陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

青学大の最強世代率いる宮坂大器主将、伊勢路でかなえた初出走 箱根路では有終の美を

宮坂大器は順天堂大学の四釜峻佑とのデットヒートを制したが悔しいレースとなった(撮影・青山スポーツ新聞編集局)

今年度、青山学院大学の主将を務めるのは宮坂大器(4年、埼玉栄)。中学・高校時代に主将を経験して養ったキャプテンシーを同期に買われ、今年度の主将に就任した。だが本人には一つ心残りだったことがある。それは駅伝未出走での主将就任だった。宮坂本人は、主将は駅伝を経験してから就任と決めていた。だが、同期の厚い信頼を受け立候補。駅伝未出走の主将として今シーズンをスタートさせた。そして、とうとうその宮坂に駅伝出走のチャンスが巡ってきた。

ついに勝ち取った、出走のチャンス

今シーズンは前期こそは故障で出遅れたものの、夏合宿以降しっかりと練習を重ね、良いコンディションで過ごしてきた宮坂。10月の出雲駅伝ではメンバー入りを果たしたものの、出走はかなわなかった。その代わりに熊本県で行われた第1回奥球磨駅伝に出場。実業団の選手もいる中で、今シーズン初駅伝を終えた。

今シーズンはペースメーカーを務めたこともあった宮坂(撮影・青山スポーツ新聞編集局)

そして迎えた11月の全日本大学駅伝。宮坂はメンバー入りを果たし、区間エントリーでもアンカーの8区に配置された。この8区は19.7kmと最長区間であり、優勝を目指すためには最重要区間である。宮坂はようやく枠を勝ち取ることができたうれしさと、故障から復帰することができた安心感があったと語る。だが同時に、緊張感が襲った。また初出走ながらアンカーという役目を任されたことは本人も驚きだった。それでも優勝のゴールテープを切ることを目指し、意気込んだ。

悔しさが残ったアンカーの重役

迎えた当日、1区を任された4年生の目片将大(須磨学園)が2位で襷(たすき)をつなぐも2区の白石光星(2年、東北)が大ブレーキ。だが、そこから4年生をはじめとしたメンバーの快進撃が始まる。そして、宮坂の直前を走った近藤幸太郎(4年、豊川工業)が区間記録を更新する走りで2位に押し上げ宮坂に襷を渡した。

宮坂がスタートした時点では、3位の國學院大学との差は約50秒。しかし、國學大の伊地知賢造(3年、松山)に2位の座を譲り、さらに後ろにいた順天堂大学の四釜峻佑(4年、山形中央)にも追いつかれゴール手前までデットヒートを見せた。それでも3位の座はなんとか守り切りゴール。初駅伝は区間10位というタイムになり、悔しい結果となった。

宮坂ももちろん満足していない。四釜との接戦を制したとはいえ、伊地知に抜かれ一つ順位を落とした。2位は守らなければいけない順位であった。また宮坂には単独走の経験があまりなかったことも仇(あだ)となってしまったと語る。そして動きが固くなり、前半から抑えめのペースで走ってしまった。

3位でゴールし表彰台は死守した(撮影・小玉重隆)

宮坂は「駅伝の経験が足りなかった」と話した。タイムにとらわれすぎず、感覚で走る駅伝の走り方を課題に挙げた。また、「襷渡しは駅伝の醍醐味だ」とも宮坂は話す。宮坂に襷が回ってくるまで、5人の同期と2人の後輩が襷をつないできた。そして全員が白石のブレーキを取り戻すかのような力強い走りをつないできた。宮坂も「先輩として後輩のミスをカバーするような走りをしたかったが、逆に同期たちに助けられる結果になった」と話した。それでも初駅伝の宮坂にとって、仲間たちがつないできた汗が染み込んだ襷の重みを存分に感じることができただろう。

主将が語る箱根制覇に向けたカギ

4年生は箱根駅伝を残すのみとなった。「箱根だけは外せない」と主将である宮坂も話す。出雲、全日本に間に合わなかった選手も箱根が近づくにつれて仕上がってきており、布陣がそろい始めている。

宮坂が箱根制覇のポイントに挙げるのは、全日本で素晴らしい走りを見せた目片、佐藤一世(3年、八千代松陰)、横田俊吾(4年、学法石川)、岸本大紀(4年、三条)、中村唯翔(4年、流通経大柏)、近藤の6人と、山登り、山下りの2人以外の2枠である。この2枠に入るメンバーが、6人以上の走りをすることができれば優勝に大きく近づくことができると話す。

宮坂本人は、「全日本のリベンジを果たしたい」と語る。全日本での走りは満足がいくものではなかった。「箱根駅伝で大学生活の有終の美を飾ることができるよう、約1カ月半のすべての時間を、覚悟を持って過ごしていく」と強く語った。

ゴール後、チームメートから出迎えを受けた宮坂(中央、撮影・長島一浩)

マラソンで評価、卒業後は実業団へ

宮坂は卒業後、ヤクルトに入社し陸上を続ける予定である。元々実業団で陸上を続けることはできない予定であった。だが、2月に別府大分毎日マラソンに出場したことで転機が訪れる。2時間12分09秒で初マラソンを終えた宮坂の走りを見て、実業団チームから声が掛かった。つまり、マラソンの力を評価されての入社である。宮坂は入社後、「評価していただいたマラソンに専念して陸上を続けていく」と話した。

最強世代と呼ばれてきた現在の4年生。その4年生も次の箱根駅伝がとうとう大学ラストレース。その最強世代がどんなレースを見せてくれるのか。もちろん、その最強世代を率いてきた宮坂がラストレースで念願の箱根出走が実現するのかにも注目したい。優勝はもちろんのこと、歴代最速の総合記録を目指す青学駅伝部の走りに注目して箱根駅伝を見ていただきたい。

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