識してここまで来た。この学生連合の経験を持ち帰って、チームに生かしていきたいと話した。
東大院・古川は箱根に「ほんわかした期待」
東京大学大学院から学生連合チームに選ばれた古川大晃(D1、八代)は予選会では1時間4分10秒で全体88位、学生連合チーム内では14番目の選出となった。出走メンバー入りにアピールするために記録会で28分台を狙ったが、29分30秒41の結果に「なかなか厳しいタイムだなと。今回はちょっと厳しかったかな」と振り返った。八代高校から熊本大学、九州大学大学院に進み、熊本城マラソンでも優勝。九州ではトップの力を持って今年東大院に進んだが、関東のレベルの高さを改めて感じている。
箱根駅伝は高校時代の憧れだったという古川。夏は箱根駅伝予選会に向けて距離を踏むことをベースにして、ポイント練習はレベルの高い市民ランナーとともに行ったり、青山学院大学の合宿に参加させてもらうこともあったという。9月の妙高合宿で青学の選手たちと10日間練習をともにして感じたのは、トップレベルのランナーのリラックス感だ。「走っているときに脱力、リラックスしている走りだなという印象です。あとは日常生活は楽しそうにしていますが、練習になるとすごく集中して力を発揮するなと感じました」
これまでトヨタ自動車九州など、実業団の合宿に参加することはあったが、自分より年下の大学生が大勢、高いレベルで取り組んでいる環境は初めてだった。「これがトップか、というインパクトがありましたね」。原晋監督からもフォームのアドバイスを受けた。トップレベルのマネジメントをしている立場の監督からの言葉は、なにげない会話からも刺激を受けたという。
高校卒業時にも関東の大学から声がかかっていたが、家族や先生との相談で地元にとどまり、学業と競技を両立することを選んだ古川。7年越しにかなうかもしれない夢に「不思議な感じです。昔の夢がかなうのかなと、ちょっとほんわかした期待を抱いています」と笑って話した。
所属大学も背景も違う16人が「チーム」となって戦う学生連合。それぞれの思いを箱根路で見られることを期待したい。