陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

悲願の箱根駅伝出走、そして青学大連覇へ “よこたっきゅう”ラストイヤーの決意

全日本大学駅伝で力走する横田俊吾(撮影・藤井みさ)

今季、青山学院大学陸上競技部、長距離ブロックの副キャプテンを任されているのが4年生の横田俊吾(学法石川)。彼は卓球をしているかのような独特なフォームから“よこたっきゅう”の愛称で多くのファンから親しまれている。学法石川高校時代は3年連続で都大路へ出走。だが最強世代と呼ばれる現在の4年生の中でなかなか陽の目を見ることはできなかった。

3年次には出雲駅伝にアンカーとして出場。駒澤大学の大エース田澤廉(現4年、青森山田)が後ろから迫ってくる中、追走を振り切り2位でゴールテープを切った。青山学院大が大差をつけて優勝した第98回箱根駅伝。横田は16人のメンバーに選ばれたものの、出走はかなわなかった。

出雲駅伝ではアンカーとしてゴールテープを切った横田(撮影・藤井みさ)

好調の今シーズン、いざ出雲のスピード勝負へ

そして迎えた最終学年としての今シーズン。横田は序盤から記録会や大会で好成績を残した。5月に行われた関東インカレではハーフマラソンに出場し5位入賞。9月に行われた日本インカレでは日本人4着となる7位入賞。

記録会でも横田は納得のいく走りを見せた(撮影・青山スポーツ新聞編集局)
関東インカレでは5位入賞(撮影・青山スポーツ新聞編集局)

安定した走りを重ね、とうとう駅伝シーズンを迎えた。第34回出雲駅伝では最短区間の2区に抜擢。1区を走ったのは同学年の目片将大(4年、須磨学園)。目片も横田と同じように1、2年で苦しみを味わった仲。ともに4年間苦しんだ同級生の姿が見えた時には感動したと話す。

そして襷(たすき)を受けてスタートした同じ2区には、東京オリンピックに出場した順天堂大学の三浦龍司(3年、洛南)や当時の高校記録(先日、佐久長聖高の吉岡大翔が更新)を引っ提げて駒澤大学に入学をした佐藤圭汰(1年、洛南)など多くのスピードスターが名を連ねていた。

その中で横田は区間新記録の更新をするタイムで区間4位。差し込みの影響もあって中継所直前で三浦に抜かされたものの、引けを取らない走りを見せた。本人も「短い距離でもスピード勝負ができる新しい自分を見つけられた」と大きな自信をつけた。だがチームとしては4位。主力選手を大幅に欠く中で苦しいレースとなった。しっかりとメンバーをそろえなければ勝つことができない、近年の駅伝の難しさを味わった出雲駅伝となった。

先輩たちの奮起、友との襷渡しがついにかなった(撮影・青山スポーツ新聞編集局)

先輩たちの奮起、友との襷渡しがついにかなった

それから約1カ月後、3大駅伝の2レース目の第54回全日本大学駅伝を迎え、横田は4区を任された。1区の目片が区間2位の記録で好スタートを切ったかと思われたが、続く2区を任された2年生の白石光星(東北)がまさかの大ブレーキ。13位まで転落した。

横田に襷(たすき)が渡った時にはライバルのトップ駒澤大とは2分1秒差の11位。上位フィニッシュは難しいと思われたが、ここから4年生の巻き返しが始まった。実は白石は寮で横田と同部屋の後輩。「早く来いとは思った」と話すが、「後輩の失敗は先輩が取り返す」と意気込んだ。

悪い流れを変えたいと走り出した横田が素晴らしい結果を残した。区間2位のタイムを叩き出し、見事6人抜きを達成。だが、横田はこの結果に満足はしていない。区間賞を取ることができなかったことに課題を感じていた。前半こそは良いペースで走っていたものの、7km以降で差し込みが襲いタイムを伸ばすことができなかった。

今回、横田が走った4区は11.8kmだったが、箱根駅伝ではどの区間も20kmを越える。箱根に向けての大きな課題を感じていた。また、第4中継所で横田を待っていたのが同学年の岸本大紀(三条)。実は横田と岸本は同じ新潟県出身で、中学時代からライバル関係でもあり仲良しであった。中学2年生の時から8年間切磋琢磨しあい、ようやくで襷渡しが実現した。

レース後も中学時代に岸本と走っている写真と今回の襷渡しの写真を並べて投稿するなど、感慨深かったのは確かだ。そして、同時に新潟にいるお世話になった方々に2人の成長の姿を見せることができたのは間違いないだろう。

大学人生最後のレース、後輩ともに箱根制覇を目指す。左は後輩の田中悠登(撮影・青山スポーツ新聞編集局)

駒澤大へのリベンジとなる最後の箱根駅伝

残す3大駅伝はとうとう箱根駅伝を残すのみとなった。チームとしての課題は、4年生の活躍ばかりではなく、下級生が4年生を脅かすような存在になることだと語る。さらに、4年生も1つ2つ上の段階にいかなければ勝つことができないと、2つの駅伝を戦って感じていた。そして、仲が良いチームはいいことであるが、貪欲にライバル意識を持って残りの期間を過ごしていきたいと話した。

横田本人の箱根駅伝での希望区間はないが、どの区間を任されても全力で区間賞を狙う。そして、チームとしては優勝しか見ていない。「大学人生最後のレースを、覚悟を持って戦いにいく」と強く語った。箱根路に“よこたっきゅう旋風”を巻き起こすことができるか。横田をはじめとした4年生と下級生の活躍に注目したい。

in Additionあわせて読みたい