青学大・黒田朝日、MARCH対抗戦で大幅自己ベスト 箱根駅伝は「5区を走りたい」
11月25日に開催されたMARCH対抗戦。10000mのレース5組で行われた4組目では、青山学院大のルーキー黒田朝日(玉野光南)が組2着に入り、28分33秒62をマークし自己ベストを2分以上更新。全体でも8位に入り、自己ベストを最も更新した選手に贈られる「ABEMA賞」も獲得した。
先頭集団に食らいつき2着に
昨年に続き2回目の開催となる今年も、通常の陸上の大会とは異なるレーザーやライトなどの派手な演出が会場の雰囲気を盛り上げた。4組目のスタートは日もすっかり落ちた17時55分。この日は風もほとんどなく、晴れ、気温15度程度と絶好のコンディションだった。4組目のターゲットタイムは28分30秒から28分40秒。序盤はペースメーカーのキプキルイ・ピクターコリル(GMOインターネットグループ)がペースメーカーを務め、集団は縦長になって進んだ。黒田は集団の中ほどに位置を取った。
5000mを過ぎてペースメーカーが外れると、先頭集団は8人程度に絞られた。周回を重ねるごとに集団が小さくなり、8000m手前では法政大の中園慎太朗(4年、八千代松陰)を先頭に黒田、青山学院大の中倉啓敦(4年、愛知)、明治大の杉彩文海(3年、鳥栖工)の4人となった。残り5周となった時に黒田は先頭に立ち、中園、中倉が続いた。9000m手前で黒田は中園と2人での先頭争いとなり、ペースを刻む。残り500mで中園が前に出ると、ラスト200mで中園がスパート。黒田は中園を捉えきれず、2着でのフィニッシュとなった。
先頭に立ち「やっちゃったな」
このレースを走るまでの黒田の10000mの持ちタイムは、高校2年時に出した30分37秒24。そこから2分4秒弱の更新となった。自己ベスト更新幅がこの日一番大きかったということで、特別賞の「ABEMA賞」も受賞、奨学金3万円を手にした。「(以前の)タイムを出したのが高2の時なので、ベスト更新と言えるのかというところもありますけど、今日は本当に良く走れたと思います」。レースの感想をたずねると黒田はそう口にした。
走っていても余裕度があり、ラスト2000mのところで前に出たが「やっちゃったな」という思いがあったという。黒田はこれまで関東インカレ2部3000m障害でも、ラスト1周で独走体制に入りながら失速して3位。日本インカレでも先頭に立ちながら、ラスト1周でかわされて準優勝と、ラストが課題と認識していた。「だいたいどのレースでも早い段階で前に出て刺されるので、あー今日もやっちゃったなと思いました」と苦笑する。
この日も我慢しよう、我慢しようと思いながらも余裕度を感じていたため、「行ったら行けそうだな」という気持ちがあって前に出た。結果的に中園に先着されたが、「それでもラスト200mぐらいまでは余裕を持って走れたので、そういう面では成長できたのかなと感じられました」と手応えを語る。
適性を見出され、箱根路へ意欲
黒田は岡山県の玉野光南高校時代3年時のインターハイ、U20男子3000mSC決勝でともに準優勝。大学に入学してからも距離を踏む練習をしつつも、主に3000mSCのレースに出場してきた。関東インカレでは3位、日本選手権11位、日本インカレ準優勝、国体成年男子3位と大きな大会に立て続けに出場。「たくさんのレースを経験させてもらって、体力面でも、スピード面でも成長することができました」と話す。
黒田はまだ大学駅伝の出場経験はないが、「チャンスがあれば箱根駅伝を走りたい」という気持ちはもちろんある。3000mSCを中心に取り組んでいたため、長い距離には不安があったというが、9月24日の絆記録会5000mでは13分56秒02の自己ベスト。そして今回の結果に、距離が伸びても走れてきているという感覚をつかんでいる。
黒田の父、将由さんは法政大学時代に3度箱根駅伝を走った経験がある。お父さんから何か箱根の話を聞きますか? と聞くと、「もともと陸上に関して『こうしろ』とか言われたことはないんです。結果が良かったら『良かったじゃん』と言ってくれるぐらいで。だから今回も、自分の好きなようにという感じですかね」という。
走りたい区間をたずねると、「5区を走りたいです」とはっきりと答えが返ってきた。大学に入るまでは「5区なんて走ることはまずないだろう」と思っていたというが、夏頃、原晋監督に「(山を)上れるんじゃないか」と適性を見出してもらい、今は上りの練習もしているという。5区の候補には、昨年ルーキーながら5区区間3位で往路優勝に貢献した若林宏樹(2年、洛南)がいる。若林は8月に左足の足底を疲労骨折。けがからの回復途上にあり、この日は1組、2組のペースメーカーを5000mまで務めた。
チーム内に強力なライバルがいるが、はっきりと5区希望を口にする黒田。ここから残り1カ月、故障せずに練習を積み上げ、激しい競争に勝って箱根路デビューを飾れるだろうか。